2026年度の薬価・材料価格制度改革論議始まる、「購入価格>償還価格(薬価、材料価格)」となるケースにどう対応するか—中医協
2025.7.1.(火)
6月25日に開催された中央社会保険医療協議会・総会および、先立って開催された薬価専門部会・保険医療材料専門部会で、2026年度の薬価・材料価格制度改革論議が始まりました(同日の中医協総会における「医療提供体制と診療報酬」に関する記事はこちら)。
薬価・材料価格制度改革については、主に薬価専門部会・保険医療材料専門部会で検討が深められ、最終的に中医協総会で見直し内容を決定します。
これまでの薬価制度改革効果踏まえ、国民負担軽減とイノベーション評価のバランス考慮
2026年度には、診療報酬改定とセットで実施される、いわゆる「通常の薬価改定」が予定され、6月25日の中医協でキックオフ論議が行われました。
厚生労働省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、2025年度薬価改定・2024年末の大臣折衝(福岡資麿厚生労働大臣・加藤勝信財務大臣)、2024年度薬価改定、骨太方針2025などで指摘・注文された事項を踏まえて、次のような事項が主な検討課題になるとの考えを示しています。
(検討課題)
▽これまでの薬価制度改革の検証
▽イノベーションの適切な評価
▽医薬品の安定供給の確保
▽診療報酬改定がない年の薬価改定(いわゆる中間年改定)
▽高額医薬品(感染症治療薬、認知症薬)の薬価算定方法
▽物価・賃金上昇への対応
▽ほか(関係業界からの提起事項、薬価算定組織(中医協の下部組織、薬価算定ルールに沿って新薬の薬価設定などを行う)からの提起事項など)

2026年度薬価制度改革に向けた検討課題(中医協1 250625)
近く「関係業界からの意見聴取」を行った後、本年(2025年)7-8月頃に「薬価価算定組織」からの意見(薬価設定を行う中で「現行の薬価算定ルールの問題点」が明らかになっている)も踏まえて、薬価制度改革論議(いわゆる第1ラウンド)を実施。さらに、今秋(2025年9-11月頃)に再度「関係業界からの意見聴取」を行ったうえで、薬価制度改革論議(いわゆる第2ラウンド)を実施。本年(2025年)12月頃に、薬価調査結果速報、さらなる関係業界からの意見を踏まえて、「薬価改定の骨子案」を取りまとめるイメージです(年明け(2026年)早々に、中医協総会で薬価制度改革を歳出決定する)。

2026年度薬価制度改革に向けた検討スケジュール(中医協2 250625)
こうした論点を議論していくことに反対意見は出ていませんが、中医協委員からは▼2024年度の薬価制度改革、2025年度の中間年改定で医薬品の安定供給・イノベーション評価を理由とし、業界の要望に基づいて一定の評価を行った。その結果・成果を見ながら議論していくべき(長島公之委員:日本医師会常任理事)▼逆ザヤ(「薬局や医療機関が購入する価格」が「償還価格」(薬価)よりも低く、使用するほど赤字になる)品目が増加しており、対応を検討すべきである(森昌平委員:日本薬剤師会副会長)▼「公的医療保険の持続可能性」の視点ももって、薬剤の費用負担の在り方を検討していくべきであろう。たとえば医薬品のライフサイクル(新薬として登場し、特許が切れたのちに後発品に市場を譲るなど)の勘案、カテゴリ別の薬価改定率などを検討する必要がある。あわせて2024年度薬価制度改革の効果(国内未承認薬の開発状況)などを見る必要もある。中間年改定について考え方を整理しておくことで、将来の予見可能性も高まり、関係業界にも好ましいことであろう(松本真人委員:健康保険組合連合会理事、鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事、佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)▼イノベーション評価と国民負担軽減のバランス確保が重要となる(奥田好秀委員:日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)—などの注文がついています。
また、厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課(医薬産業振興・医療情報企画課セルフケア・セルフメディケーション推進室長併任)の水谷忠由課長からは、これまでと同様の考え方・仕組みで「2025年度の薬価調査」を行う方針が提案され、了承されました。

2025年度薬価調査の概要(中医協3 250625)
上述のとおり、本年(2025年)12月上旬に、この調査から「医療機関・薬局が、実際にいくらで医薬品を購入しているのか、償還改革(薬価)とどの程度の乖離があるのか」などが明らかになり、それも踏まえて「薬価をどの程度引き下げるか」(さらに診療報酬をどの程度引き上げるか)を検討していきます(2023年度の薬価調査結果の記事はこちら、2024年度の薬価引き下げ・診療報酬改定率の記事はこちら)。
医療材料の購入価格が高騰し、「償還科価格(材料価格)<購入価格」となるケースも
2026年度には、保険医療材料価格制度改革(材料価格改定)も予定されています。厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の木下栄作室長は、医療材料を取り巻く環境の変化も踏まえ、2026年度改革に向けて次のような議論を行うことを提案しています。
(1)2024年度保険医療材料制度改革の骨子において「検討を要する」とされた事項(関連記事はこちら)
▽イノベーションの適切な評価
▽外国価格調整
(2)答申書附帯意見に関する事項(関連記事はこちら)
▽イノベーションの適切な評価
▽新たに導入した評価の影響についての検証
▽医療機器等に係る費用構造等についての分析
(3)その他
▽医療機器基本計画に基づく事項
▽関係業界から提起された事項
▽保険医療材料等専門組織(中医協の下部組織、材料価格算定ルールに沿って価格設定を行う中で、現行ルールの問題点が明らかになっている)から提起された事項

2026年度材料価格制度改革に向けた検討課題(中医協4 250625)
こうした方針に異論・反論は出ていませんが、▼特定保険医療材料等の購入価格が上昇し、医療機関経営を圧迫している。こうした点も考慮して議論を行ってほしい(茂松茂人委員:日本医師会副会長)▼特定保険医療材料等についても「逆ザヤ」(購入価格>材料価格)が生じ、薬局経営に深刻な影響を及ぼしている点への対応を行ってほしい(森委員)▼2024年度材料価格制度改革では、プログラム医療機器に様々なタイプがあることを踏まえた対応を行っており、その効果検証を十分に行うべき(松本委員)—といった注文・意見が出されています。
今後、8月に「保険医療材料等専門組織から意見(プログラム医療機器に関するものを含む)を聴取、関係業界からの意見聴取」を行う→9-11月に「各検討事項について議論を深める」→11月に「関係業界からの2度目のヒアリングを行う」→12月に「2026年度保険医療材料制度改革の骨子を固める」→2026年1月に「26年度保険医療材料制度の見直し内容を決定する」というスケジュールで議論が進められます。

2026年度材料価格制度改革に向けた検討スケジュール(中医協5 250625)
なお、これまでと同様の考え方・仕組みで「2025年度の材料価格調査」を行うことも了承されています。

2025年度材料価格調査の概要(中医協6 250625)
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