薬剤名が表示されていない注射器による「薬剤の誤投与」事例が発生―医療機能評価機構
2016.11.25.(金)
患者に準備した注射器に薬剤名を表示しておらず、誤った薬剤を患者に投与してしまった―。
このような事例が、2013年1月から16年9月までに3件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。
機構では、▼注射器には必ず薬剤名を表示する▼投与直前に薬剤名を確認する―ことを徹底するよう呼びかけています。
注射器には薬剤名を必ず表示し、投与前に再確認の徹底を
日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。15日に公表された「No.120」では「薬剤名の表示がない注射器に入った薬剤の誤投与」がテーマに取り上げられました。
ある病院では、小児患者にMRI検査を行うため、医師が病棟で全身麻酔剤のチトゾールを注射器に小分けにして検査室に持参しました。院内のルールでは「注射器に薬剤名・患者氏名を明記する」ことになっていますが、それをしていませんでした。一方、診療放射線技師は、その注射器に他の技師が準備した造影剤が入っていると思い込み、医師へ手渡し、医師は「少し量が多いな」と思ったものの、確認せず患者に投与。投与直後に患者の呼吸数が低下し、間違いに気付いたといいます。
また別の病院では、看護師が、痰の排出を助けるビソルボン注の急速静注と、血栓塞栓症予防薬のヘパリンの持続静注を更新するために、(1)薬剤名のラベルを貼ったビソルボン注の注射器(2)ビソルボン注の投与前後に注入する生理食塩液20mLの注射器(3)ラベルのないヘパリン1万単位+生理食塩液(合計20mL)―の3本の注射器の入ったトレイをもって病室に向かいました。その看護師は(3)のラベルのない注射器に生理食塩液が入っていると思い込み、(1)のビソルボン注を投与する前後に全量投与してしまいました。後に別の看護師がトレイ内に(2)の生理食塩液が残っているのを発見し、誤ってヘパリン調製液を投与したことに気付いたといいます。
このほか、ガスター注射液(上部消化管出血の抑制)を意図して、誤ってフェンタニル注(麻酔用鎮痛剤)を投与してしまった事例も報告されています。
薬剤の誤投与や、重篤な健康被害、ひいては死亡事故に結びつく可能性も高く、再発防止に向けた取り組みを早急に実行する必要があります。
機構では、▼注射器には必ず薬剤名を表示する▼投与直前に薬剤名を確認する―ことを徹底するよう強調しています。
【関連記事】
シリンジポンプに入力した薬剤量や溶液量、薬剤投与開始直前に再確認を―医療機能評価機構
アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
転院患者に不適切な食事を提供する事例が発生、診療情報提供書などの確認不足で―医療機能評価機構
患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルは「仰臥位」などで抜去を、座位では空気塞栓症の危険―医療機能評価機構
胃管の気管支への誤挿入で死亡事故、X線検査や内容物吸引などの複数方法で確認を―日本医療機能評価機構
パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
患者と輸血製剤の認証システムの適切な使用などで、誤輸血の防止徹底を―医療機能評価機構
手術中のボスミン指示、濃度と用法の確認徹底を―日本医療機能評価機構