Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

骨太方針2024を閣議決定、医師偏在対策、地域医療構想の推進をはじめとする医療提供体制改革、医療DX推進などに尽力する方針明確化

2024.6.25.(火)

岸田文雄内閣が6月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2024—賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現—」(骨太方針2023)を閣議決定しました(内閣府のサイトはこちら(本文)こちら(総論・概要版)こちら(政策ファイル))。

医療・介護制度を中心に、ポイントを眺めてみます。医師偏在対策や地域医療構想などの「医療提供体制改革」、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を目指す「医療DX」に尽力していく方針が明示されており、今後の政府の検討論議に要注目です。

医師偏在対策を強力に推進、規制的手法も検討し2024年内に結論を出す

医療・介護制度改革に関しては「全世代型の社会保障改革」をさらに推進する考えをより明確に打ち出しています。不断の改革によりワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制(つまり現役世代の負担軽減)することが極めて重要である点を改めて強調したうえで、「全世代型社会保障の将来的な姿について、国民に分かりやすく情報提供する」考えを示しました。

まず、医療・介護提供体制改革に関しては、次のような広範な対応方針を提示しています。

▽少子高齢化に対応するため、限りある資源を有効に活用しながら、質の高い効率的な医療・介護サービスの提供体制を確保する

▽医療・介護DXの政府を挙げての強力な推進、ロボット・デジタル技術やICT・オンライン診療の活用、タスクシフト/シェア、医療の機能分化と連携など地域の実情に応じ、多様な政策を連携させる必要があり、▼国民目線に立ったかかりつけ医機能が発揮される制度整備▼地域医療連携推進法人等の活用▼急医療体制の確保、持続可能なドクターヘリ運航の推進▼居住地によらず安全に分娩できる周産期医療の確保▼都道府県のガバナンスの強化—を図る

▽地域医療構想について、2025年に向けて「国がアウトリーチの伴走支援」に取り組む
▼204 年頃を見据えて、地域医療構想の対象範囲について「かかりつけ医機能 や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体」に拡大する
▼病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る(関連記事はこちら

▽医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、▼医師確保計画の深化▼医師養成過程での地域枠の活用▼大学病院からの医師の派遣▼総合的な診療能力を有する医師の育成▼リカレント教育の実施等の必要な人材を確保するための取り組み▼経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大などの規制的手法を組み合わせた取り組みの実施—など「総合的な対策のパッケージ」を2024年末までに策定する(関連記事はこちらこちらこちら
▼2026年度の医学部定員の上限を「2024年度の医学部定員を超えない範囲で設定する」とともに、今後の医師需給状況を踏まえつつ2027年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに行う(関連記事はこちら

▽介護従事者不足が見込まれる中で、▼介護施設等と医療機関との連携強化▼介護サービス事業者のテクノロジー活用や協働化・大規模化▼医療機関を含め保有資産を含む財務情報や職種別給与情報などの経営状況の見える化を推進した上での処遇改善、業務負担軽減・職場環境改善—に取り組む
▼外国人介護人材を含めた人材確保対策を進めるとともに、地域軸、時間軸も踏まえつつ、中長期的な介護サービス提供体制を確保するビジョンの在り方を検討する

▽がん対策、循環器病対策、難聴対策、難病対策、移植医療対策、慢性腎臓病対策、アレルギー対策、依存症対策、栄養対策、睡眠対策、COPD対策等の推進を図る
▽ワクチン接種を始めとした肺炎等の感染症対策の推進を図る
▽更年期障害や骨粗鬆症等に対する女性の健康支援の総合対策の推進を図る
▽ICTや特定行為研修の活用等による訪問看護や看護師確保対策の促進、在宅サービスの多機能化等による在宅医療介護の推進に取り組む
▽自立支援・社会復帰に資するリハビリテーションを推進する

既に検討が進んでいる施策もあれば、これから検討に着手する施策も盛り込まれており、今後、医療・介護提供体制改革論議がさらに熱を帯びていきます。

現役世代の医療・介護保険料上昇を抑制するために、医療・介護保険改革を推進

医療保険・介護保険改革に関しては、次のような方針が示されました。少子高齢化が進む中では「少なくなる現役世代で、増加する高齢者を支える負担が大きくなる」ことが明白であり、いかに「現役世代の負担上昇を抑制するか」という視点で医療・介護保険制度改革論議が進められます。

▽給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、関連法案の提出も含め、 各種医療保険制度における総合的な検討を進める
▼「審査支払機関による医療費適正化の取り組み強化」「多剤重複投薬や重複検査等の適正化に向けた実効性ある仕組み」の整備を図る
▼国民健康保険制度について、都道府県内の保険料水準の統一を徹底するとともに、保険者機能の強化等を進めるための取り組みを進め、医療費適正化や都道府県のガバナンス強化等にも資するよう調整交付金や保険者努力支援制度その他の財政支援の在り方について検討を行う
▼国際比較可能な保健医療支出統計の整備を推進する

▽介護保険制度について、▼利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直し▼ケアマネジメントに関する給付の在り方▼軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方—に関し、第10期介護保険事業計画期間(2027-29年度)の開始の前までに検討を行い、結論を得る(関連記事はこちら
▼高齢者向け住宅の入居者に対する過剰な介護サービス提供(いわゆる囲い込み)問題や、医療・介護の人材確保に関し、就職・離職を繰り返す等の不適切な人材紹介に対する紹介手数料の負担の問題などについて、報酬体系の見直しや規制強化、公的な職業紹介の機能の強化の更なる検討を含め、実効性ある対策を講ずる(関連記事はこちらこちら
▼深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る。



