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第8次医療計画に向けた意見を取りまとめ!新興感染症対応と通常医療との両立・確保に向けた議論スタート!—第8次医療計画検討会

2022.12.12.(月)

12月9日に開催された「第8次医療計画に関する検討会」(以下、検討会)で、▼新興感染症対策▼地域医療構想の実現—の2点を除いた「第8次医療計画の作成に向けた意見」が取りまとめられました。今後、遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)と厚生労働省で最終の文言調整を行います。

●第8次医療計画に向けた意見はこちら(今後、若干の修正が行われる可能性あり)

新興感染症対策に関しては、別途議論される「予防計画」の検討論議と整合性を図りながら、今後「感染症対応医療と通常医療との両立・確保」策などの議論を進めます。同日にキックオフ議論が行われました。

また地域医療構想の実現に関しては、近く開かれる「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)で「2022年度の状況を踏まえた2025年度実現に向けた推進方策」論議を行い、それを上記「意見」の中に盛り込むことになります。

12月9日に開催された「第20回 第8次医療計画等に関する検討会」

5疾病・6事業対策などの指標、各都道府県でバラつきが生じないよう明確な定義づけを

Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から新たな「第8次医療計画」(2024-29年度の計画)が始まります。検討会や下部組織のワーキンググループでは、都道府県が医療計画を作成する(2023年度中に作成)際の拠り所となる指針(基本指針、2022年度中に都道府県に提示)策定論議を進めています。検討会で年内(2022年内)に意見を整理し、それをもとに厚労省で年度末(2023年3月頃)に指針(基本方針)を示します。

【これまでの検討会論議に関する記事】
医療圏・基準病床数の設定、医療従事者の確保、すべての開業医に夜間・休日や公衆衛生対応など求める方針固める—第8次医療計画検討会(3)
在宅医療・介護連携、在宅における口腔・栄養・リハビリの一体的提供を強力に推進していく—第8次医療計画検討会(2)
地域医療支援病院と紹介受診重点医療機関、両者の違いはどこにあるのか今後明確化を図ってはどうか—第8次医療計画検討会(1)
訪問看護師・専門性の高い看護師など計画的に育成!病院薬剤師の「奨学金返済を免除する」仕組みを検討!—第8次医療計画検討会
脳卒中等の急性期対応では医療機関へのアクセスを最重視、精神疾患の慢性期入院患者減踏まえベッド数適正化を—第8次医療計画検討会
小児・周産期医療、「集約化・重点化」と「患者アクセスの確保」とのバランスを地域ごとに慎重に判断せよ—第8次医療計画検討会(2)
すべての開業医に地域で不足する医療機能(夜間対応など)への協力求める、外来機能報告データの利活用推進—第8次医療計画検討会(1)
平均在院日数の地域格差、「地域性があり容認すべき」と考えるか、「医療の標準化に向け解消すべき」と考えるか—第8次医療計画検討会(2)
医療提供体制の基礎となる2次医療圏は適正な規模・エリア設定が重要、他計画にも影響するため優先検討を—第8次医療計画検討会(1)
かかりつけ医機能は医師個人・医療機関の双方に、「制度化や登録制」に疑問の声も—第8次医療計画検討会
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ—第8次医療計画検討会(1)
医療・介護サービスの一体提供可能とするため、在宅医療圏域は「市町村単位」が望ましいのでは—第8次医療計画検討会(2)
医療安全の向上に向け、例えば医療機関管理者(院長など)の「医療事故に関する研修」参加など促していくべき—第8次医療計画検討会(1)
2次救急と3次救急の機能分担、巡回医師等確保・オンライン診療によるへき地医療支援など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
周産期医療・小児医療提供体制、医療の質確保や医師の負担軽減のため「集約化・重点化」を急ぎ進めよ—第8次医療計画検討会(1)
がん拠点病院が存在しない医療圏への対策、効果的な糖尿病対策、精神疾患対策の評価指標などが今後の重要論点—第8次医療計画検討会(2)
外来機能報告データ活用し、紹介受診重点医療機関の明確化だけでなく、幅広く「外来医療機能分化」論議を—第8次医療計画検討会(1)
高額医療機器の共同利用推進、「読影医・治療医配置なども勘案」した広範な議論求める声も—第8次医療計画検討会(2)
外来医師偏在の解消に加え、「かかりつけ医機能の明確化、機能を発揮できる方策」の検討も進める―第8次医療計画検討会(1)
人口減の中「2次医療圏」をどう設定すべきか、病床数上限である基準病床数をどう設定するか―第8次医療計画検討会
今後の医療提供体制改革では、「医療人材の確保」が最重要論点―第8次医療計画検討会
外来機能報告制度や紹介受診重点医療機関が「医師偏在」を助長しないよう留意を―第8次医療計画検討会
感染症対応では情報連携、看護師はじめ医療人材確保が最重要、課題検証し早急な改善を—第8次医療計画検討会
感染症対応医療体制を迅速確保できるよう、強制力持つ法令の整備を検討してはどうか—第8次医療計画検討会
集中治療認定医を専門医と別に養成し、有事の際に集中治療に駆け付ける「予備役」として活躍を—第8次医療計画検討会
2024年度からの医療計画に向けた議論スタート、地域医療構想と医師配置、外来医療など考えるワーキングも設置—第8次医療計画検討会



