急性期入院医療の提供主体は「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」に集約されるのでは
2026.3.5.(木)
厚生労働省が3月5日、2026年度診療報酬に関する関係告示の公布を行いました。あわせて動画やパワーポイントスライドを用いた、分かりやすい解説も行われています。
2月13日の答申時点では明らかにされていなかった詳細な基準や要件の内容が示されていきます。Gem Medでは、順次、告示・通知内容をお伝えしていきます。
●厚労省の2026年度改定に関するサイトはこちら
今回は、新設された「急性期病院一般入院基本料」(急性期A・B)と「看護・多職種協働加算」について眺めてみます(関連記事はこちら)。
目次
点数は急性期A>多職種7対1の急性期B>急性期1=多職種7対1の急性期4と設定
【急性期病院一般入院基本料】(急性期A・B)は、これまでの「病棟の機能・診療実績」に加えて、「病院全体の機能・診療実績」も施設基準に加えた、まったく新しいタイプの入院基本料です。2026年度診療報酬改定では、ほかにもICUで「病院全体の機能・診療実績」を施設基準に加えるなどの対応が図られています。
これは、新たな地域医療構想の実現に向けて、これまでの「病棟・病床の機能分化・連携の強化」(病床機能報告)だけでなく、「病院の機能分化・連携の強化」(医療機関機能報告)が重視されている点も睨んだものと考えることができます。
「病院全体の機能・診療実績」が施設基準に加わることで、例えば「ケアミクス病院で、一部の病棟のみ急性期(例えば7対1)機能を持つ」ようなケースでは、新たな【急性期病院一般入院基本料】を取得することはできません。
【急性期病院一般入院基本料】を取得するためには、病院全体として「急性期機能」を果たしていることが求められるのです。
新地域医療構想では、新たな「医療機関機能」の1つとして「急性期拠点」機能病院を人口20-30万人に1か所程度指定することになり、この「急性期拠点機能病院」の有力候補として、新設される【急性期病院一般入院基本料】の取得病院があげられることになるでしょう。なお、現在の急性期充実体制加算と総合入院体制加算を統合した【急性期総合体制加算】も併せて取得する【急性期病院一般入院基本料】は、急性期拠点機能病院の「最」有力候補になります(関連記事はこちら)。
また、2026年度診療報酬改定では【看護・多職種協働加算】が創設され、「10対1病棟(急性期B、急性期4)で、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、臨床検査技師のいずれかを入棟患者25人に対し1名以上配置し、いわば多職種で7対1を実現する」病棟に上乗せの評価を行うことになりました(関連記事はこちらとこちら)。
この新たな【急性期A・B】・【看護・多職種協働加算】と、従前からの急性期1-6とを組み合わせて点数・主な施設基準を比較すると、点数の高いほうから次のような順になります。
▽急性期A:1930点
・7対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):指数1(A3点またはC1点+救急補正):27%、指数2(A2点またはC1点+救急補正):34%
・平均在院日数16日以内
・医師数が入院患者数の10%以上
・救急2000件以上かつ全身麻酔手術1200件以上
▽多職種7対1の急性期B(急性期B+看護・多職種協働加算2):1898点
・7対1(看護+他の医療職種)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):指数1(A3点またはC1点+救急補正):27%、指数2(A2点またはC1点+救急補正):34%
・平均在院日数16日以内
・救急1500件以上、または救急500件以上かつ全身麻酔手術500件以上など
▽急性期1:1874点
・7対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):指数1(A3点またはC1点+救急補正):27%、指数2(A2点またはC1点+救急補正):34%
・平均在院日数16日以内
・医師数が入院患者数の10%以上
・救急等の要件なし
▽多職種7対1の急性期4(急性期4+看護・多職種協働加算1):1874点
・7対1(看護+他の医療職種)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):指数1(A3点またはC1点+救急補正):27%、指数2(A2点またはC1点+救急補正):34%
・平均在院日数16日以内
・医師数が入院患者数の10%以上
・救急等の要件なし
▽急性期2:1779点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):27%(A2・B3、A3、C1)
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急等の要件なし
▽急性期3:1704点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):23%(A2・B3、A3、C1)
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急等の要件なし
▽急性期B:1643点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):指数1(A3点またはC1点+救急補正):27%、指数2(A2点またはC1点+救急補正):34%
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急1500件以上、または救急500件以上かつ全身麻酔手術500件以上など
▽急性期4:1597点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):19%(A2・B3、A3、C1)
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急等の要件なし
▽急性期5:1575点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):14%(A2・B3、A3、C1)
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急等の要件なし
▽急性期6:1523点
・10対1(看護のみで)
・看護必要度の基準値(必要度IIの場合):-(測定していること)
・平均在院日数21日以内
・医師数要件なし
・救急等の要件なし

急性期A・B、急性期1-6の点数・施設基準比較(2026年度診療報酬改定)

