胸腔ドレーン使用に当たり、手順・仕組みの教育徹底を―医療機能評価機構
2017.12.18.(月)
胸腔ドレーンバッグを使用する際、水封部へ滅菌蒸留水を入れなかったために胸腔に空気が逆流し、患者が呼吸苦に陥ってしまった―。
こうした事例が、2013年1月から2017年10月までに4件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
胸腔ドレーンバッグ水封部に滅菌蒸留水を入れずに接続し、空気が逆流する事例が発生
日本医療機能評価機構では、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめ、毎月「医療安全情報」として注意喚起を行っています(最近の安全情報はこちらとこちらとこちら)。12月15日に公表された「No.133」では「胸腔ドレーンの大気への開放」がテーマとなりました。
ある病院では、看護師が「胸腔ドレーンバッグの水封部に滅菌蒸留水を入れる」ことを知らず、医師と胸腔ドレーンバッグを交換する際に、その看護師がバッグをベッドサイドで開封し、そのままの状態で医師に手渡し、医師はドレーンをバッグにそのまま接続してしまいました。その後、別の看護師がバッグの水封部に滅菌蒸留水が入っていないことに気付きましたが、患者は頻呼吸でSpO2(動脈血酸素飽和度)は87%で、呼吸苦に陥ってしまいました。
また別の病院では、医師が胸腔ドレーンを挿入し、「水封(ウォーターシール)で管理する」旨を指示しました。しかし看護師は、滅菌蒸留水を胸腔ドレーンバッグの水封部ではなく、吸引圧制御部に入れてしまい、ドレーンをバッグに接続しました。幸い、すぐに別の看護師が誤りに気付き、大事には至りませんでした。
胸腔ドレーンは胸腔内にたまった空気や液体(気胸・胸水)を排出するためなどに行われます。ただし胸腔は腹腔と異なり陰圧であるため、単に排液チューブを挿入しただけでは外界から胸腔に空気が逆に流入してしまいます。そこでドレーンに陰圧をかけるために、バッグの水封部に滅菌蒸留水を入れておく必要があります。機構では、(1)胸腔ドレーンバッグ準備の「手順」を作成する(2)適切な胸腔ドレーンバッグ使用について教育する—よう呼びかけています。
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