これまでの検討会およびワーキング論議を踏まえた「意見のとりまとめ」案が示され、そこで▼医療計画全体(医療圏、基準病床数など)▼外来医療提供体制—を議論(関連記事はこちら)。12月9日の会合では、▼5疾病・6事業および在宅医療(ただし、上述のように新興感染症対策は別途論議、以下同)▼医師確保計画—に関する議論を行いました。

前者の5疾病・6事業および在宅医療(▼がん▼脳卒中▼心血管疾患▼糖尿病▼精神病—の5疾病、▼救急医療▼災害医療▼へき地医療▼周産期医療▼小児医療▼新興感染症対策—の6事業+在宅医療)に関しては、「疾病の特性などを踏まえた医療圏を設定する」「拠点機能を果たす医療機関と、地域医療機関との連携を促進する」「各分野の専門家による検討を踏まえた指標(施策の目標と進捗状況を比較し、各都道府県の取り組みが上手く進んでいるのかを検証するための指標)を設定する」方向が打ち出されています(関連記事はこちら(5疾病)新興感染症対策を除く5事業こちら(在宅医療))。

また後者の医師確保計画に関しては、例えば▼医師偏在指標について「複数医療機関で勤務する医師の按分」ルールを設定し、病院・クリニック別の数値を参考値と示す▼医師少数スポットは原則「市町村単位」で設定することを明確化する▼目標医師数の設定ルールを見直し「医師偏在の助長」を回避する▼若手医師にとどまらず、ベテラン指導医クラスの「地域医療勤務」を促進する—などの方向が打ち出されています(関連記事はこちらこちら)。

すでに検討会・ワーキングで繰り返し議論されてきた内容であり、異論・反論は出ていません。ただし、各都道府県の取り組みを検証するための指標に関して今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「定義づけや把握が難しい項目も含まれている」旨を指摘。例えば、小児医療の指標として「子ども医療電話相談の応答率」が提案されていますが、今村構成員は「つながらない場合なども含めて考えるのかなど、都道府県でバラつきが出ないように明確に定義づける必要がある」とコメントしています。今後、厚労省で今村構成員の指摘も踏まえて詳細(定義など)を詰めていくことになります。

「新興感染症に対応する医療」と「通常医療」との両立方策を第8次医療計画に記載

また同日には6事業目となる「新興感染症対策」議論の進め方も議題となりました。

改正感染症法が先の臨時国会で成立しました。今般の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえて、例えば▼感染症対策を確実に行えるよう、都道府県と医療機関が事前に「協定」(感染症に対し入院対応、外来対応、回復期患者対応などのどういった役割を果たすのか)を締結する▼協定が確実に履行されるような措置を講じる▼公立・公的医療機関等、特定機能病院には「感染症発生・まん延時に担うべき医療提供」を義務付ける▼初動対応を行う医療機関に対し特別の経済的支援を行う▼医療人材の確保・派遣を広域で行う▼入院以外にも、外来・在宅等の医療費について公費支援を行う—などの考えを定めています。

