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新型コロナ対策 医療崩壊の真実

中長期を見据えた地域医療構想の考え方を維持し、感染拡大時の機動的対応を医療計画で考慮してはどうか―地域医療構想ワーキング

2020.11.25.(水)

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、今後も新たな感染症の流行が懸念されるが、それによって「少子高齢化の進展に伴う、中長期的な疾病構造の変化」が大きく変わるものではない。このため地域医療構想の考え方(病床必要量など)は維持したまま、感染拡大時の機動的な対応(一般病床から感染症患者受け入れ病床への転換や臨時増床など)を医療計画の中で考えていくこととしてはどうか―。

11月25日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった議論が行われました。

注目される論点の1つ「公立・公的等病院の再編・統合に向けた再検証の期限」に関しては、結論は見えておらず、さらにワーキングで議論が続けられます。

11月25日に開催された「第29回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

「地域によっては病床必要量を上方修正する」必要もあるのでは、と小熊構成員

新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっています。11月に入り、全国各地で過去最高の新規感染者数を確認しているほか、地域によっては即応病床(即座に感染患者を受け入れられるよう、事実上空床にしている病床)の占有率が急上昇し、上限到達が見え始めるなど、緊張が高まっています。

ところで新型コロナウイルス感染症に対応する中で、現下の医療提供体制には、▼医療機関間の役割分担・連携体制の構築が不十分である▼感染防護具や医療用物資の確保・備蓄▼局所的な病床数不足(感染症病床を超えて、一般病床での対応も必要となった)がある▼特定の診療科における医師不足、看護師等の不足がある―などの課題・問題点があることが再認識されました。新型コロナウイルス感染症への対応はもちろん、今後予想される新興・再興感染症に対応するために、これらの課題解消を急ぐ必要があります。

一方、新型コロナウイルス感染症とは別に、我が国では少子・高齢化が進行しており(拍車がかかる可能性あり)、これに伴う「疾病構造の中長期的な変化」(慢性疾患患者の増加)に対応できる医療提供体制の再構築(地域医療構想の実現)が求められています。

両者のテーマ(感染症に対応するための医療提供体制確保、地域医療構想の実現)は密接に関連しています。例えば、地域医療構想では2025年度に向けて「地域の医療機関間の機能分化・連携を推進していく」ことが求められますが、これは、まさに新型コロナウイルス感染症対策の中で浮上している「医療機関の機能分担が進んでいないために、新型コロナウイルス感染症患者と、感染症罹患を抑えなければならない免疫低下患者(たとえば白血病で抗がん剤治療をしている患者など)との振り分けが難しい」などといった課題に通じるものです。

また、地域医療構想の実現に向けて「公立病院・公的病院等の一部(約440病院)について、再編・統合も含めた機能分化の再検証」が求められています(関連記事はこちらこちら)。しかし、これらの約4分の1は新型コロナウイルス感染症対応を積極的に行っており、「再検証に当たり感染症対策の要素も考慮すべきではないか」などの指摘もあります。

こうした状況を踏まえてワーキングでは、具体的な論点として、(1)新新興・再興感染症を地域医療構想の中でどう勘案するか(2)地域医療構想の実現に向けた今後の取り組み(3)医療提供体制再構築のスケジュールをどう考える―といった論点に沿って考え方を整理することとなっています(関連記事はこちらこちら)。なお、感染症対策の医療計画での位置付けに関しては、親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」において「医療計画の6事業目として新興感染症対策を位置付け、2024年度からの『第8次計画』に盛り込む」方向を固めています。

まず(1)に関しては、次のように整理してはどうか、との考え方が厚生労働省から示されました。中長期を射程に据えた(B)の考えに沿って医療提供体制の再構築を進めるとともに、(A)の考え方に立って「感染症拡大というスポット」に焦点を合わせた対応を行うものです。上述のとおり、両者は密接に関連している点に留意が必要です。

