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どの医療機関を受診しても、かかりつけ薬局で調剤する体制を整備―厚労省「患者のための薬局ビジョン」

2015.10.27.(火)

 今後、患者がどの医療機関を受診しても、身近な薬局(かかりつけ薬局)で処方薬を調剤してもらうような体制を組んでいくべきではないか―。こういった提言「患者のための薬局ビジョン」を厚生労働省が23日にまとめました。

厚労省は「かかりつけ薬局」の整備を進めることとしており、地域包括ケアの一翼を担ってほしいと期待している

厚労省は「かかりつけ薬局」の整備を進めることとしており、地域包括ケアの一翼を担ってほしいと期待している

 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、調剤報酬に対する風当たりが厳しくなる中で、このビジョンに基づいて薬局がどのように動いていくのか注目されます。

門前薬局の乱立や、患者負担増という課題解決が急務

 厚労省はこれまで医薬分業を進めてきました。分業には、▽患者に必要な医薬品を医師・歯科医師が自由に処方できる(医療機関が医薬品を備蓄する必要がない)▽処方せんから、患者が医薬品情報を知ることができる▽薬局が薬歴管理を行うことで、重複投薬、相互作用を防止でき、薬物療法の有効性・安全性が向上する▽病院薬剤師の外来調剤業務を軽減できる▽薬価差益を解消できる―といったメリットがあると説明されています。

 しかし、現状を見ると▽いわゆる門前薬局の乱立▽患者の負担増(院内処方のほうが安い)―といった課題があります。このため、政府の規制改革会議などは▽かかりつけ薬局の要件明示▽調剤報酬の抜本的な見直し―などを行うよう政府に指示を行っています(関連記事はこちら)。

 厚労省は、このうち前者の「かかりつけ薬局」について提言の中で考え方を整理しました。

かかりつけ薬局に必要な3つの機能

 かかりつけ薬局は次の3つの機能を持つべきと提言されています。

(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導

(2)24時間対応・在宅対応

(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化

 (1)の服薬情報管理・薬学的管理では、主に「副作用や効果の継続的な確認」を行うことと、「多剤・重複投薬や相互作用の防止」が期待されています。後者には「薬剤費の適正化」という視点も含まれている点が注目できます。

 またこうした管理を行うために、電子版お薬手帳などのICTを活用し、患者がかかる「すべての医療機関の処方情報」を把握することが求められます。さらに、処方薬だけでなく、薬局・薬店で販売されている一般用医薬品なども含めた服薬情報の管理と、それに基づく薬学的管理の必要性にも言及されています。

 (3)の連携を進めるために、提言では▽疑義照会・処方提案▽副作用・服薬状況のフィードバック▽医療情報連携ネットワークでの情報共有▽医薬品などに関する相談や検討相談への対応▽医療機関への受診勧奨―といった具体的な取り組みを例示しています。

かかりつけ薬局には、(1)服薬情報の一元的・継続的管理(2)24時間対応・在宅対応(3)医療機関などとの連携―という3つの機能が求められる

かかりつけ薬局には、(1)服薬情報の一元的・継続的管理(2)24時間対応・在宅対応(3)医療機関などとの連携―という3つの機能が求められる

薬局が充実・強化すべき2つの機能

 さらに、患者のニーズに対応するために、次の2つの機能を充実・強化することを求めています。

▽健康サポート機能

▽高度薬学管理機能

 前者の「健康サポート機能」は、日本再興戦略(成長戦略)で「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」と謳われたことを踏まえたものと言えます。

 具体的には、▽関係機関との連携体制を整備する▽相談対応や関係機関への紹介などに関する研修を修了し一定の実務経験を有する薬剤師の常駐▽平日のほか土日のいずれかにも一定時間の開局▽要指導医薬品・衛生材料・介護用品などについて利用者自らが適切に選択できるような供給機能や助言の体制整備▽プライバシーに配慮した相談窓口の設置―などといった要件を満たすよう提案しています。

薬局には、医療機関や看護施設などと連携し、患者の健康を総合的にサポートする機能も期待されている

薬局には、医療機関や看護施設などと連携し、患者の健康を総合的にサポートする機能も期待されている

 後者の「高度薬学管理機能」は、がん、HIV、難病の患者に対し、専門的な薬物療法を提供可能な体制を備える必要がある薬局で備えるべき機能です。

 具体的には、▽学会などが提供する専門薬剤師の認定を受けた、高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤を配置する▽専門医療機関との間で、新たな治療薬や個別症例などに関する勉強会・研修会を継続的に共催する―ことなどが要件と考えられます。

がん患者やHIV患者に対応するために、高度かつ専門的な知識・技術を持つ薬剤師の配置が求められるケースもある

がん患者やHIV患者に対応するために、高度かつ専門的な知識・技術を持つ薬剤師の配置が求められるケースもある

2025年までに、すべての薬局を「かかりつけ薬局」に

 さらに提言では、薬局再編に向けたロードマップも示しています。

 まず、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて、「すべての薬局を『かかりつけ薬局』とする」ことを打ち出しました。

 また薬剤師も2025年までのなるべく早い時期に、従来の「対物(医薬品)」業務から、▽処方内容のチェック▽多剤・重複投薬や飲み合わせの確認▽医師への疑義照会▽丁寧な服薬指導▽在宅対応も通じた継続的な服薬状況・副作用のなどのモニタリング▽医師へのフィードバックや処方提案―といった患者中心の業務へのシフトを行うべきと訴えています。

 次に、2035年にかけて、現在の「大病院に隣接した薬局」の地域移行を促し、おおむね30分以内に必要なサービスが提供できる「日常生活圏域」において、かかりつけ薬局が地域包括ケアの一翼を担えるような体制とすることを求めています。

2025年までにすべての薬局を「かかりつけ薬局」とし、2035年に向けては「大病院に隣接する薬局の地域への移転」を済ませたい考え

2025年までにすべての薬局を「かかりつけ薬局」とし、2035年に向けては「大病院に隣接する薬局の地域への移転」を済ませたい考え

 もっとも、こうした構想を「絵に描いた餅」に終わらせては意味がありません。提言では、構想の実現に向けて指標(KPI)を設定し、毎年モニタリングしていくことを宣言しています。

 具体的な指標としては、▽かかりつけ薬剤師・薬局の数▽疑義照会の実施率・件数(処方変更にまで結びつけたかなど、照会内容も分析する)▽24時間対応、在宅対応の実施率・件数▽残薬解消の実施率・件数▽後発医薬品の使用割合への影響―を例示しました。

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