2026年度に過去最高水準の介護報酬改定、最大で「介護職員給与を定昇込みで1万9000円引き上げ」へ―社保審・介護給付費分科会
2025.12.29.(月)
来年度(2026年度)に過去最高水準の介護報酬プラス改定(期中、臨時の改定)を行い、介護職員等処遇改善加算について「対象者を介護従事者全体に拡大・訪問看護やケアマネジメントなどにも拡大」する。処遇改善額(賃上げの幅)は「月あたり1万円」をベースとし、最大で「月あたり1万9000円」(事業所の定期昇給込み)を目指す―。
2024年の人事院勧告をもとに「国家公務員・地方公務員の地域手当の級地区分」見直しが進んでいる。介護報酬の地域区分は、この級地区分に準拠して設定されるが、市町村の意向を確認した上で経過措置・特例措置を設けており、2027年度の介護報酬改定(通常改定)に向けた市町村の移行確認・調整を進めていく―。
12月26日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会でこうした議論が行われました。2026年度の期中改定(臨時改定)に向けて、審議報告・改定率が出揃い、年明けから具体的な処遇改善加算見直し論議が行われます。
2026度臨時(期中)介護報酬改定で「介護従事者」の処遇改善等にプラス2.03%を措置
2026年度には臨時の介護報酬改定が行われます。
介護職員の賃上げを目指した加算によって確実に給与増が進んでいるものの、他産業ではより高水準の賃上げを行っているため、介護職員と他産業との賃金格差は拡大してしまっています。これを放置すれば「介護人材不足にますます拍車がかかってしまう」ため、高市早苗内閣は2025年度補正予算案の中で介護従事者の賃上げに向けた補助金を創設することとし、この取り組み・効果を継続するための2026年度臨時(期中)介護報酬改定が期待されています。
こうした方針に沿って社会保障審議会・介護給付費分科会では、▼【介護職員等処遇改善加算】について「対象者を介護職員から介護従事者全体に広げる」「これまで対象となっていない訪問看護や居宅介護支援(ケアマネ事業所)なども対象に加える」べき▼上位区分の加算I・IIでは、生産性向上・協働化の取り組みを進めるための要件を設定すべき▼物価高騰なども踏まえて「食費の基準費用額」についても引き上げを行うべき―といった内容の審議報告をまとめています。
また12月24日には、上野賢一郎厚生労働大臣と片山さつき財務大臣が2026年度予算編成に向けた折衝を行い、その中で次のような介護報酬改定の方向を決定しました。
【全体像】
▽「『強い経済』を実現する総合経済対策」を踏まえ、2027年度介護報酬改定(通常の3年に一度の改定)を待たずに「期中改定」を実施する
▽改定率は「プラス2.03%」とする(2026年度予算において国費を518億円投入する。介護保険の財源は、国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%・保険料50%で構成されるため介護費は2072億円程度増加すると見込まれる)
【処遇改善】
▽政府経済見通し等を踏まえた介護分野の職員の処遇改善、介護サービス事業者の生産性向上や協働化の促進等のため、以下の措置を講じる
▼介護職員のみならず、介護従事者を対象に幅広く「月あたり1万円(3.3%)の賃上げ」を実現する措置を行う
▼さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に「月あたり7000円(2.4%)の上乗せ」を実施する
→これらの合計で、介護職員については最大で「月あたり1万9000円(6.3%)の賃上げ(事業所の努力による定期昇給2000円込み)」が実現する見込みである
▽上記の措置を実施するため、介護職員等処遇改善加算について次の見直しを行う
▼処遇改善加算の対象について、「介護職員のみ」から「介護従事者」に拡大する
▼生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分を設ける
▼これまで処遇改善加算の対象外だった、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等について新たに処遇改善加算を設ける
【食費の基準費用額見直し】
▽2027年度介護報酬改定を待たずに、介護保険施設等における「食費の基準費用額」について、1日当たり100円引き上げる
▽ただし低所得者については、所得区分に応じて利用者負担を据え置き、または1日当たり30-60円の引上げに軽減する
【2027年度の介護報酬改定】
▽2027年度の通常介護報酬改定においては、▼介護分野の賃上げ▼経営の安定▼離職防止▼人材確保—を図るため、「介護事業経営実態調査」等で介護サービス事業者の経営状況等について把握した上で、「物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応」を実施する
▽同時に、介護保険制度の持続可能性を確保するため、介護給付の効率化・適正化に取り組む必要がある
▽有料老人ホームに関する制度改正の内容も踏まえつつ、サービスの提供形態に応じた評価の在り方について所要の措置を講じることを検討する(関連記事はこちら)
12月26日の介護給付費分科会では、厚生労働省老健局老人保健課の堀裕行課長が、上記内容を報告するとともに、次のような補足説明も行っています。
▽改定率「2.03%」の内訳は、▼処遇改善:プラス1.95%▼基準費用額引き上げ:プラス0.09%—である
▽改定率「2.03%」は「過去最高水準」である(2009年度のプラス3.0%が最高であるが、これは「2009-11年度の3年度分」の数字である。2019年10月の臨時改定はプラス2.13%で2番目に高いが、これは「消費税率8%→10%」対応改定である)

