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希少がん「小腸腺がん」に対する「エンホルツマブ ベドチン」(販売名:パドセブ点滴静注用)の医師主導治験を開始—国がん他

2026.3.3.(火)

希少がん(人口100万人当たり2.2-0.6人に発症)であり、2次治療の確立していない「小腸腺がん」に対し、「エンホルツマブ ベドチン」(販売名:パドセブ点滴静注用)の有効性・安全性を評価する医師主導治験を開始する—。

国立がん研究センター・大阪国際がんセンター・九州大学病院が3月2日に、こうした研究方針を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

希少がんで2次治療の確立していない「小腸腺がん」の有効治療法開発を進める

希少がんは、患者数が少ないため「標準治療が十分に確立されていない(確立が困難)」「新しい薬剤治療を受けられる機会が限られる」といった問題があります。

希少がんの1つに「小腸腺がん」があります(全悪性腫瘍のうちの0.5%以下、全消化管悪性腫瘍のうちでも3%以下を占める極めて稀ながん。欧米からの報告では年間発症率は人口10万人あたり0.22-0.57人で、一般的ながんに比べて患者数が極めて少ない)。小腸腺がんは、およそ45%が十二指腸、35%が空腸、20%が回腸に生じます。

初期には症状が現れにくく、また通常の内視鏡検査では観察しにくいため、「診断される時には既に進行している」ケースがままあり、腸閉塞や腸管穿孔などの合併症を契機に発見されるケースも少なくありません。また、進行例では手術困難例も多く、たとえ手術ができたとしても術後の再発リスクが高いことが知られています。

現在、「術後再発」または「外科的切除が困難な進行期」の小腸腺がんに対する唯一の薬物療法は「FOLFOX療法」(▼フルオロウラシル(5-FU注250mg、同1000mg、後発品あり)▼レボホリナートカルシウム(アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg、後発品多数)▼オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg、後発品多数)―3剤を併用する化学療法)です。

FOLFOXは、大腸がんと胃がんでも用いられる化学療法で、小腸腺がんでも一定の有効性が報告されていますが、効果持続期間の中央値は「およそ6か月」にとどまっています。

また、1次治療としのFOLFOXが「無効、または副作用などで継続困難」となった後に使用できる既承認の抗がん剤は存在せず、「2次治療以降の選択肢が乏しい」ことが小腸腺がん治療における大きな課題となっています。

そうした中で、国がん中央病院消化管内科を中心とした研究チームでは、新たな治療選択肢として「ADC」(抗体薬物複合体:Antibody-Drug Conjugate)に着目しました。

「ADC」は、がん細胞の表面にある特定の目印(腫瘍抗原)に結合するモノクローナル抗体に、強力な抗がん剤(ペイロード)を結合させた薬剤です。腫瘍抗原に結合した後に細胞内へ取り込まれて薬剤が放出され、がん細胞を直接攻撃します(いわばがん細胞のみを狙い撃ちする)。腫瘍抗原のない正常細胞への抗がん剤曝露が相対的に低くなるため、従来の抗がん剤と比べて「正常組織への影響を抑えつつ、高い有効性」が期待されます。

研究チームは、小腸腺がんにおいては「腫瘍抗原の1つであるNectin-4」が約82%と高頻度で発現していることを確認。

このNectin-4を標的とするADCの1つに「エンホルツマブ ベドチン」(販売名:パドセブ点滴静注用20mg、同点滴静注用30mg)があります。

本剤は、本邦では「根治切除不能な尿路上皮がん」に対する効能・効果が認められていますが、「小腸腺がんにおけるNectin-4発現の頻度は、尿路上皮がんでの発現率と同程度であり、本剤が小腸腺がんにも効果を示す可能性がある」と研究チームは考え、今般、医師主導治験を立ち上げることになったものです。

【本治験の目的】
▽「エンホルツマブ ベドチン」(販売名:パドセブ点滴静注用20mg、同点滴静注用30mg)の小腸腺がんに対する有効性および安全性を評価する

【投与方法】
▽「エンホルツマブ ベドチン」を点滴で体内に投与する(静脈注射)
→28日を1コース(週1回の投与を3週間続けた後、4週目は休薬)とし、本剤が「効かない」「副作用等が現れ投与が継続できない」状態まで投与を続ける

【対象患者】(本治験への主な参加規準)
・試験参加について、患者さん本人から文書による同意が得られる
・治験への登録時の年齢が18歳以上
・「手術により切除ができない」または「小腸周辺以外に広がっている」小腸腺がんと診断されている
・▼FOLFOX 療法(フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン)▼CapeOX 療法(カペシタビン+オキサリプラチン)—のいずれかの抗がん剤治療を受け、効果がなくなった、または副作用で中止になった
・遺伝子パネル検査などの結果によって「推奨されている分子標的治療薬や免疫療法薬」が無効、あるいは副作用で継続できない、あるいは合併症などで実施困難
・各臓器機能が規定内に保たれている
(上記以外にも規準があり、上記規準に該当しても医師主導治験に参加できないケースがある)

【参加者の目標人数】
▽合計27名目

【医師主導治験実施医療機関】
・国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)
・大阪国際がんセンター(大阪府大阪市)
・九州大学病院(福岡県福岡市)



本治験で「エンホルツマブ ベドチン」の小腸腺がんに対する有効性が示された場合、小腸腺がんの全く新しい治療の選択肢となることが期待され、研究チームでは「進行性または転移性の小腸腺がんに対する治療薬として薬事承認」(その後、保険適用)を目指します。

諸外国でも「小腸腺がんの2次治療」は確立されておらず、本医師主導治験の成果が海外の診療指針に反映される可能性もあり、研究チームでは「将来的には国際共同研究グループとの連携を視野に入れ、さらなる治療法の開発を目指す」考えです。

今後も、優れた「がん治療法」の研究・開発が進むことに期待が集まります。



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