急性期入院医療の評価見直しの全体像(2026年度診療報酬改定)
これらを眺めると、「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」と、それ以外とで、大きく区分けがなされているように思えます。
ここから「いわゆる急性期入院医療の主な提供施設は、急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4に限定・集約されていくのではないか」と見る識者も少なくありません。
また2028年度以降の診療報酬改定では「急性期2-6について整理を行うのではないか」と指摘する識者もいます。
今後の「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」の取得状況などを注意深く見守る必要があります。
1病棟50床の場合、多職種7対1実現には「看護師24人+多職種10人」の配置が必要
なお、▼多職種7対1の急性期B▼多職種7対1の急性期4—は、「10対1看護」+「25対1他の医療職種」で実現することになりますが、厚労省は1病棟(患者50人と設定)につき次のようなスタッフ配置を行うことになると試算しています。
▽看護配置10対1のために、看護職員を24人配置する必要がある
(計算例)
→患者50人に対して、「常時」看護職員5人を配置する必要がある(10対1)
→365日×3交代勤務とすると、1095勤務帯/年間365÷7日=52.142(年52週)の勤務となる
→「週40時間勤務×年52週」-「休暇や祝日35日×8時間」とすると、年間労働時間が1800時間必要となる看護職員数は、1095勤務帯×8時間×5/1800時間=24.3人(薬24人)と計算できる
▽多職種25対1のために、医療職種を約10人配置する必要がある
→上記計算例に倣って計算可能
▽看護職員と他の医療職種を合計で「34人」配置する必要がある
他方、7対1看護を同様に実現するためには「看護職員を35人」配置する必要があります(上記計算例に倣って計算可能)

多職種7対1と看護7対1の人員配置イメージ(2026年度診療報酬改定)
各病院において「医療スタッフの確保」状況は異なりますが、こうした人数のスタッフを確保できること、さらに上記診療実績を満たせることが「急性期入院医療の提供主体」の条件になると考えられます。
地域で「どの病院が急性期Aを取得するか」等の話し合いを進める必要があるのでは?
ところで、個々の病院が点でバラバラに「自院は急性期Aを取得しよう」と考え、スタッフの確保、診療実績、つまり症例数の確保を、行ったのでは、競争が激化し「スタッフ、症例が分散してしまい、いずれの病院も十分な数のスタッフ、症例を確保できない」事態に陥りかねません。こうした事態は、病院にとっては「高い入院基本料を算定できず、経営が安定しない」ことにつながり、また「症例数の分散→医療の質の低下」というデメリットを日本国民が引き受けることにもつながります。
したがって、これまでの診療報酬改定のように「自院のみで入院基本料のなどの点数取得」を考えるのではなく、地域で「どの病院にスタッフ・症例を集約して急性期Aなどを取得するべきか」を十分に話し合い、関係者が納得したうえで決定することが重要といえます。
もちろん、その議論では「急性期Aなどを取得しない」病院への配慮が必要なことは述べるまでもありません。例えば「X病院を急性期Aとし、スタッフ・症例を集約する。しかし、病状が安定した後は、極めて速やかに他の医療機関に転院させる。このためA病院では病床回転率が高まるので、大幅なダウンサイジングを行う」ことなどを明確化することなどが強く求められるでしょう。
2026年度診療報酬改定は「地域での機能分化論議を強く推し進める」機能も持つと考えられます。
また、既にお伝えしていますが、新設される急性期A・Bの施設基準には次のような診療実績の基準が設定されています。
【急性期A】
▽急性期医療に係る実績として、「救急用の自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間2000件以上」かつ「全身麻酔による手術件数が年間1200件以上」である
▽介護保険施設に入所中の患者の救急搬送で「重症度・緊急性からみて当該施設の協力医療機関(在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟を持つ病院)での診療が可能と考えられる者」については、以下を除き救急搬送件数に参入しない
▼当該協力医療機関から受け入れ依頼があった場合
▼当該協力医療機関で受け入れが困難であった場合
▼受入後3日以内に当該協力医療機関に転院等した場合
【急性期B】
▽急性期医療に係る実績として、次のいずれかを満たす
▼救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間1500件以上
▼「救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間で500件以上」かつ「全身麻酔手術件数が年間500件以上」
▼人口20万人以下の地域に所在する医療機関であって、所属2次医療圏で「救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が最大」かつ「年間1000件以上」
▼離島に属する医療機関で、所属2次医療圏で「救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が最大」
・救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数のうち「夜間時間帯(22 時から翌朝8時まで)に受け入れた救急搬送件数」が1割以上ある
・人口20万人以下の地域に所在する医療機関、離島にある医療機関について、所属2次医療圏の再編統合が行われた場合には、当分の間、「所属2次医療圏で「救急用自動車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が最大」とみなす
▽介護保険施設に入所中の患者の救急搬送で「重症度・緊急性からみて当該施設の協力医療機関(在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟を持つ病院)での診療が可能と考えられる者」については、以下を除き救急搬送件数に参入しない
▼当該協力医療機関から受け入れ依頼があった場合
▼当該協力医療機関で受け入れが困難であった場合
▼受入後3日以内に当該協力医療機関に転院等した場合
なおGem Medではオンラインの改定セミナーで詳細な解説も行っています。是非、ご活用ください。
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