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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

高額医療機器の共同利用推進、「読影医・治療医配置なども勘案」した広範な議論求める声も—第8次医療計画検討会(2)

2022.6.17.(金)

CTやMRIをリニアックなど高額医療機器の「共同利用」推進が重要なテーマとなり、実際に共同利用が進んでいるが、必ずしも十分とは言えない。さらなる共同利用推進に向けてどういった方策などを考えるべきか—。

6月15日に開催された「第8次医療計画等に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われました。

6月15日に開催された「第9回 第8次医療計画等に関する検討会」

機器の共同利用にとどまらず、読影医・治療医の配置など、より広範な議論を求める声も

Gem Medで報じているとおり「2024年度からの新たな医療計画(第8次医療計画)」に向けた議論が進んでいます(都道府県が作成する医療計画のベースとなる厚生労働法の指針論議)。

医療計画の中には「外来医療計画」が包含されています。

医療計画の概要(医療圏、基準病床数、5疾病5事業などのほか、地域医療構想、医師確保計画、外来医療計画などを包含している)



外来医療計画では、すでに報じたように「外来診療を担う医師偏在の解消」のほかに、「地域ごとの医療機器の配置状況を可視化し、共同利用を推進」する方策の記載なども求められます。我が国では先進諸外国に比べて「CTやMRIなどの配置数が多いが、1施設当たりの稼働数は小さく、非効率な運用が行われているのではないか」と指摘されます。このため、▼CT▼MRI▼PET▼放射線治療機器(リニアック、ガンマナイフ)▼マンモグラフィ—について、新規導入医療機関では「共同利用計画」を作成するとともに、地域ごとの共同利用状況を公表することなどが求められているのです。「共同利用の推進」→「効率的な運用」を目指す考えです。

「高額医療機器の共同利用」計画の概要(第8次医療計画検討会(2)4 220615)

外来医療計画の一部に「高額医療機器の共同利用」推進策を盛り込む必要がある(第8次医療計画検討会(2)3 220615)



この点、厚生労働省の調査によれば「新型コロナウイルス感染症の影響で2020年の利用件数は減少しているが、利用状況・共同利用状況ともに増加している」ことが分かりました。

「高額医療機器の共同利用」状況(第8次医療計画検討会(2)1 220615)



ただし、昨年(2021年)12月の「新経済・財政再生計画改革工程表2021」による、▼共同利用計画を策定した医療機関を2022年度末までに1000件以上とする▼共同利用計画について協議の場で確認した都道府県の割合を2022年度までに100%とする—との目標値を考慮すれば「さらなる共同利用推進に向けた取り組み」が求められていると言えるでしょう。検討会でも「さらなる共同利用促進策を検討していく」方向が確認されています。

「高額医療機器の共同利用」に関する政府目標(第8次医療計画検討会(2)2 220615)



例えば、▼機器を共同利用する場合には、A医療機関から撮影を行うB医療機関への紹介などが行われる。その際、A医療機関での診療情報提供料、B医療機関での初診料など「患者負担増」につながるのではないか。診療報酬についても考えていく必要がある(山口育子構成員:人ささえあい医療人権センターCOML理事長)▼共同利用推進に向けた「診療報酬上の加算」(医療機関サイドへのインセンティブ)を強化することも検討テーマの1つになるのではないか(尾形裕也構成員:九州大学名誉教授)▼先進諸国に比べて台数が多い(=症例数が分散する)ことで、安全性に問題が生じないかも検討する必要がある(尾形構成員)▼共同利用の「原則化」などを進めるべき(河本滋史構成員:健康保険組合連合会常務理事)—などの意見が出されています。

診療報酬については、「患者負担」と「医療機関へのインセンティブ」との双方からの視点が示されました。

後者のインセンティブについては、CT・MRI・PETの撮影料について次のような「共同利用を行った場合のインセンティブ」が2016年度診療報酬改定で付与されていますが、尾形構成員は「もう少しメリハリを利かせたほうがよいのではないか」との考えを示しています。

【コンピューター断層撮影】(イ)64列以上のマルチスライス
(1)共同利用施設で行われる場合:1020点
(2)その他の場合:1000点(従前から据え置き)

【磁気共鳴コンピューター断層撮影】(1)3テスラ以上
(イ)施設共同利用(10%以上)において行われる場合:1620点
(ロ)その他の場合:1600点(従前から据え置き)

【ポジトロン断層撮影など】:施設共同利用率を30%以上に引き上げ(従前は20%以上)



もっとも「CT・MRIの共同利用」について、労力をかけて議論を行う点について「コストパフォーマンスが良くない」と疑問を呈する声もあります。

加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)や今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)、織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は「CT・MRIは特殊機能が付加されているものを除けば、必須の汎用機器となり、価格も下がってきている。医薬品に目を向ければ、患者1人当たり数千万円の製品が登場しており、CT・MRIの影響は相対的に非常に小さくなっている。共同利用推進は良いことであるが、検討会などで貴重な時間を費やして議論すべきことだろうか」とコメント。

ただし、厚労省医政局の伊原和人局長は、「医療機器や粒子線治療など、限られた資源をどう有効活用するかは、今後とも継続した重要論点である。高額医薬品と高額機器を並列に議論することはできない」と返答しています。



なお、大屋祐輔構成員(全国医学部長病院長会議理事、琉球大学病院院長)は「共同利用に限定せず、読影医・診断医の労力などの視点も加味した議論が必要である」「放射線機器の導入は進むが、放射線治療医は不足しているなどのアンバランスを解消しなければいけない」と、より広い視点での議論を要請しました。

こうした意見を踏まえ、今後、より詳細な論点を絞っていきます。



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