2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
2016.6.29.(水)
日本医療機能評価機構が28日に発表した「医療事故情報収集等事業」の第45回報告書によりますと、2016年1-3月に報告された医療事故は865件、ヒヤリ・ハット事例は7565件に及びました(関連記事はこちらとこちら)。
医療事故のうち82件(9.5%)は患者が死亡しており、90件・10.4%は患者に障害が残る可能性が高いことも分かりました。
また、どこの医療機関でも発生しやすい「外観の類似した医薬品」に関連する事故について詳しく分析するとともに、実際の事例を紹介しているので、是非、参考にしてください。
医療事故の44.8%は当事者のミス、ただし13%超は「患者側」に要因も
この期間に報告があった医療事故865件を事故の程度別に見ると、「死亡」が82件(事故事例の9.5%)、「障害残存の可能性が高い」が90件(同10.4%)、「障害残存の可能性が低い」が230件(同26.6%)、「障害残存の可能性なし」が250件(同28.9%)などとなっています。
また医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」で348件(同40.2%)、次いで「治療・処置」230件(同26.6%)、「ドレーン・チューブ」68件(同7.9%)、「薬剤」38件(同4.4%)などと続いています。「ドレーン・チューブ」に起因する事故の増加が気になります。
一方、事故の発生要因(複数回答)に目を移すと、「患者側の要因」がもっとも多くなっており、事故全体の13.1%を占めています。次いで、「当事者の確認の怠り」11.2%、「当事者の判断の誤り」10.1%などと続きます。当事者側の起因する項目は全体の44.8%を占めており、業務手順の見直しや、複数チェックの徹底などを今一度行う必要がありそうです。
事故に関連した診療科としては、やはり整形外科が突出して多く155件、医療事故全体の14.3%を占めています。次いで、外科9.8%、精神科6.2%、内科6.0%、消化器科5.9%などと続きます。整形外科で生じた医療事故の概要では、「療養上の世話」に起因するものが107件と最多で、整形外科における事故の69.0%、医療事故全体の12.4%を占めています。
ヒヤリ・ハット事例、当事者の確認ミスが4分の1を占める
ヒヤリ・ハット事例については、2016年1-3月の報告件数は7565件ありました。そのうち3310件について影響度を見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が94.5%とほとんどを占めていますが、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」も4.0%、「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」も1.5%あり、十分な注意が必要です。
またヒヤリ・ハット事例7565件の概要を見ると、「薬剤」が最も多く2955件(ヒヤリ・ハット事例全体の39.1%)、次いで「療養上の世話」1453件(同19.2%)、「ドレーン・チューブ」1207件(同16.0%)などとなっています。「薬剤」に関連する事例が医療事故に比べて多い点は、変わっていません。
事故の発生要因(複数回答)としては、医療従事者・当事者の「確認の怠り」(23.8%)が飛び抜けて多く、以下「観察の怠り」8.9%、「繁忙だった」8.6%、「判断の誤り」7.7%などと続きます。医療事故に比べて「確認の怠り」の割合が高くなっていますが、大事故に直結するミスである点も考慮すると、やはり現場の業務フロー(複数チェックも含めて)を早急に見直す必要があります。
抗がん剤の血管外漏出事故が2010年1月以降68件発生
報告書では毎回テーマを絞り医療事故の再発防止に向けた分析も行っています。今回は、(1)腫瘍用薬に関連した事例(2)外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例(3)人工呼吸器の回路の接続外れに関連した事例―に的を絞って分析しています。
まず(1)の腫瘍用薬(抗がん剤など)に関連する医療事故は2010年1月-2016年3月の間に228件、報告されています。事例の内容を見ると、薬剤の血管外漏出・血管炎が最も多く68件であり、次いで腫瘍用薬投与中の状態の悪化(副作用など)53件、薬剤量間違い(過剰)34件と続いています。
また事故の程度は、死亡20件(腫瘍用薬に関連する事故の8.7%)、障害残存の可能性が高い26件(同20.2%)で医療事故全体と同程度ですが、濃厚な治療が必要な事例が105件と半数近くを占めている点には留意が必要です。
次に(2)の外観が類似した医薬品については、具体的なケースを示していますので、医療現場で同様の事故やヒヤリ・ハット事例が生じないような対策を取ることが必要です。
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