2025年12月-26年5月までの介護従事者の賃上げ補助事業、対象者や対象経費などのさらなる詳細を明示—厚労省
2026.1.22.(木)
厚生労働省は1月21日に事務連絡として「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第1版)」を示しました(厚労省サイトはこちら)。
今後も運用の中でさらなる疑問が現場から出されると思われ、その場合にはQ&Aの第2・第3版などが示されることでしょう。
補助金の「申請スケジュール」や「要件」などの詳細を明らかに
介護人材の確保・定着に向けて、2025年度補正予算案の中で次のような介護従事者の賃上げに向けた補助金が創設されました。。
▽介護分野における物価上昇・賃上げ等に対する支援(1920億円)
→以下の賃上げ支援を行う
(a)介護従事者に対する幅広い賃上げ支援:1万円
(b)協働化等に取り組む事業者の介護職員に対する上乗せ:5000円
(c)介護職員の職場環境改善の支援(人件費に充てた場合、介護職員に対する4000円の賃上げに相当)
→対象期間:本年(2025年)12月から来年(2026年)5月の「賃上げ相当額」を支給する
→(a)の支給対象事業者は処遇改善加算取得事業者、加算対象外サービス(訪問看護、訪問リハ、ケアマネ等)については処遇改善加算に準ずる要件を満たすことが要件
→(b)では、処遇改善加算取得に加え、訪問、通所サービス等では「ケアプランデータ連携システムへの加入」、施設、居住サービス、多機能サービス、短期入所サービス等では「生産性向上加算IまたIIの取得」などが要件
→(c)では、処遇改善加算を取得の上、職場環境等要件の更なる充足等に向けて、職場 環境改善を計画し実施する事業者(要件は2024年度補正予算の「介護人材 確保・職場環境改善等事業」と同様)を対象とする

2025年度補正予算案より10
補助金の詳細は昨年(2025年)末に、通知「令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の実施について」の中で示されていますが、今般、より詳細な内容をQ&Aで明らかにしています。主なものを眺めてみましょう。
まず、補助金申請等のスケジュールについては次のような考え方が示されました。
▽「介護サービス事業所等からの計画書・実績報告書の提出受付開始時期・提出期限」は各都道府県が設定する(つまり、介護事業所・施設は都道府県に確認する必要がある)
▽本年(2026年)3月末までに補助金支給を受けた場合には「2025年12月から2026年3月末まで」の間に賃金改善や職場環境改善を行う必要がある
▽本年(2026年)4月以降に補助金の支給を受けた場合には「2025年12月から各自治体が定める実績報告書の提出の期限まで」の間に賃金改善や職場環境改善を行う必要がある
→賃金改善は、介護サービス事業所等に対する緊急支援という補助金の趣旨に鑑み「可能な限り速やかに実施」することが求められる
また、補助要件の1つとなる「基準月」(基準月に介護職員等処遇改善加算を算定していることなどが補助要件となっている)については、次のような考え方が示されました。
▽原則、「2025年12月にサービスを提供している介護サービス事業所等」を対象とし、これらの事業所等における基準月は、「原則2025年12月」とする
▽都道府県の事業実施スケジュールによっては以下の例外的な取り扱いが可能となる場合がある
・2025年12月にサービスを提供している介護サービス事業所等について、大規模改修や感染症まん延等のやむを得ない事情により「2025年12月の介護報酬が著しく低い」場合や、2025年12月サービス提供分が月遅れ請求となった場合には、介護サービス事業所等の判断で「2025年12月から2026年3月までのいずれかの月を基準月として選択する」こと
・2026年1-3月に新規開設された介護サービス事業所等を事業の対象とする場合には、基本的に「初回サービス提供月を基準月とする」ことを想定しているが、初回サービス提供月のサービス提供日数が著しく少ない等の場合には、介護サービス事業所等の判断で「初回サービス提供月から2026年3月までの間の別の月を基準月として選択する」ことも差し支えない
・上記の例外的な取り扱いにより「2026年1-3月のいずれかを基準月とする」場合でも、申請事務円滑化の「都道府県への事由の届けは不要」とする
・都道府県により対応が異なる場合があるため、介護サービス事業所等は「各都道府県の実施要綱」などを確認してほしい
また、補助要件をクリアしているかどうかについては、次のような考え方示されています。
▽要件の審査に当たり、計画書や実績報告書での誓約や対応の報告以外に別の資料提出などを一律に求めることはしないが、各介護サービス事業所等において、根拠診療を用意しておき、都道府県の求めがあった場合には速やかに提出することが必要である(根拠資料の保存期間は2年間)
(根拠資料例)

根拠資料例1

根拠資料例2
ほか、補助要件に関して次のような点も明らかにされています。
▽「法人本部の職員」について、「補助金の対象である介護サービス事業所等における業務を行っている」と判断できる場合には、賃金改善や職場環境改善の対象に含めることができる
▽補助金の対象となっていない介護サービス事業所等の職員は、本補助金を原資とする賃金改善や職場環境改善の対象に含めることはできない
▽賃金改善は「従業員への基本給等への支給に充てる」ものだが、当該賃金改善に伴い生じる法定福利費等の「事業主負担の増加分」を含めることも可能である(給与がアップすれば社会保険料負担もあがり、その場合,同時に社会保険料の事業主負担分も上がる)
▽補助対象経費には「賃金改善経費」と「職場環境改善等経費」の2種類があり、実績報告書には「賃金改善所要額≧賃金改善経費総額」を示す必要があるが、補助額通知の際には「総額」のみが示される。「補助金総額のうちの賃金改善経費総額」の値は、「介護サービス事業所等が交付を受けた補助額」×「介護サービス事業所等が交付を受けた補助額の交付率に占める、賃金改善経費分の交付率」で計算する(1円未満の端数は四捨五入)
・各サービスにおける交付率と、そのうち賃金改善経費分の交付率は、実施要綱別紙1の表1から表3までに記載されている(関連記事はこちら)

