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薬剤師が添付文書を確認し「不適切な薬剤」「併用禁忌の薬剤」処方を阻止した好事例―医療機能評価機構

2020.11.13.(金)

薬剤師が添付文書を確認することで、「不適切な薬剤への変更」「併用禁忌の処方」を避けることができた—。

日本医療機能評価機構が11月11日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要事例が報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

添付文書に「併用禁忌が示されていない」ケースもある点に留意を

日本医療機能評価機構は、医療安全確保に向け、全国の保険薬局(調剤薬局)を対象に「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を展開しています。その一環として、事例の中で医療安全確保のためにとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として整理し、公表しています(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)。11月11日には、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は、患者へ薬剤の仕様変更情報の説明が不足した事例です。

ある薬局において、2型糖尿病治療薬の「ビクトーザ皮下注18mg」(成分名:リラグルチド(遺伝子組換え))・1日1回0.9㎎が継続処方されている患者に、今回、初めてダイアル変更品(1.8㎎対応品)を交付しましたが、薬剤師からは特段の説明がなされませんでした。患者はビクトーザペンのダイアルを「最大限」に回して注射する習慣があったため、ダイアル変更品でも同様に扱い、誤って1回1.8㎎を注射してしまいました。

「ビクトーザ皮下注18㎎」については2019年に最高投与量が、従前の「0.9㎎」から「1.8㎎」に変更となり、それに伴ってビクトーザペンのダイアル表示が変更となりました。この点を患者に説明すべきところ、薬剤師が失念したものです。こうした事例はほかにも報告されており、機構では▼注射薬や外用薬の仕様変更の際には、薬局内で情報を共有し、交付時に変更点を患者に説明する▼患者の理解を深めるために、口頭説明だけでなく、「製薬企業が提供する患者向け資材」を利用する▼業務手順書に「薬剤の仕様変更に関する情報を薬局のスタッフで共有する」「変更品の入荷状況を把握し従来の薬剤と区別して保管する」「患者へ変更点について説明を行う」ことなどを明確に定め実行する―ことを強く求めています。



2つ目は、薬剤師が「使用上の注意」から処方内容に疑問を持ち、医師に疑義照会を行ったところ、処方変更になった好事例です。

これまで高血圧症治療薬の「レザルタス配合錠HD」(成分名:オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン)が処方されてきた患者について、同じく高血圧症治療薬の「ミカトリオ配合錠」(成分名:テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド)への変更が行われました。

薬局にはミカトリオ配合錠の在庫がなかったため、他の店舗から調達し、患者に薬剤を交付しました。交付後に薬剤師がミカトリオ配合錠の添付文書等を確認したところ、「配合されている3成分を8週間以上継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に本剤への切り替えを検討する」ことが分かりました。薬剤師が処方医に疑義照会を行った結果、薬剤が変更になり、患者に連絡を取って薬剤を交換することができました。

ミカトリオ配合錠は本邦初の「3剤を配合した高血圧症治療薬」です。画期的な薬剤ですが、過度な血圧低下の恐れがあることから、高血圧治療の第1選択薬とせず、「成分となっている薬剤の単剤併用投与で血圧コントロールを確認した上で、本剤に切り替える」旨の注意喚起がなされています(関連記事はこちらこちら)。今回、事後とはなるものの薬剤師がこの点を確認したことで、リスクのある薬剤服用を避けることができました。

機構では、▼配合剤を調剤する際は、配合されている成分を把握したうえで処方監査を行うことが基本である▼とりわけ、患者に初めて配合剤が処方された際は、患者の薬剤服用歴を確認し、処方の経緯や妥当性を検討する必要がある—ことをアドバイスしています。

なお、本事例では報告の中に「疑義照会後に変更になった薬剤」の記載がなく、機構では「薬物療法の有効性・安全性の向上のために情報を共有することが重要であり、事例の内容を把握するために必要な情報の記載をお願いしたい」と全国の薬局に呼びかけています。



3つ目は、薬剤師が「併用禁忌」に気付き、疑義照会の結果、「禁忌薬剤を削除」することができた好事例です。

ある患者が高血圧症等治療薬の「セララ錠25㎎」(成分名:エプレレノン)を継続服用していましたが、新たに高血圧症治療薬の「ミネブロ錠2.5㎎」(成分名:エサキセレノン)が処方されました。薬剤師は良材が「併用禁忌」(血清カリウム値上昇などの恐れあり)であることに気付き、処方医に疑義照会。結果、「セララ錠25㎎」が削除されています。

機構では、▼薬剤の作用機序を理解し、類似した作用機序を有する薬剤が併用されていないか確認を行う▼薬効や作用機序に基づいて処方薬をグループ分けし、整理することが有効である―とアドバイスしています。

なお、セララ錠の添付文書には「ミネブロ錠(エサキセレノン)が併用禁忌である」旨が記載されておらず、こちらサイドのみの確認では併用禁忌に気付けないという点にも留意が必要です(ミネブロ錠の添付文書には「セララ錠が併用禁忌である」旨が明記されている)。



2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬局・薬剤師が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべき」旨が強調されています。薬局・薬剤師のかかりつけ機能を強化し、「適正な薬学管理の実現」「重複投薬の是正」など医療の質を向上していくことが求められています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちら)。

こうした考え方を先取りし、2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、2020年度改定で充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)が図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、今回の事例(2つ目、3つ目の事例)のような薬剤師の取り組みが積み重ねられていけば、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まります。これが、いずれ報酬引き上げ論議等に結びついていきます。「薬剤の専門家」という立場をいかんなく発揮し、積極的な疑義照会・処方変更提案などがさらに進むことがさらに期待されます。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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