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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

医療計画に「新興感染症対策」を位置付け、地域医療構想は考え方を維持して実現に取り組む―医療計画見直し検討会

2020.12.15.(火)

医療計画の6事業目に「新興感染症対策」を盛り込み、「平時の取り組み」(例えば感染症拡大時に対応するための準備など)と「感染拡大時の取り組み」とを分けて整理しておく―。

また地域医療構想の考え方は維持したうえで、感染症対応については「医療計画」に沿って行うこととする―。

さらに約440の公立病院・公的病院等に求められている「機能の再検証」については、今冬の新型コロナウイルス感染症の状況を見てスケジュール等を検討していく―。

12月14日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)でこうした方針が了承されました。近く社会保障審議会・医療部会の了承を経て、医療法改正等の準備が進められます。

12月14日に開催された「第25回 医療計画の見直し等に関する検討会」

医療計画の6事業目に「新興感染症対策」を盛り込む

新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっており、医療関係者による懸命の努力が続けられています。そうした中で、現下の医療提供体制には、▼医療機関間の役割分担・連携体制の構築が不十分である▼局所的な病床数不足(感染症病床を超えて、一般病床での対応も必要となった)がある―などの課題・問題点があることが再認識されました。これを受け、2024年度からスタートする第8次医療計画の中に「新興感染症対策」を盛り込む方針が検討会で固められています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

さらに下部組織である地域医療構想に関するワーキンググループでは、「疾病構造の中長期的な変化傾向は変わらないために『地域医療構想の考え方』は変えずに、新興感染症による一時的な医療ニーズの急増には医療計画の対処方針に則って対応する」方針を固めました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

12月14日の検討会では、両者を合わせて最終審議を行っています。全体を振り返ってみましょう。

まず、「新興感染症対策」を医療計画の6事業目(医療法第30条の4第5項の「救急医療等確保事業」の1つ)に位置付けることになります。▼発生時期、感染力、病原性などを事前に予測することが困難である▼発生後、速やかに対応できるよう予め準備を進めておくことが重要である―という点が、「災害医療」に類似している点を踏まえたものです。2024-2029年度を対象とする第8次医療計画から「5疾病6事業および在宅医療」という形になります。

ただし、感染症は災害と異なり「日本全国で一定期間内に同時に蔓延する可能性がある」という特性があり、全国的な蔓延時には、災害医療で期待される「DMATやDPAT等による医師派遣」などが行えなくなる、などの点に留意が必要です。

医療計画への記載事項、「平時の取り組み」と「感染拡大時の取り組み」に分けて整理

医療計画への記載内容については、「平時からの取り組み」と「感染拡大時の取り組み」とに分けて整理されています。今後、都道府県が医療計画を作成する際の拠り所となる「基本指針」を議論する中で、より具体的に「どういう項目を医療計画の中に記載するのか」を詰めていくことになり、現時点では「記載項目のイメージ」と考えることが適当でしょう。

新興感染症対策に関する記載事項イメージ(平時)(医療計画見直し検討会1 201214)

新興感染症対策に関する記載事項イメージ(感染拡大時)(医療計画見直し検討会2 201214)



例えば平時の取り組みの中には、「感染拡大時にゾーニング等の観点から活用しやすい病床や感染症対応に転用しやすいスペース(病床のダウンサイズに伴う空きスペースを含む)の確保に必要な施設・設備の整備(重症例や疑い症例等を想定した整備を含む)」という項目が盛り込まれました。

新興感染症への入院医療については、▼まず「感染症病床」で対応する→▼感染拡大に合わせて、一般病床を「感染症患者受け入れ病床」に転換していく→▼さらなる拡大時には、一般病床を閉鎖して、「感染症病床」や「感染症患者受け入れ病床」に医療資源を集約する―という取り組みを行うことが現実的です。今般の新型コロナウイルス感染症にも、多くの医療機関がこうした対応を行っています。

新型コロナウイルス感染症患者の対応体制イメージ(地域医療構想ワーキング 201105)



この点、後述する地域医療構想を実現する中で「ダウンサイジング」(病床削減)が行われた場合には、病棟の中に「スペース」が生じることになります(例えば病室がまるまる1つ空くなど)。感染拡大時にはこうしたスペースにベッドを持ち込み、感染拡大防止策を講じて「感染症患者受け入れ病床」として活用する方策などが考えられるのです。日本病院会が提唱する「予備ベッド」も、この方策に近いものと言えるでしょう。

