パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
2016.2.15.(月)
検査値がパニック値(緊急以上値)であったにもかかわらず、医師への緊急連絡がなされなかった―。このような事例が、2012年1月-2015年12月の間に3件報告されていたことが、日本医療機能評価機構の調査で明らかになりました。
これは機構が毎月発行している「医療安全情報」のNo.111で公表されたもので、院内で「検査値がパニック値であった場合の報告手順」を周知することや、主治医不在時の連絡・対応体制を構築することが重要です。
パニック値は、日本臨床検査医学会のガイドラインによれば「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示す異常値で直ちに治療を開始すれば救命しうるが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能である」と定義されています。
このため病院の人員や設備などによってパニック値は異なり、各病院で設定されています。また検査の結果、パニック値が示された場合には、迅速かつ確実に臨床医に伝達されなければいけません。
しかしある病院では、臨床検査技師が血糖のパニック値(800mg/dL)を確認したにもかかわらず、臨床医に連絡を失念していたことが分かりました。本来、パニック値として検査部から医師に報告すべきところ、昼休憩の時間帯で人が少なかったため、技師が連絡を忘れたといいます。後日、患者から「倦怠感がある」との電話があり、医師が検査結果を確認したところパニック値であったことが判明し、入院となりました。
また別の病院では、入院患者の血清カリウムがパニック値(6.4mEq/L)であることを臨床検査技師が確認し、病棟の看護師に報告しました。しかし主治医が不在で、病棟の看護師も不在時の連絡方法を知らなかったことから、パニック値が医師に伝達されなかったといいます。
このほか、「臨床検査技師が血糖のパニック値(892mg/dL)を確認し、内科外来に電話したが誰も出ず、会計も終了していたいので報告しなかった」という事例も報告されています。
冒頭述べたように、パニック値は「生命が危ぶまれるほど危険な状態」にあることを意味し、一刻も早い連絡・対応が必要です。機構では、院内で次のような対策を取ることを提案しています。
(1)検査値がパニック値であった場合の報告手順を院内に周知する
(2)検査部では、パニック値の連絡を行った際、▽検査結果▽連絡者▽連絡先医師名―を記録に残す
(3)主治医不在時の連絡・対応体制を構築し、周知する
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