さらに、予防・重症化予防・健康づくりに向けて、▼望まない受動喫煙対策の推進▼がん検診の受診率の向上—に向けた「第3期データヘルス計画」に基づく保険者と事業主の連携(コラボヘルス)の深化を図るとともに、▼政府の研究機能(AMED)の機能強化▼介護予防・重症化防止に向けた市町村の総合事業の充実▼エビデンスに基づく科学的介護の推進—などの方針を明示しています。



ところで、我が国においては「創薬力の低下などにより、画期的な医薬品へのアクセスが阻害されている」点などが問題視されています。そこで、「創薬力の強化」をはじめとするヘルスケアの推進に向けて、▼革新的医薬品候補のFIH試験(ヒトへの最初の投与試験)を実施できる国際競争力ある臨床試験体制の整備▼臨床研究中核病院の承認要件の見直し▼治験薬・バイオ医薬品の製造体制の整備、人材育成・確保などの研究開発環境の実現▼医療機関・企業による医療データ利活用推進のための個人情報保護法上の解釈の明確化▼創薬エコシステムの再編成▼大学病院等の研究開発力の向上に向けた環境整備やAMEDの研究開発支援を通じた研究基盤強化▼保険外併用療養費制度の在り方の検討▼ドラッグロス等への対応やプログラム医療機器の実用化促進に向けた薬事上の措置検討(2024年末までに結論)▼承認審査・相談体制の強化等▼費用対効果評価の更なる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含めた検討▼休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療の研究成果の診療ガイドラインへの反映▼医薬品供給不安解消▼バイオシミラーの使用等促進▼スイッチOTC化(医療用医薬品→一般用医薬品)の推進等によるセルフケア・セルフメディケーションの推進▼薬剤自己負担の見直し▼抗菌薬の国内流通量を確保策の検討(2024年度中に結論)▼新規抗菌薬開発に対する市場インセンティブ▼イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、 物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえた、2025年度薬価改定の在り方検討▼病院等の事務効率化に資する医薬品・医療機器等の製品データベースの構築等推進▼仮名加工医療情報を用いた研究開発推進のための次世代医療基盤法利活用推進—など、広範な検討・対応方針が示されました。

医療DXを推進し、効率的・効果的で質の高い医療提供を目指す方針を強調

このほか、▼医療・福祉分野等におけるきめ細かい賃上げ支援▼医療・介護の担い手を確保し、より質の高い効率的な医療・介護を提供する体制の構築▼医療データを活用し、医療のイノベーションを促進するため、必要な支援を行いつつ、政府を挙げての医療・介護DXお確実かつ着実な推進▼「医療DXの推進に関する工程表」に基づく、「全国医療情報プラットフォーム」の構築、電子カルテの導入、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHRの整備・普及医療・介護情報の2次利用推進▼医療・介護DXを推進し、医療の効果的・効率的な提供を進めるための必要な法整備▼医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の着実な実施▼電子処方箋の全国普及▼医療インバウンドを含む医療・介護の国際展開▼船舶活用医療、医療コンテナ活用、歯科巡回診療や被災地の災害医療システム活用等の推進による医療の継続性確保▼大学病院における教育・研究・診療機能の質の担保に向けた医師の働き方改革の推進—などにも言及しています。

医療DXの推進に政府が注力していく方針を再確認できます。

骨太方針2024では「医療・介護DX」推進に注力する方針を明確化している



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

【関連記事】

新たな地域医療構想は「2040年頃の医療提供体制ビジョン」、医療計画は「直近6年間の医療提供体制計画」との役割分担—新地域医療構想検討会
新たな地域医療構想、協議の旗振り役明確化、公民の垣根超えた議論、医療・介護全体見た改革推進が極めて重要—新地域医療構想検討会
医療・介護連携の強化が「医療提供体制改革、新地域医療構想」を考える上で必要な不可欠な要素—新地域医療構想検討会
2040年頃見据えた新地域医療構想、病院の主体的な動き(機能転換など)が必要な分野について「何が必要か」の深堀りを—新地域医療構想検討会
2040年頃見据えた新地域医療構想、在宅医療の強化、構想区域の見直し、「病院」機能明確化などですでに共通認識—新地域医療構想検討会
【ポスト地域医療構想】論議スタート、医療介護連携、構想区域の在り方、医療人材確保、必要病床数設定等が重要論点—新地域医療構想検討会

【ポスト地域医療構想】論議を近々に開始、入院だけでなく、外来・在宅・医療介護連携なども包含して検討—社保審・医療部会(1)

医師偏在対策の是正に向けた「診療報酬の単価見直し」、生活習慣病を評価する診療報酬の見直しなど進めよ—財政審
医師偏在是正に向け、診療報酬の1点単価10円」を、診療所過剰地域では「10-β円」に引き下げ、不足地域では「10+α円」引き上げよ―財務省

2025年度の医学部入試から、「医師多数県の臨時定員を2割削減」し、医師少数県の臨時定員等に配分していく—医師偏在対策等検討会(2)
医師偏在是正に有効な地域枠、「恒久定員への設置」や「特定診療科を指定した従事義務」をどう推進すべきか—医師偏在対策等検討会(1)
2026年度医学部定員、総数9403名の枠内で「医師少数県の定員を増やす場合は、多数県の定員削減で吸収」を—医師偏在対策等検討会
将来の医師供給過剰を考慮すれば「医学部入学定員の減員」が必要だが、医師少数地域では「増員」も認めるべきか?—医師偏在対策等検討会
将来の医師過剰を考慮し医学部入学定員「減」が必要だが、医師偏在対策もセットで検討しなければならない—医師偏在対策等検討会