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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

薬剤師が、医師の誤処方(薬剤名誤入力、禁忌薬処方)に気づき、適正な処方に結び付けた好事例―医療機能評価機構

2021.2.12.(金)

薬剤師が、医師の「薬剤名誤入力」や「禁忌薬の処方」に気づき、処方変更を行うことで、医療事故発生を防止できた―。

薬剤師が一般用薬販売においても、重要な役割を果たし「医療機関の受診勧奨」を行った―。

日本医療機能評価機構が2月10日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤師は、一般用医薬品の販売等においても重要な役割を果たすべき

日本医療機能評価機構は、薬局における医療安全を確保するため、全国の保険薬局(調剤薬局)を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を展開しています。その一環として、事例の中で医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として整理・公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちら)。2月10日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、薬剤師が患者の症状と処方薬との不一致に気づき、適切な処方内容への変更が行われた好事例です。

ある患者に初めて、2型糖尿病治療薬の「ルセフィ錠2.5mg」が処方されました。しかし患者は「花粉症であり、鼻水の症状で受診」していました。処方薬と患者の症状が一致しなかったため、薬剤師が疑義照会を行った結果、アレルギー性鼻炎等の治療薬である「ルパフィン錠10mg」へ変更となりました。

薬剤名が類似しているために「誤入力」となったもので、製薬メーカーからも「取り違え注意」の情報提供がなされています。電子カルテ等で「処方薬の一覧」が出た際に、類似名の医薬品(隣り合って表示される医薬品)を誤って選択するケースも少なくありません。

ルセフィ錠は「ハイリスク薬」であり、誤使用は重大な健康被害につながりかねず、患者の症状と処方薬との関係をきちんと把握し、疑義紹介を行った薬剤師の取り組みは高く評価されるものです。

機構では、患者の▼薬剤服用歴▼現病歴・既往歴▼その他必要に応じて 聴取した情報―などをもとに、処方の妥当性を検討することが重要であるとアドヴァイスしています。



2つ目は、禁忌薬が処方されたところ、薬剤師がこれを防いだ好事例です。

妊娠9か月の患者に、腰痛症等の鎮痛・消炎に用いる「モーラステープ20mg」が処方された。同罪の添付文書には「妊娠後期の女性には禁忌」であることが記載されているため、薬剤師が疑義照会を行い、「ロキソニンテープ50mg」に処方変更となりました。

「モーラステープ」には、鎮痛作用のあるケトプロフェンが配合されていますが、「ケトプロフェンの外皮用剤を妊娠後期の女性に使用した場合、胎児動脈管収縮が起きることがあり、妊娠後期の女性には本剤を使用しないこと」と添付文書に明記されています。薬剤師がこうした情報を十分に把握した好事例と言えます。

なお、薬剤の中には「妊娠3か月以内」「妊娠後期」「出産予定日12週以内」などの妊娠時期が記載されているものあり、これらの薬剤を調剤する際は「患者から妊娠週数を聴取する必要がある」旨をアドヴァイスしています。



3つ目は、薬剤師が一般用医薬品の使用上の注意を的確に把握するとともに、販売記録としてらして「販売停止、医療機関の受診勧奨」に結び付けた好事例です。

薬局において、一般医薬品のメンソレータムフレディCC膣錠(膣カンジダ再発治療薬)をを販売する際、「以前にも同じ来局者に同薬を販売していた」ことに薬剤師が気づきました。購入頻度を確認したところ、「頻回」であること、「前回の販売から6か月経過していない」ことから、販売を中止し、「医療機関を受診し、相談する」よう勧奨しています(本剤の添付文書に「膣カンジダの再発を繰り返している人」(2か月以内に1回・6か月以内に2回以上)は使用してはならない、旨が明記されている)。

要指導医薬品・第一類医薬品(本剤は第一類医薬品)については、販売記録を作成する必要があります。本事例は、この販売記録を薬剤師がきちんと確認し、適切な対応(販売停止、医療機関の受診勧奨)に結び付けた好事例です。一般用医薬品の販売においても「かかりつけ薬剤師、薬局」の役割が非常に重要なことを再確認できます。



2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちら

こうした考え方を先取りし、2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定で充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の3事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、経営の安定化に何よりの効果があると考えられます。



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