薬剤服用歴の確認・薬剤の専門知識を活かして「併用禁忌」に気づき、適切な処方内容に変更できた好事例—医療機能評価機構
2026.3.4.(水)
処方医が「患者が服用している薬剤」を把握せずに【併用禁忌】の別薬剤を処方したが、薬剤師が患者の薬剤服用歴を確認するとともに、専門知識を活かし、「適切な薬剤」に処方変更することができた―。
日本医療機能評価機構が2月25日に公表した薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
「袋を開封した後に残った端数の薬剤」の取り扱い、薬局内で管理法を明確化せよ」
日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表によって「再発防止」を目指すものです。
再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに2つの事例が紹介されました。
1つ目は、計数間違い事例です。
ある患者に、気管支喘息治療薬の「モンテルカスト細粒4mg『タカタ』が90日分処方されました。本剤は「1袋7包入り」であるため、薬局で「12袋と端数の6包」を取り揃えました。しかし、その後の鑑査で12袋のうち1袋について「開封されていて5包しか入っていない」ことが分かりました(2包不足)。
事例の背景には、「当該患者の前に、別の患者にもモンテルカスト細粒4mgが処方され、調製者が7包入りの袋を開封して薬剤を取り揃えた後、残った端数を開封した袋に戻していた」こと、「当該患者への調剤の際、取り揃えた薬剤の袋の開封状態を確認しなかった」こと、さらに「当該薬局で、袋を開封した後の端数の取り扱いに関する統一ルールがなかった」ことがあげられています。
機構では、▼本剤のように「7包ずつ袋に入っている薬剤」は、袋を開封して調製した際に「端数を袋に戻して保管する」と未開封品と見分けにくくなり、計数間違いを引き起こす恐れがある▼袋を開封した後に残った端数は、「袋に戻さず輪ゴムで留める」、「別容器に入れる」など未開封品と区別して管理することを手順書に定め、遵守する必要がある▼複数の分包品が袋に入った薬剤の鑑査を行う際は、開封済みの袋が混在していないかを1袋 ずつ確認することが重要である―とアドヴァイスしています。
2つ目は、併用禁忌の薬剤が処方されていることに薬剤師が気付き、適切な処方内容に変更できた好事例です。
ある患者に、心療内科から不眠症治療薬の「クービビック錠25mg」1回1錠・1日1回・就寝前10日分が処方されました。薬剤師が患者の薬剤服用歴を確認したところ、「非結核性抗酸菌症の治療のために呼吸器内科の医師から抗菌剤の『クラリスロマイシン錠200mg』が処方され、継続して服用している」ことを確認しました。クービビック錠とクラリスロマイシン錠は【併用禁忌】であるため、薬剤師が心療内科の処方医に疑義照会。その結果、クービビック錠25mgは、同じ不眠症治療薬の「ルネスタ錠2mg」へと変更になりました。
事例の背景には、心療内科の医師が「患者がクラリスロマイシン錠を服用している」ことを把握していなかったことがあるようです。
機構では、▼クービビック錠、ベルソムラ錠、デエビゴ錠、ボルズィ錠はオレキシン受容体拮抗作用を有する不眠症治療薬で、いずれも主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝される。これらの薬剤が処方された際は患者が「CYP3Aを阻害する薬剤」(クラリスロマイシンもその1つ)を服用していないか確認する必要がある(クービビック錠、ベルソムラ錠、ボルズィ錠は、クラリスロマイシンなどのCYP3Aを強く阻害する薬剤との併用は禁忌、デエビゴ錠は併用禁忌ではないが、これらの薬剤との併用に関する注意として患者の状態を慎重に観察したうえで投与の可否を判断し、併用する場合は1日量を減量する)▼薬剤師は適切な処方監査を行うために、薬剤を新たに採用した際に「同効薬との相違点や特性」などを把握することが重要である―とアドヴァイスしています。
薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つことが重要です(関連記事はこちら)。
あわせて、2022年7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。
とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
こうした考え方も踏まえて、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経営的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。
「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。
さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身に話を聞いてくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。
なお、厚労省は2024年7月22日に▼「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」の改訂▼「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」の策定—を行っています。病院、クリニック、薬局が連携して「地域ごとに、関係者が面でポリファーマシー対策を進める」ことの重要性を強調しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。
なお、2026年度診療報酬改定でも「ポリファーマシー対策」の下支えが行われます(関連記事はこちら)。
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