Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

病院の再編・統合推進に向け、「ダウンサイジング補助」「再編後の土地建物の登記費用軽減」を行う―厚労省

2021.5.31.(月)

病院の再編・統合推進に向けて、「ダウンサイジングを行った医療機関への補助(全額国費を原資として地域医療介護総合確保基金から補助を行う)」「再編後の土地建物の登記費用軽減」を行う―。

厚生労働省は5月28日に通知「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」を発出し、こうした点への理解と実行を求めました。

地域医療構想の実現に向けて、「医療機関の再編・統合」を財政面でバックアップ

改正医療法(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための 医療法等の一部を改正する法律)が5月21日に成立しました。

主な改正項目は、(1)医師の働き方改革推進(2)各種医療職種の専門性発揮(3)地域の実情に応じた医療提供体制の確保―の3本柱が据えられ、うち(3)では▼医療計画へ「新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制確保」に関する事項を盛り込む▼地域医療介護総合確保基金に「病床機能再編支援事業」を位置づけ、当該事業を全額国庫負担とするなど「病院の再編・統合」を含めた地域医療構想の実現を推進する▼医療機関に対し「医療資源を重点的に活用する外来」等について報告を求める【外来機能報告制度】を創設する―といった項目が盛り込まれました(関連記事はこちらこちらこちら)。

改正医療法の概要(改正医療法2 210528)



このうち「地域医療介護総合確保基金に「病床機能再編支援事業」を位置づけ、当該事業を全額国庫負担とするなど「病院の再編・統合」を含めた地域医療構想の実現を推進する」点については、5月28日から施行されており、関係政省令も公布・施行されています。今般の通知では、この制度の内容を詳しく示し、都道府県や医療機関等に正しい理解と実行を求めています。

「病床機能再編支援事業」とは、一口で言えば「ダウンサイジング(病床削減)を行った病院に対し、逸失利益等を補助する」仕組み、異なる側面から見れば「財政補助により病院のダウンサイジングを進める」仕組みです。2020年度予算事業として創設され、今般の改正医療法によって恒久化されました(関連記事はこちらこちら)。

都道府県が「医療機関の機能分化・連携の強化のため、当該地域における病床数の変更を行う」内容を盛り込んだ計画を立て、その実現に向けた補助を「地域医療介護総合確保基金」(各都道府県に創設されている)が行い、その原資を全額国が負担することになります。



あわせて、国が「医療機関の再編・統合計画」を認定し、税制上の優遇を行う仕組みも設けられました。その大枠は、次のようなものです。

▽複数の医療機関が「再編・統合」計画を立て、地域医療構想調整会議に諮り「確認」を得る

▽都道府県を経由して、その計画を厚生労働大臣に提出し「認定」を受ける

▽認定を受けた計画に基づいて「取得した土地」「建築した建物」に関する登記に対し、登録免許税を優遇(軽減)する

例えば、X病院(300床)とY病院(200床)を再編・統合してZ病院(350床)を新設する場合に、Z病院の建物登記を行う際に、登記費用が軽減されるといったイメージです。

医療機関の再編・統合を促すために「ダウンサイジングへの財政支援」「不動産取得における税制優遇」を行う(改正医療法2 210528)



再編・統合の計画(再編計画)には▼再編対象とする医療機関に関する事項(施設概要、機能別のベッド数、診療科、医療従事者の職種別人数、建物建築年次)▼再編事業の内容▼再編実施時期▼再編事業に必要な資金額と調達方法▼再編のために不動産を取得する場合には、その不動産に関する事項—を記載し、必要な書類(地域医療構想調整会議の協議を経ていることを示す書類や、土地・建物の概要など)を添付して、都道府県を経由して厚労省に認定申請を行います。

申請を受けた厚労省では、▼地域医療構想の達成に向けた病床機能の分化・連携推進にとって適切な再編・統合であること▼再編計画の記載事項が、地域医療構想調整会議における協議に基づくものであること―を確認し、都道府県の意見を聴取したうえで「認定」を行います。