(A)感染拡大時の短期的な医療需要増への対応については、「医療計画」中で機動的に対応する考えを示していく

(B)中長期的な疾病構造の変化等に対応する必要性は変わっておらず、地域医療構想については、基本的な枠組み(病床必要量の推計・考え方など)を維持し、引き続き、着実に取り組みを進めていく



この考え方に立てば、「感染症対応のために病床必要量(2025年における必要病床数)を増やす」という戦略ではなく、「すでに各都道府県で計算されている病床必要量は維持する(B)。感染拡大時には、一般病床から感染床病床への転換や臨時増床、臨時の医療施設開設などで対応する(A)」という戦略をとることになります。前者では「平時(感染拡大時以外)の負担が大きくなりすぎる」ためです。

新型コロナウイルス感染症患者の対応体制イメージ(地域医療構想ワーキング 201105)



しかし、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は、ABの戦略で感染症対応が可能な地域もあれば、それだけでは対応できず増床が必要となる地域もあるのではないか、と改めて指摘しています。ワーキングが開催された11月25日時点では、北海道旭川市では新型コロナウイルス感染者増により「一般病床での感染患者受け入れでも間に合わない」事態が生じており、札幌市の病院に移送しようにも「札幌市でも近く病床逼迫が生じる可能性がある」ために、それが叶わないといいます。小熊構成員は、地域の実情を踏まえて「病床必要量を見直す必要の有無」を地域ごとに精査する必要があると考えています。

今後の地域医療構想・感染症対策を考える上で「ベース」となるテーマであり、さらにワーキングで議論を深めていきます。



なお、いずれの戦略をとる場合でも「感染症拡大に対応するために、どの程度のベッドが必要になるのか」を試算しなければなりませんが、未知の感染症に対して「どの程度のベッド数が必要になるのか」をゼロベースで試算することは極めて困難です。今般の新型コロナウイルス感染症でも、一定の知見が集積された6月19日になってようやく「感染の拡大フェイズに応じた医療提供体制の整備」を求める事務連絡が示されています。今後、どのような準備を進めておくべきなのか、親組織の「医療計画の見直し等に関する検討会」で検討が進められることになるでしょう。そこでは、どのような感染症を想定するのかも重要な論点になりそうで、今村構成員は「空気感染する新型の麻疹が発生した場合には、新型コロナウイルス感染症どころの騒ぎではなくなる」と警戒しています。

この点について小熊構成員は、「新型コロナウイルス感染患者がどの程度発生し、どの病院のどの病床で対応したのか」などを精緻に検証し、それを参考値にして「新興感染症に対応するための病床整備量」を検討していくべきと提案しています。



関連して織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は、「地域医療構想を進める中では、多くの地域で『病院のダウンサイジング』が求められる。その削減分を、将来起こるであろう新興感染症対策に充てるような検討も必要ではないか」との旨を、また今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は、「感染症対応の基幹は、地域の中核的な大病院になると思う。感染症患者や対応するスタッフと、それ以外の患者やスタッフとが交わらないような動線確保が必要となるからである。そこにさらに感染症対応を求めるとなれば、『病院のダウンサイジング』方向と矛盾しないか。その点も考えていく必要がある」旨のコメントをしています。これらも、親組織の「医療計画の見直し等に関する検討会」での検討において、重要な視点となりそうです。



なお、この11月から見られている新規患者増(いわゆる第3波)に関連して、「近く、即応病床(即座に新型コロナウイルス感染患者を受け入れられるよう、事実上空床にしている病床)の占有率が急上昇し、上限到達が見え始めている。2024年度からの第8次医療計画も重要であるが、現下の危機的状況への対応方針も明確にしてほしい」との声が猪口雄二構成員(日本医師会副会長)をはじめ各構成からあがっています。