介護報酬改定率(社保審・介護給付費分科会1 251226)
▽低所得者の負担限度額(食費)について、在宅生活者との公平性等を総合的に勘案したうえで次のように軽減する
・利用者負担第1段階(生活保護被保護者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者)
→据え置き(1日あたり300円(ショートステイでも同額)のままとする)
・利用者負担第2段階(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下)
→据え置き(1日あたり390円(ショートステイでは600円)のままとする)
・利用者負担第3段階(1)の利用者(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超120万以下)
→1日当たり30円増(1日あたり680円(ショートステイでは1030円)に引き上げる)
・利用者負担第3段階(2)の利用者(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120万円超155万円以下)
→1日当たり60円増(1日あたり1420円(ショートステイでは1360円)に引き上げる)
▽ほか、介護保険部会での議論を踏まえ、所得段階間の均衡を図る観点からの負担限度額の見直し(第3段階1・2の細分化など)を2026年8月から27年度にかけて実施する
▽基準費用額(食費)見直しの施行時期は2026年8月とする

補足給付の見直し2(2026年8月から)(社保審・介護保険部会2 251225)

補足給付の見直し1(2026年8月から(青枠)・2027年8月から(赤枠)の2段階で実施)(社保審・介護保険部会1 251225)
こうした内容について介護給付費分科会では、▼「介護職員について最大1万9000円の賃上げ」とされているが、ここには事業所の自助努力である「定期昇給2000円」が含まれている。誤解のないように、予算措置(介護報酬での対応)部分は「最大1万7000円」であると明確にすべき(平山春樹委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長、小泉立志委員:全国老人福祉施設協議会副会長)▼生産性向上・協働化に向けた取り組みを行う場合の「上位加算」について、新たに対象となるケアマネ事業所や訪問看護なども取得可能な仕組みとしてほしい(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)▼食材費等は現在も上昇を続けている。状況を逐次把握し、2027年度の通常介護報酬改定でも適切な引き上げを行ってほしい(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)▼相当の賃上げが期待されるが、それでもまだ他産業との賃金水準に格差がある。状況を逐次把握し、今後も必要な対応を行ってほしい。2026年度診療報酬改定では2段構えの対応をとることになり、2027年度の通常介護報酬改定でも同様の考え方を採用してほしい(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)▼介護報酬の大幅引き上げは、現役世代の保険料増につながる。介護職員の処遇改善等が確実に進むことを確認するとともに、今後「給付費の適正化による負担減」も十分に検討すべき(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)—といった意見が出ています。
今後、こうした意見も踏まえながら、審議報告・改定率に沿って、年明けから具体的な処遇改善加算見直し論議が行われます。
2027年度介護報酬改定に向け、「地域区分」の見直し論議が始まる
同日の介護給付費分科会では、地域区分の見直し論議も行われました。
介護報酬では、診療報酬と異なり、地域における人件費水準を考慮した「単価」が地域別に設定されています(地域区分単価)。例えば東京23区では人件費が高いため、ほかの自治体と同じ介護報酬のままでは、介護サービス事業所などの経営が苦しくなってしまいます。また、サービスの種類によって人件費の割合が異なります。そこで、▼地域の人件費水準▼サービスごとの人件費割合―に応じて、単価が区分されているのです。