ただし、▼やむを得ない事業があると認められる場合を除いて、再編後の対象医療機関の病床機能別病床数の合計が、当該構想区域において不足する病床機能以外の病床機能の病床数の合計が増加する(例えば、「急性期」機能のベッド数が、再編統合によって増加するなど)▼再編後の医療機関で、病床が全て稼働していない病棟(過去1年間に一度も入院患者を収容しなかった病床のみで構成されている病棟をいう)を有することとなる―ような場合には、「病床機能の分化・連携推進にとって適切である」とは判断されず、認定は行われません。具体的に、どういったケースが「認定対象外」となるのかは、今後の事例を待つ必要がありますが、例えば「急性期ベッドが潤沢にある地域で、A病院(200床)とB病院(200床)が再編・統合して、420床の急性期巨大病院を新設する」といった事例は認定されにくいと思われます。

また、再編計画について変更がある場合には「再度の認定」を受ける必要がありますが、「軽微な変更」については、その旨の届け出を行うことで「再度の認定」を回避することが可能です。

さらに、再編計画の内容が「認定の基準を満たさなくなった」と認められる場合には、厚労省が「認定の取り消し」を行うこともある点に留意が必要です。



人口減少が進む我が国において、多くの医療機関が現状の形で存続を希望すれば「症例の分散」による、医療の質の低下・経営の質の低下が避けられません。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと、米国メイヨークリニックとの共同研究では、「症例数に分散により、医療の質が低下してしまう」ことが明確になっています。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係



また、医療機関の分散は、医療従事者が散在することも意味し、「経験症例数の不足による医療の質の低下」「個々の医療従事者の負担増」などを引き起こし、これが「医師偏在を助長する」ことにもつながります。

地域の医療提供体制、人口動態、自院の機能・状況を冷静に見極め、近隣医療機関と協議のうえで「再編・統合」に向けた検討を進める時期に来ています。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

医療機能の分化・強化、当初「入院」からスタートし現在は「外来」を論議、将来は「在宅」へも広げる―社保審・医療部会
公立・公的病院等の再検証スケジュールは新型コロナの状況見て検討、乳がん集団検診で医師の立ち合い不要に―社保審・医療部会(2)
紹介状なし患者の特別負担徴収義務拡大で外来機能分化は進むか、紹介中心型か否かは診療科ごとに判断すべきでは―社保審・医療部会(1)



2024年度からの「医師働き方改革」に向け、B・C水準指定や健康確保措置の詳細固まる―医師働き方改革推進検討会
医師の働き方改革論議が大詰め、複数病院合計で960時間超となる「連携B」水準に注目―医師働き方推進検討会
医師働き方改革の実現に向け、厚生労働大臣が国民全員に「協力」要請へ―医師働き方改革推進検討会(2)
地域医療確保のために「積極的に医師派遣を行う」病院、新たにB水準指定対象に―医師働き方改革推進検討会(1)
医師労働時間短縮計画、兼業・副業先の状況も踏まえて作成を―医師働き方改革推進検討会
医師働き方改革の実現に関し大学病院は「医師引き上げ」せず、地域医療機関の機能分化推進が鍵―厚労省
2018年の【緊急的な取り組み】で超長時間労働の医師はやや減少、残業1920時間以上は8.5%に―厚労省
長時間勤務医の健康確保の代償休息、「予定された休日の確実な確保」でも良しとすべきか―医師働き方改革推進検討会
B・C水準指定の枠組みほぼ固まるが、医療現場の不安など踏まえ「年内決着」を延期―医師働き方改革推進検討会
医師の兼業・副業で労働時間は当然「通算」、面接指導等の健康確保措置は主務病院が担当―医師働き方改革推進検討会
B・C指定に向け、医師労働時間短縮状況を「社労士と医師等」チームが書面・訪問で審査―医師働き方改革推進検討会
高度技能習得や研修医等向けのC水準、「技能獲得のため長時間労働認めよ」との医師の希望が起点―医師働き方改革推進検討会(2)
地域医療確保に必要なB水準病院、機能や時短計画、健康確保措置など7要件クリアで都道府県が指定―医師働き方改革推進検討会(1)
2021年度中に医療機関で「医師労働時間短縮計画」を作成、2022年度から審査―医師働き方改革推進検討会(2)
長時間勤務で疲弊した医師を科学的手法で抽出、産業医面接・就業上の措置につなげる―医師働き方改革推進検討会(1)
1860時間までの時間外労働可能なB水準病院等、どのような手続きで指定(特定)すべきか―医師働き方改革推進検討会