地域医療構想実現のため、調整会議の活性化や国によるダウンサイジング支援など強化

また(2)に関して厚生労働省は、上記(B)を踏まえて、地域医療構想を実現するために次のような取り組みを進めてはどうか、との考えを示しています。これまでの「地域医療構想の実現」に向けた取り組みをさらに強化するもので、この方向には特段の異論・反論は出ていません。

▽公立・公的医療機関等において、機能分化に向けた再検証に関する議論・取り組みを実施するとともに、民間医療機関においても、改めて機能分化の対応方針を策定し、地域医療構想調整会議の議論を活性化する

▽国において、次のような支援を行う
▼地域医療構想調整会議における議論の活性化に資するデータ・知見等を提供する
▼地域医療構想調整会議における議論・合意を前提として、国による助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」を選定し、積極的に支援する(関連記事はこちらこちらこちら
▼地域医療構想調整会議における医療機能の分化・連携の議論を踏まえ、雇用や債務承継など病床機能の再編に伴い「特に困難な課題」に対応するための財政支援として、2020年度に創設した「病床機能再編支援制度」(ベッド削減による逸失利益等の補填など)について、2021年度以降は「消費税財源を充当するための法改正」(安定財源の確保)を行い、引き続き病床機能の再編を支援する(関連記事はこちらこちら
▼地域医療構想調整会議における医療機能の分化・連携の議論を踏まえ、医療機関の再編統合を行う場合において「民間医療機関が資産等の取得を行った際の税制優遇措置」の創設を検討する(2021年以降の税制改正において)

新型コロナ対策で多忙な中、「地域医療構想の実現」に向けた地域の議論をどう進めるか

また、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で「地域医療構想の実現」等に向けたスケジュールをどう考えるかも、注目される論点の1つです。

地域医療構想の実現は「2025年度」をゴールに据えており(2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、医療ニーズが増大すると考えられ、それまでに医療提供体制を再構築しておく必要がある)、残された時間はわずかです。このため、新型コロナウイルス感染症対策に配慮したうえで、「一定のスピード感を意識する必要がある」との考えを示しています。

この点、野原勝構成員(岩手県保健福祉部長)は「まずなすべきは新型コロナウイルス感染症対策であり、そこに十分な配慮をしてほしい」と要望していますが、一方で幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「重点支援区域をはじめ可能な構想区域で検討が再開できるよう、地域の実情に配慮しつつも2022年度(団塊の世代が後期高齢者になり始める)を見据える形で今後の工程を具体的に明示する飛鳥がある」との考えを示しました。

いずれの言にも頷ける部分があり、さらにワーキングで議論を重ねていくことになります。



なお、上述のとおり「地域医療構想がゴールを迎える2025年度」は目の前に迫っており、構成員からは「2025年度の先を考える必要がある」との指摘も出ています。2025年度から2040年度にかけて、高齢者数は目立って増加しないものの、高齢者を支える現役世代の人口が急速に減少していくことが分かっています。これは「医療従事者の減少」に直結するため、「地域で医療従事者をどう確保するか」を急ぎ考えるとともに、実行していかなければなりません。

この点、今村構成員は「当面のゴールをどこに据えるべきかを考える必要がある。2030年・2040年・2045年のそれぞれをゴールに据えたとき、人口構成は大きく異なり、取るべき対策も変わってくる」と、尾形裕也座長(九州大学名誉教授)は「地域医療構想は『社会保障と税の一体改革』の中で示された考えであり、そのベースは『給付と負担の在り方の見直し』である(医療保険制度の持続可能性確保)。この点を考慮せずに医療提供体制だけの議論をしても机上の空論に終わってしまう点に留意が必要である」とコメントしています。

尾形座長の視点に立てば、「2025年度から先」については、より大所高所に立った議論が必要となってきます。例えば「保険給付について、現在のように薬事承認された技術をすべて保険適用していくのか」「高額な医療技術をどこまで保険適用していくのか」なども含めて、総合的に「我が国の医療の在り方」を検討していく必要があります。

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