今後、都道府県において「感染症医療提供体制や検査・保健体制の確保などを定める【予防計画】」と「感染症医療提供体制の確保と通常医療提供体制の維持の両立などを定める【医療計画】」を作成することになります。12月9日の医療部会では、「医療計画の議論は、別に行われる予防計画論議と整合性をとって進める」考えとともに、医療計画には次のような項目を記載する方向案が厚労省から提示されました。

▽対応する新興感染症は、感染症法に定める新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症を基 本とする

▽まず「現に対応し、これまでの対応の教訓を生かすことができる新型コロナへの対応」を念頭に取り組む(感染拡大のフェーズに応じた取り組みとする)が、実際に発生・蔓延した感染症が想定と大きく異なる場合には、その感染症の特性に合わせて協定の内容を見直すなど機動的な対応を行う

▽【平時からの取り組み】として、▼協定による感染症対応可能な医療機関・病床等の確保 (病床、発熱外来、自宅療養者等に対する医療の提供、後方支援、人材派遣、個人防護具備蓄)▼フェーズに応じたベッド数、人材派遣の可能人数▼専門人材の確保(都道府県による人材育成、医療機関における研修・訓練) ▼感染症医療と通常医療との役割分担▼院内感染対策、クラスターへの対応方針—などを記載する

▽【感染症発生・蔓延時の取り組み】として、▼協定締結医療機関・初動対応医療機関による確実な履行▼フェーズに応じた迅速かつ確実な稼働(都道府県によるフェーズの設定、 医療機関におけるフェーズに応じた協定の履行、都道府県による協定の履行確保措置の発動、 広域的な人材派遣の実施)▼感染症医療と通常医療に対応する医療機関間の連携・役割分担の実施—などを記載する

▽数値目標として下表のような項目を考えていく

新興感染症対策に係る数値目標案(第8次医療計画検討会 221209)



別に議論される「予防計画」との整合性が非常に重要になるため、厚労省は「新興感染症発生・まん延時における医療については、引き続き検討会で議論を行い、別途とりまとめる」考えを明らかにしています。

第8次医療計画は2024年度からスタートするため、来年度(2023年度)に各都道府県で計画を作成します。したがって厚労省は本年度(2022年度)中に医療計画を作成する際の拠り所となる「基本方針」(厚生労働大臣による告示)・「指針」(厚労省医政局長通知、地域医療計画課長通知)を示します。この基本方針・指針についても、新興感染症対策に関する事項が「別途示される」可能性もあります(新興感染症対策論議に時間がかかる場合には、「通常部分」の指針等を先に示し、「新興感染症対策」の指針等を別途示す可能性もある)。



今後の議論に向けて、▼通常医療と感染症医療との役割分担、とりわけ「感染症蔓延時でも通常の救急医療を確保する」体制が極めて重要である(加納繁照構成員:日本医療法人協会会長)▼疑い患者のベッド確保が極めて重要であり、その点をしっかり検討していくべき(今村構成員)▼「想定と異なる」場合の判断や対応策の検討などを、誰が行うのかなどを明確にしておくべき(大屋祐輔構成員:全国医学部長病院長会議理事)▼医療だけでなく、介護提供体制の確保も検討すべき。「感染症は治ったが、要介護状態や認知症が悪化した」という事態は避けるべき(田中滋座長代理:埼玉県立大学理事長)—などの意見が出ています。いずれも重要な視点と言えます。

なお、「現下のコロナ感染症(呼吸器の感染症)をまず想定するということだが、消化器の感染症(新型コレラ、新型赤痢など)などもある。タイプ別に考えていくべきではないか」(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「数値目標がストラクチャーに偏っているが、プロセスやアウトカム指標も検討していくべき」(今村構成員)という、やや気の早い意見も出ていますが、構成員が「新興感染症に対応する備えを十分にしておくべき」と強く考えていることが伺えます。



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