血液を検体として「低侵襲に、個々のがん患者に最適な抗がん剤を選択できる」環境を保険診療の中でさらに進める—厚労省
2026.3.4.(水)
血液を検体として「低侵襲に、個々のがん患者に最適な抗がん剤を選択できる」新たな遺伝子パネル検査が保険適用されることに伴い、D006-19【がんゲノムプロファイリング検査】とD006-27【悪性腫瘍遺伝子検査】(血液・血漿)の検査料(点数)算定ルールを一部見直す―。
厚生労働省は2月27日に通知「検査料の点数の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。3月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。
「個々のがん患者に最適な抗がん剤を選択できる」環境が、また1つ保険診療の中で整えられました。
がんゲノムプロファイリング検査、固形がんのHER2、乳がんのESR1も検査対象に追加
1月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、新たながん遺伝子パネル検査を3月1日から保険適用することが承認されました。
がん遺伝子パネル検査は、「個々の患者に最適な抗がん剤を選択する」ために、多くの遺伝子変異を一度に解析できる検査です。
新たに保険適用することが承認された「Guardant360 CDx がん遺伝子パネル」(ガーダントヘルスジャパン社)では、1つの検体(全血、つまりリキッドバイオプシー)を用いて次の遺伝子変異を検出し、以下の抗がん剤が有効か否かの鑑別を補助するものです。低侵襲で(血液が検体である)、新たな遺伝子変異検出も可能であり、「より最適な抗がん剤を選択できる」ことが期待されます。
●本検査に関する中医協資料はこちら(P3-7)
▽KRAS G12C変異(非小細胞肺がん):ソトラシブ(販売名:ルマケラス錠)
▽ERBB2(HER2)遺伝子変異(非小細胞肺がん):トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)(販売名:エンハーツ点滴静注用)
▽EGFR遺伝子エクソン20挿入変異(非小細胞肺がん):アミバンタマブ(遺伝子組換え)(販売名:ライブリバント点滴静注)
▽ESR1遺伝子変異(乳がん):イムルネストラントトシル酸塩(販売名:イムルリオ錠)▽BRAF V600E変異(結腸・直腸がん):エンコラフェニブ(販売名:ビラフトビカプセル)、ビニメチニブ(販売名:メクトビ錠)、セツキシマブ(遺伝子組換え)(販売名:アービタックス注射液)
▽KRAS/NRAS遺伝子野生型(結腸・直腸がん):セツキシマブ(遺伝子組換え)(販売名:アービタックス注射液)、パニツムマブ(遺伝子組換え)(販売名:ベクティビックス点滴静注)
▽ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)(結腸・直腸がん):トラスツズマブ(遺伝子組換え)(販売名:ハーセプチン注射用)、ペルツズマブ(遺伝子組換え)(パージェタ点滴静注)
▽同(固形がん):トラスツズマブ デルクステカ(遺伝子組換え)(販売名:(販売名:エンハーツ点滴静注用)
▽MSI-High(結腸・直腸がん):ニボルマブ(遺伝子組換え)(販売名:オプジーボ点滴静注)
▽同(固形がん):ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(販売名:キイトルーダ点滴静注)
これを受け、D006-19【がんゲノムプロファイリング検査】とD006-27【悪性腫瘍遺伝子検査】(血液・血漿)について見直しが行われます。
まずD006-19【がんゲノムプロファイリング検査】(4万4000点)は、下記の「がんゲノム医療」の流れの中の(a)と(b)を評価するものです((c)は別のB011-5【がんゲノムプロファイリング評価提供料】(1万2000点で評価)。
●がんゲノム医療の大まかな流れ
(a)患者の同意を得た上で、患者の遺伝子情報(遺伝子パネル検査の結果)や臨床情報を「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT、国立がん研究センターに設置)に送付する
↓
(b)C-CATで、送付されたデータを「がんゲノム情報のデータベース」(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験などの情報を整理する
↓
