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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

薬剤師が多職種と連携し、薬剤の過少・過量投与を回避できた好事例―医療機能評価機構

2019.3.11.(月)

 患者の腎機能の低下に薬剤師が気付き、抗菌剤の過量投与を回避できた―。

 日本医療機能評価機構は2月26日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました。今回も、薬剤師からの積極的な疑義照会が、処方内容の変更に結びついた重要事例です(機構のサイトはこちら)。

薬剤師も多職種と連携し、患者情報を共有することが重要

 日本医療機能評価機構は、患者の健康被害などにつながる恐れのある「ヒヤリとした、ハッとした」事例(ヒヤリ・ハット事例)を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施しています。あわせて、収集事例の中から、医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として公表しています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。2月26日には3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。
 
 1つ目は、吸入薬の使用法を患者に十分に説明しなかったため、誤って過量な吸入をした可能性がある事例です。

 ある患者に、気管支喘息等の発作を抑えるステロイド剤と吸入機器がセットになった「レルベア200エリプタ14吸入用」が処方されました。本剤は、▼カバーを「カチッ」と音がするまで開ける → ▼息を吐く → ▼マウスピースを加え吸入する → ▼数秒息を止めたのち、ゆっくり呼吸し、口をすすぐ―という流れで使用します。

薬局では、本剤を交付する際、薬剤の入っていないエリプタトレーナーといういわば練習用の機器で「きちんと薬剤を吸入できるか」を確認します。トレーナーを使用して患者の吸入に問題がなければ、トレーナーから「プー」という音がし、これで「十分に吸入できている」と判断できるのです。当該患者でもこの確認が行われました。

しかし、実際の薬剤を用いた場合には、吸入しても「プー」という音はなりません。この点について薬局から十分な説明がなかったことから、患者は「実際の薬剤でも音がなる」と思い込み、吸入したものの音がならないために「再度の吸入」をしてしまった可能性が生じています。

 機構では、患者の混乱を避けるため「実際に使用する薬剤では音が鳴らない」旨を説明すること、また吸入薬にはさまざまなデバイスがあり、操作法なども異なることから、患者の視点に立った丁寧な指導が必要と指摘しています。なお、吸入薬の使用法については、製薬企業が「説明動画」なども準備しており、これらを活用した説明も期待されます。

  
 2つ目は、薬剤師が疑義照会をし、過少投与を回避できたケースです。

 ある70歳代の患者が、インフルエンザ治療薬の「ゾフルーザ錠20mg」を2錠処方されました。ゾフルーザ錠の添付文書によれば、通常は「成人に対し、20mg錠2錠等を単回経口投与する」こととなっています。

しかし、当該患者に体重を確認したところ80kg以上あることが分かりました。添付文書によれば「但し書き」として、「体重80kg以上の患者には、20mg錠剤4錠等を単回経口投与する」旨が記載されています。薬剤師が処方医にこうした旨を疑義照会し、「ゾフルーザ錠20mg4錠」に変更となりました。

 
 3つ目は、薬剤師の疑義照会により「過量投与」を回避できた事例です。

 蜂窩織炎が疑われる90歳代の患者に、抗菌剤の「クラビット錠500mg」が1日1回1錠(朝食後)・4日分が処方されました。

 しかし、添付文書によれば、「eGFR」値(腎機能を示す指標)が毎分20mL以上50mL以下の、腎機能が低下している患者では、同剤について「初日500mgを1回、2日目以降250mgを1日1回投与する」ことと定められています。ケアマネジャーから、当該患者の「eGFR」値が毎分45.4mLに低下しているとの情報を得たため、薬剤師が処方医に疑義照会。その結果、「初日はクラビット錠500mgを1日1回1錠、翌日からクラビット錠250mgを1日1回1錠に減量する」ことになりました。腎機能が低下した患者に通常量の薬剤を処方してしまう事例は数多く発生しており(関連記事はこちら)、薬局薬剤師はもちろん、病院の薬剤師においても十分な注意が必要です。

 
こうした事例を踏まえ、機構では「多職種連携をして、患者の情報を共有化する」ことの重要性を強調しています。

2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬局が(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言されています(関連記事はこちら)。

また2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)を新設する▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的に支える基盤が整備されてきています。

服用薬剤調整支援料の概要

服用薬剤調整支援料の概要

重複投薬・相互作用等防止管理料の見直し概要(上段)

重複投薬・相互作用等防止管理料の見直し概要(上段)

 
 これらの点数を算定するには、各種の要件・基準をクリアする必要があり、「疑義照会を行えば報酬が算定できる」わけではありませんが、こうした取り組みの積み重ねによって、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価が高まり、それが報酬の引き上げなどに結びつくと言えるでしょう。

 
 
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