医師・看護師等の宿日直、通常業務から解放され、軽度・短時間業務のみの場合に限り許可―厚労省
上司の指示や制裁等がなく、勤務医自らが申し出て行う研鑽は労働時間外―厚労省

医師働き方の改革内容まとまる、ただちに全医療機関で労務管理・労働時間短縮進めよ―医師働き方改革検討会



診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士・救急救命士が実施可能な医行為の幅を拡大―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
放射線技師に静脈路確保など認める法令改正、メディカル・スタッフが現に実施可能な業務の移管推進―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
技師・技士による検査や医薬品投与のための静脈路確保など認めてはどうか―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、教育研修や実技認定などで安全性を確保―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、「B・C水準指定の枠組み」に位置付けて推進―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
診療放射線技師による造影剤注入や臨床検査技師による直腸機能検査など、安全性をどう確保すべきか―医師働き方改革タスクシフト推進検討会
医師から他職種へのタスク・シフティング、「業務縮減効果大きく、実現しやすい」業務から検討―医師働き方改革タスクシフト推進検討会



医療計画に「新興感染症対策」を位置付け、地域医療構想は考え方を維持して実現に取り組む―医療計画見直し検討会
医療計画に感染症対策位置付け、感染症予防計画と組み合わせ『漏れ』なき対応を―医療計画見直し検討会(2)
医療計画に「新興感染症対策」を位置付け、「医療機関間連携」や「感染症以外の傷病対策」なども明確化―医療計画見直し検討会(2)
新興・再興感染症対策を医療計画・地域医療構想の中でどう勘案していくべきか―医療計画見直し検討会
新型コロナを契機に、地域医療構想の実現・医師偏在の解消・医師等の働き方改革を加速化せよ―社保審・医療部会

医療計画に「新興感染症対策」位置付け、感染症病床の整備目標や感染拡大時に患者を受け入れる医療機関の設定など記載を—厚科審・感染症部会



公立・公的病院の再検証スケジュール、今冬のコロナ状況見ながら改めて検討―地域医療構想ワーキング
中長期を見据えた地域医療構想の考え方を維持し、感染拡大時の機動的対応を医療計画で考慮してはどうか―地域医療構想ワーキング
感染症はいずれ収束し、ピーク時は臨時増床可能なこと踏まえ、地域医療構想の「必要病床数」を検討―地域医療構想ワーキング
医療機能の分化・連携の強化が、新興・再興感染症対策においても極めて重要—地域医療構想ワーキング



外来機能報告制度を了承、外来診療データもとに地域で「紹介型病院」を明確化―医療計画見直し検討会(1)
外来版地域医療構想の議論再開、地域で「医療資源を重点的に実施する基幹病院」を整備—医療計画見直し検討会
新興・再興感染症対策を医療計画・地域医療構想の中でどう勘案していくべきか―医療計画見直し検討会
新型コロナを契機に、地域医療構想の実現・医師偏在の解消・医師等の働き方改革を加速化せよ―社保審・医療部会

医療機能の集約化・役割分担・連携を進め、新型コロナ対策への寄与度に応じた財政支援を―有識者研究会



外来版「地域医療構想・機能報告制度」、「医療資源を重点的に活用する外来」の基幹医療機関を明確化―医療計画見直し検討会
どの医療機関が、外来化学療法等の「医療資源を重点活用する外来」を重点提供しているのか可視化してはどうか―医療計画見直し検討会
外来化学療法など「医療資源を重点活用」する外来医療、集約化の枠組み構築―医療計画見直し検討会

「公立等 vs 民間」対立煽らず、地域・病院の特性踏まえて「地域の医療提供体制」論議を―社保審・医療部会
大病院外来定額負担のバックボーンとなる「外来医療機能分化・かかりつけ医機能推進」をまず議論せよ―社保審・医療部会

75歳以上の医療費は2割負担、紹介状なし外来患者の特別負担を200床以上一般病院に拡大―全世代型社会保障検討会議



税制優遇を受けられる「認定医療法人」となるためには7月31日までに申請を―厚労省
持分なし医療法人への移行促進、認定医療法人制度を10月から改正—厚労省
持分なし医療法人への移行促進するため、認定医療法人の要件を実質緩和し期間を延長―社保審・医療部会
医業継続に係る相続などの納税猶予特例、2020年9月まで延長―2017年度税制改正