手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
2016.5.16.(月)
手術などの観血的医療行為を行うために、一時的に抗凝固剤・抗血小板剤の投与を中止していたが、その再開を忘れてしまい、患者に影響が出てしまった―。
このような事例が、2012年1月から16年2月までに4件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調査から明らかになりました。
機構では、▽術後指示に「再開日の記入欄」を追加する▽病棟薬剤師から医師への情報提供を行う―などの取り組みを行うよう提案しています。
病棟薬剤師と医師で「抗凝固剤などの服用」状況をダブルチェックすることが必要
日本医療機能評価機構は、重要な医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています。16日に公表された「No.114」では「抗凝固剤・抗血小板剤の再開忘れ」がテーマに取り上げられました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
ある病院では、医師が手術のために患者の抗凝固剤(ワーファリン錠)を中止。術後出血のリスクを考慮して、抗凝固剤の再開時期を遅らせる予定であったものの、そのまま再開を失念。術後17日目に、医師が患者に声をかけたところ反応がなく、頭部CT検査の結果、「脳梗塞」が認められたといいます【事例1】。
また別の病院では、手術に備えて1週間前から抗血小板剤(バイアスピリン錠)を中止。医師は、入院時指示に「手術翌日からバイアスピリン錠再開」と記載したものの、看護師がこれを見落としてしまったため、再開がなされなかった。術後9日目に、患者が傾眠傾向であり、頭部MRI検査の結果、多発性の脳梗塞が認められました【事例2】。
このように抗凝固剤・抗血小板剤の再開忘れは、患者に重篤な影響を与えることに繋がるため、早急に防止策を徹底する必要があります。機構では、次のような取り組みを行うことを提案しています。
(1)術後指示に「抗凝固剤・抗血小板剤の再開日」の記入欄を作成する(事例2では記載があったものの見落としている。記入欄を作成することで、見落としを減らすことが期待される)
(2)病棟薬剤師は、術後の抗凝固剤や抗血小板剤の内服状況について、医師に情報提供する((1)でも「見落とし」「記載漏れ」が生じる可能性は否めない。薬剤師と医師がダブルチェックを行うことが重要)
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