訪問・通所系サービスの交付率等

施設系サービスの交付率等

訪問看護やケアマネ事業所なども賃上げ補助の対象となる
。
▽生産性向上要件にある「厚生労働省がケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有するシステム」とは、「居宅介護支援費に係るシステム評価検討会」で認められたもので、本年(2026年)1月21日時点では▼カナミッククラウドサービス(カナミックネットワーク社)▼ケアプランデータ連携サービス(富士通四国インフォテック社)▼「でん伝虫」データ連携サービス(コンダクト社)が該当する
・最新の認定状況は厚労省サイトで確認してほしい
▽医療・介護サービスどちらも提供している訪問看護ステーションについて、医療分野の賃上げ支援補助金と本補助金の双方を申請することは可能である(関連記事はこちら)
補助対象となるスタッフの範囲や、補助金の使途などの詳細を明らかに
また、補助の対象や補助金の使途などについては、次のような点が明確にされました。
▽補助金算定のベースとなる「介護従事者」(介護職員のみならず、広く介護従事者の賃上げを念頭に置いた補助金であるい)の対象は、「介護現場で働く幅広い職種」をさし、例えば次のような職種が考えられる
・介護職
・医師
・歯科医師
・薬剤師
・保健師
・看護師
・准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・機能訓練指導員(看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師等)
・精神保健福祉士
・介護支援専門員
・計画作成担当者
・社会福祉士
・生活相談員・支援相談員
・管理栄養士
・栄養士
・歯科衛生士
・調理員
・その他の事務職
など
▽地域包括支援センターについては、設置者が介護予防支援事業者として指定を受けている場合には補助金の対象となる。
▽補助対象経費には「研修費」も含まれるが、「研修に要する費用として切り分けられる」ものであれば対象経費として充当できる
・職場環境改善に資する研修であれば幅広に対象とすることができる
・基準上取り組むことが義務づけられているもので、かつ、職場環境改善とは趣旨が異なる研修に要する費用について、本補助金を充てることはできない
▽補助対象経費の使途の1つに「介護助手等の募集経費」とあるが、具体的には▼求人広告に係る費用▼求人チラシを印刷する費用—などのほか、「人材紹介会社の紹介手数料」も含めて考えることができる(ただし、すべて「介護助手等の募集に係る経費」に限る)
▽補助対象経費の1つである「職場環境改善経費」は、「介護助手等を募集するための経費」(上記)または「職場環境改善等のための様々な取り組みを実施するための研修費」に充当することを基本とするが、次の経費に充当することも可能
・補助金の要件としている「介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の課題の見える化」、「業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げまたは外部の研修会の活動等)」、「業務内容の明確化と職員間の適切な役割分担(介護助手の活用等)の取り組み」を実施するために要する費用のうち「介護テクノロジー等の機器購入費用ではない」もの(専門家の派遣費用、会議費等)
・その他の職場環境改善に要する費用全般に充当することは想定していない
▽職場環境改善経費は、通知で「介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費(介護テクノロジー等の機器購入費用)に充当することはできない」とされているが、介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費であるか否かに関わらず、「介護テクノロジー等の機器購入費用に充当する」ことはできない
▽職場環境改善経費として「PC端末等の購入にかかる経費」は対象経費に含まれない
ほか、次のような点も示されています。
▽本補助金を債権譲渡(例えば借金の返済等に補助金を充てるなど)することはできない(全額を賃金改善・職場環境改善に充当することとする補助金である)
▽補助金の申請は「介護サービス事業所等が所在する都道府県ごとに行う」必要があるが、「同一都道府県内に所在する介護サービス事業所等について、同一の計画書を用いて、法人単位で申請する」ことも可能
▽事業計画書の提出時点で休廃止することが明らかになっている介護サービス事業所等につい
・ただし、事業計画書の提出時点では見通せなかった事情等により介護サービス事業所等が休廃止することになった場合については、休廃止することが明らかになった時点で速やかに都道府県に届け出ることが必要
とする。
▽通知では「本年(2026年)4月以降に新規開設された介護サービス事業所等は対象外」とされているが、介護サービス事業所等の合併・別法人による事業の承継の場合において、「廃止前の介護サービス事業所等として補助金を申請し、新規に指定を受けた介護サービス事業所等において補助金を活用する」ことは、「当該介護サービス事業所等の職員に変更がないなど、介護サービス事業所等が実質的に継続して運営していると認められる場合には可能である
▽本補助事業に加え、重点支援地方交付金による中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備事業を活用することは、「同じ経費について、複数の補助金による補助を受ける」ことは認められないが、両方の活用(本事業による賃上げ等の金額への上乗せや、本事業の支援対象者や対象経費を広げる横出しとして交付金を活用するなど)も可能である
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