骨太方針2025の「経済・物価動向に相当する増加分加算」方針を評価、2026年度診療報酬の大幅プラス改定と改定前の対応に期待—日病協
2025.6.24.(火)
石破茂内閣が決定した「骨太方針2025」では「経済・物価動向に相当する増加分の加算」方針が明示された。これは、各病院団体がこれまでにないほどの精力的な活動を行ったことの成果と言える—。
この方針が2026年度診療報酬改定に確実に反映されかどうかはまだ明らかでなく、活動を継続していく—。
全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)の代表者会議(会長、副会長クラスの意見交換会)が6月20日に開かれ、こうした点を確認したことが望月泉議長(全自病会長)と猪口雄二副議長(全日病会長)から報告されました。
医療界が一丸となって粘り強く医療機関の窮状を訴えた成果である
Gem Medで報じているとおり、6月13日に石破茂内閣が決定した骨太方針2025では、医療・介護をはじめとする社会保障予算について、これまでの「高齢化の伸び」に加えて、「人件費・物価高騰」や「病院経営安定」などを勘案した増額を行う方針が明示されています。
保険医療機関等の収益の大部分は「公定価格である診療報酬」であるため、一般企業のように「物価や人件費が高騰し経営が厳しくなっているので、サービス価格(診療報酬)を引き上げて、コスト増を吸収しよう」と個々の医療機関等が行動することはできず、「診療報酬等の引き上げによって物価、人件費等の高騰分を補填することが必要不可欠である」ことを石破茂内閣でも認識していることが伺えます。
この点について日病協・代表者会議では、「経済・物価動向に相当する増加分の加算が明記された」ことを高く評価。この背景には「これまでないほど各病院団体が精力的に活動し、国会議員や都道府県知事らに物価・人件費高騰に伴って病院経営が逼迫している状況を訴えつづけてきた」ことがあると分析しています。
さらに、骨太方針2025に▼中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靱で持続可能な社会保障制度を確立するため、医療・介護・障害福祉等の公定価格分野の賃上げ・経営安定・離職防止・人材確保がしっかり図られるよう、「コストカット型からの転換」を明確に図る必要がある▼次期報酬改定を始めとした必要な対応策において、「力強い賃上げの実現」や「物価上昇による影響」等について、経営安定や幅広い職種の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う—との文言が盛り込まれた点についても、「まったく指摘どおりであり、こうした方向に進んでほしい」と各病院団体が歓迎していることも望月議長・猪口副議長から報告されました。
もっとも「経済・物価動向に相当する増加分の加算が明記された」ことは「第一歩」に過ぎず、「診療報酬の大幅プラス改定には相応の財源が必要となるため、改定が確保される方向に動くよう、油断をせずに状況を注視し、必要な行動をとっていく」考えを望月議長は強調しています。
また猪口副議長は「既に人件費・物価の高騰で息切れを起こしている(経営がのっぴきならない状況に陥っている)病院も少なくない。本年度内(つまり改定前、期中)にも何らかの対応を行ってほしい」と期待を寄せています。
なお、6月20日の日病協代表者会議では、中央社会保険医療協議会に参画している池端幸彦氏(日本慢性期医療協会副会長)の任期が近く切れることに伴い、全国自治体病院協議会の小阪真二副会長(島根県立中央病院長)を推薦することも決定しています。
今後の2026年度診療報酬改定論議にさらに注目が集まります。


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