介護報酬の地域区分(社保審・介護給付費分科会2 251226)
この地域区分は、公務員(国家公務員・地方公務員)の地域手当に準拠して設定されますが、国家公務員の地域手当については、2024年8月の人事院勧告において「級地区分を設定する地域の単位を広域化(従来の市町村単位から都道府県単位を基本)するとともに、級地区分の段階数を7区分から5区分とする」こととされ、2025年度から段階的に支給割合の引き上げや引き下げが実施されています。
また、地方公務員の地域手当についても同様の見直しが行われ、順次、各市町村で地域手当を設定していきますが、「特別交付税の減額措置」(人事院の定める支給割合を超えた地域手当引き上げを行う場合、特別交付税が減額されてしまい、市町村財政が厳しくなる)が2025年度から廃止されたため、「国家公務員とは異なる独自の支給割合を設定する自治体」が増加すると考えられます。

公務員の地域手当の見直し内容(社保審・介護給付費分科会3 251226)

見直し後の級地区分など(社保審・介護給付費分科会4 251226)
堀課長は、こうした状況を踏まえ、2027年度介護報酬改定(通常改定)にむけて、以下のスケジュールで市町村の意向を確認しつつ、地域区分の見直しに向けた検討を進める考えを示しました。
▽2026年2-3月:市町村への意向調査を行う(2027年度以降の地域区分の設定に係る意向や各市町村における公務員の地域手当の支給割合等を調査)
▽2026年度以降:2027年度介護報酬改定に向けて介護給付費分科会で議論を行う
▽2026年末頃:市町村に2027年度からの地域区分を提示する予定
この点について介護保険部会では、▼見直しによって「地域区分が下がる→単価が下がる→介護サービス事業者の収益がさがる」こともありうる。これでは2026年度の期中介護報酬改定の効果が減殺されてしまう。「介護従事者の処遇を悪化させない」という視点で検討してほしい(濵田委員、小泉委員、東委員、田母神裕美委員:日本看護協会常任理事)▼地域区分は利用者・家族には非常に難解であり、分かりやすく説明してほしい(志田信也委員:認知症の人と家族の会副代表理事)—などの声が出ています。
こうした声も参考に、まず「市町村の意向調査」が進められます。
【関連記事】
2026年度にプラス2.03%の臨時(期中)介護報酬改定を行い、介護従事者全体の処遇改善(月1万円以上)目指す―上野厚労相(2)
2026年度臨時介護報酬改定(期中改定)で処遇改善加算を拡充、訪問看護やケアマネ事業所も対象に追加―社保審・介護給付費分科会
2026年度の臨時介護報酬改定(期中改定)、処遇改善加算を拡充し訪問看護やケアマネ事業所も対象へ―社保審・介護給付費分科会
2026年度の臨時介護報酬改定(期中改定)では「介護に携わる全スタッフ」の賃上げを検討してはどうか―社保審・介護給付費分科会
病院経営の危機踏まえ、1床当たり「賃金分8万4000円、物価分11万1000円」の緊急補助、救急病院では加算も―2025年度補正予算案
介護職員確保・定着のため2026年度に臨時「介護報酬改定」行い、さらなる処遇改善を図ってはどうか―社保審・介護給付費分科会
介護職員のさらなる処遇改善に向けて、「2026年度に臨時の介護報酬改定」などを行うべきか—社保審・介護給付費分科会