ただし、こうした「スペース」活用をした場合でも、重要かつ解決が難しい課題として「人材確保」の問題が残ります。例えば11月5日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、重症患者を多く受け入れる東京医科歯科大学においては「1対1・1対2(2対1ではない、患者1人に対し常時2人の看護職員を配置する)などの非常に手厚い看護体制を敷く必要がある」旨が報告されています。新興感染症、とりわけ重症患者に対応できる高度技術を持った看護師の確保は、大学病院ですら非常に難しく、「ベッド等のハード」整備以上に「人材確保」をどう進めればよいかを今後、具体的に詰めていく必要があるでしょう。

地域医療構想の基本的考え方は維持、感染症には医療計画に沿って対応

また「地域医療構想」と「新興感染症対策」との関係については、地域医療構想ワーキングでの議論どおり、次のように整理されました。

▽感染拡大時の短期的な医療需要には、各都道府県の「医療計画」に基づき機動的に対応する
▽地域医療構想については、その基本的な枠組み(病床の必要量の推計・考え方など)を維持し、引き続き着実な取り組みを進めていく

今般の新型コロナウイルス感染症については、これまでのところ「日本の人口構造を大きく変える」までの影響は出ていません。つまり今後の少子高齢化は進行し(少子化がさらに進行することが懸念されているほどである)、「少ない支え手で、多くの高齢者を支えなければならない」状況に変化はないのです。

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者になります。このため今後、医療・介護ニーズが急増することになり、このニーズに適切かつ効率的に対応できるような医療提供体制を、遅くとも2025年度までに各地域で構築しておく必要があります。これがすなわち「地域医療構想の実現」であり、その必要性は新型コロナウイルス感染症禍でも変わっていません。

このため、後者のように「地域医療構想の考え方」は維持し、新興感染症については上述した「医療計画の6事業目に記載された方針」に沿って対応する、との整理が行われたものです。

病院・病床の機能分化や連携の強化など「地域医療構想の実現」の必要性は新型コロナウイルス感染症に対応する中でも痛感されており、各地域で「地域医療構想調整会議を活性化する」とともに、国が「重点支援区域の設定」や「病床機能再編支援制度」などで下支えすべきこともが提言されています。

公立・公的病院等の再検証、「この冬の感染状況」を踏まえてスケジュール等を検討

「地域医療構想の実現」に向けては、まず「公立病院・公的病院等の機能を明確化する」ことが第一歩となります。多くの地域(ただし人口100万人未満の地域医療構想区域)では、公立病院や公的病院が基幹的な役割を果たしています。この地域医療の基軸について「明確化」を行うことが、地域全体の医療提供体制を考える上で最優先課題となることはここで述べるまでもないでしょう。

さらに、これらの病院には「公費の投入」「税制上の優遇」がなされており、民間医療機関サイドから「同じ土俵で闘っていない」と指摘されることも、公立・公的病院の機能明確化を優先検討事項とした背景にあります。

公立病院・公的病院等の一部(約440病院)については、再編・統合も含めた機能分化の再検証を行うことが求められています。そのスケジュールについては、当初「▼機能の見直しは2019年度中▼再編統合は2020年秋まで―」とされていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて白紙に戻されました(関連記事はこちらとこちら)。

この点、「新型コロナウイルス感染症への対応を最優先に進めており、現時点では再検証期限を切るべきではない」との考え(例えば自治体病院や自治体サイド)と、「地域医療構想のベースとなる人口構造・疾病構造の変化は続いており、再検証を安易に先送りすべきでない」との考えの双方があること、両者ともに頷ける部分が大きなことを踏まえ、検討会およびワーキングでは次のような整理を行っています。

この冬(2020年から21年にかけて)の感染状況を見ながら、改めて具体的な工程の設定を検討する(▼再検証対象医療機関(上述の約440病院)における具体的対応方針の再検証▼民間医療機関も含めた再検証対象医療機関以外の医療機関における対応方針の策定―)

▽2023年度に第8次医療計画の作成が都道府県で行われることを念頭に、「2022年度中を目途に地域医療構想の実現に向けた地域の議論が進められていることが重要となる」ことに留意する

幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「2025年度、さらにその先を見据えて、地域医療構想の実現を急ぐべき」と改めて強調しています。確かに地域医療構想の実現を先送りすれば、医療ニーズの変化に医療提供体制が応えられず、医療現場は疲弊し、最終的に地域住民が不利益を被ることとなります。しかし、現下では、再び新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっており、今後の動向を予測することは極めて困難なことから、上記の整理が「現時点では精いっぱい」と考えられます。



近く開催される社会保障審議会・医療部会の了承を経て、医療法改正等の準備が進められます。医療法改正案には、ぱっと思いつくだけでも▼医療計画の見直し(本稿)▼医師働き方改革外来機能報告制度地域医療支援病院の指定要件見直し―などが盛り込まれる見込みで、非常に大きな法律改正となりそうです。



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