(c)がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院などの専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CATからの情報を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療を提供する

がんゲノム医療の流れと、C-CATの役割(がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議4 210305)
本検査では「抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とした検査を実施した際に算定可能」であり、検査対象が限定されています。今般、上記の新検査法の保険適用により、対象となる抗悪性腫瘍剤(固形がんにおけるHER2遺伝子検査、乳がんにおけるESR1遺伝子検査)が追加されました。
ア 肺がんにおけるEGFR遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査、ALK融合遺伝子検査、RAS遺伝子検査、HER2遺伝子検査
イ 大腸がんにおけるRAS遺伝子検査、HER2遺伝子検査、BRAF遺伝子検査
ウ 乳がんにおけるHER2遺伝子検査
エ 固形がんにおけるマイクロサテライト不安定性検査
オ 肺がんにおけるMETex14遺伝子検査
カ 悪性黒色腫におけるBRAF遺伝子検査
キ 固形がんにおけるNTRK融合遺伝子検査、腫瘍遺伝子変異量検査、RET融合遺伝子検査
ク 胆道がんにおけるFGFR2融合遺伝子検査
ケ 卵巣がんまたは前立腺がんにおけるBRCA1遺伝子およびBRCA2遺伝子検査
コ 乳がんにおけるAKT1遺伝子変異検査、PIK3CA遺伝子変異検査、PTEN遺伝子変異検査
(新)サ 固形がんにおけるHER2遺伝子検査
(新)シ 乳がんにおけるESR1遺伝子検査
なお2026年度診療報酬改定で、本検査(がんゲノムプロファイリング検査)は「1 固形腫瘍を対象とする場合:4万4000点」と「2 造血器腫瘍または類縁疾患を対象とする場合:4万4000点」とに区分され、「1 固形腫瘍を対象とする場合」では、一定の要件に合致するケースで「最適な抗がん剤を選択するための、院内の専門家会議(エキスパートパネル)の開催を省略する」ことが可能となります。がんゲノム医療が進展・普及し「専門家会議(エキスパートパネル)の負担が重くなっている」(対象症例が増加している)ことから、「難しい症例」に専門家会議(エキスパートパネル)を集中し、患者が「より早期に最適な抗がん剤治療を受けられる」環境を整備する狙いがあります(関連記事はこちらとこちら)。
より広範にがんゲノム医療が実施され「最適な抗がん剤により早期にたどり着く」環境が整っていくことに期待が集まります。
悪性腫瘍遺伝子検査、HER2(大腸・肺以外の固形がん)、ESR1(乳がん)を追加
D006-27【悪性腫瘍遺伝子検査】(血液・血漿)については、新たに▼HER2遺伝子検査(大腸がんおよび肺がん以外の固形がんに係るもの)▼ESR1遺伝子検査(乳がんに係るもの)—の2項目に関する点数算定ルールが、それぞれ次のように創設されました。
●HER2遺伝子検査(大腸がんおよび肺がん以外の固形がんに係るもの)
▽検体
→大腸がんおよび肺がん以外の固形がん患者の血液
▽目的
→抗悪性腫瘍剤による治療法の選択
▽検査手法
→次世代シーケンシング
▽算定点数・算定回数
→患者1人につき1回に限り、「2500点」(D006-27【悪性腫瘍遺伝子検査】(血液・血漿)の「7 HER2遺伝子検査(大腸癌に係るもの)」の所定点数を準用)を算定する
●ESR1遺伝子検査(乳がんに係るもの)
▽検体
→乳がん患者の血液の血液
▽目的
→抗悪性腫瘍剤による治療法の選択
▽検査手法
→次世代シーケンシング
▽算定点数・算定回数
→患者1人につき1回に限り、「2500点」(D006-27【悪性腫瘍遺伝子検査】(血液・血漿)の「7 HER2遺伝子検査(大腸癌に係るもの)」の所定点数を準用)を算定する
血液が検体となるため、「低侵襲に、個々の患者に最適な抗がん剤を選択できる」ことになり、がん患者・家族等にとって大きな朗報の1つと言えそうです。
なお、これらの見直しは2026年度診療報酬改定にも取り込まれます(点数の準用ではなく、個々の検査に点数が設定される、診療報酬点数表の新旧対照表はこちら)。
【関連記事】
【2026年度診療報酬改定答申12】がんゲノム医療、診療報酬要件も見直し「より迅速に最適な抗がん剤にアクセスできる」環境整える




