人材紹介会社ルートで採用した医療従事者、高額な手数料にもかかわらず離職率が高い―福祉医療機構
2020.10.9.(金)
人材紹介会社ルートで採用した医療従事者の離職率は、通常ルートで採用したスタッフに比べて高くなっていると考えられる―。
福祉医療機構(WAM)・全日本病院協会・日本医療法人協会が10月5日に公表した「『病院の人材紹介手数料』に関するアンケート」調査結果から、こういった状況が明らかになりました(WAMのサイトはこちら)。
3団体では、▼適切なサービスを提供する人材紹介会社への評価▼人材紹介手数料の一定基準設定▼保証期間の延長―などの早急な検討が必要と訴えています。
人材紹介会社への手数料、平均では医師では352万円、看護師では76万円
多くの病院では、医療従事者確保のために人材紹介会社を活用していますが、「その費用が病院経営を圧迫している」と指摘されています。そうした中で福祉医療機構・全日病・医法協の三団体が共同し、328病院を対象にアンケート調査を実施。人材紹介会社の活用は、73.5%・241病院で行われています。
開設主体別、病床規模別に見ると人材紹介会社の活用状況には若干の差異があり、「医療法人・社会医療法人で、また100床台・300床台の病院で多く活用されている」状況が伺えます。また機能別に見ると、回復期・急性期の病院で多く活用されています。
人材紹介会社に支払う手数料(人材紹介報酬)を見ると、次のような状況が分かりました。
▽医師:平均351万7000円(最高:600万円-最低:100万円、上位25%:408万3000円-下位25%:271万5000円(つまり半数が408万3000円から271万5000円となっている)
▽薬剤師:平均115万3000円(同210万円-30万円、同150万円-80万5000円)
▽看護師:平均76万円(同124万円-30万円、同90万円-66万円)
▽准看護師:平均67万9000円(同113万円-11万円、同83万9000円-50万9000円)
▽看護補助者:平均43万3000円(同92万円-1万円、同66万円-9万円)
▽理学療法士:平均88万6000円(同150万円-40万円、同105万5000円-72万5000円)
▽診療放射線技師:平均78万2000円(同97万円-30万円、同92万5000円-54万5000円)
▽臨床検査技師:平均74万8000円(同110万円-50万円、同85万円-62万4000円)
▽管理栄養士:平均70万7000円(同95万円-43万円、同87万円-54万円)
▽医師事務作業補助者:平均51万1000円(同64万円-25万円、同63万円-32万6000円)
▽事務職員:平均70万8000円(同162万円-2万円、同90万5000円-31万円)
▽社会福祉士:平均69万7000円(同119万円-61万円、同93万5000円-62万円)
こうした人材紹介手数料が病院経営に与える影響として、「医業利益に対する手数料」を見てみると、概ね「0.4%弱」程度ですが、極めて高率となる(2%超)ケースも一部にあることが分かります。一般病院の医業利益率は2018年度ベースで平均1.8%と低く、「0.4%弱」を占める紹介手数料が病院経営を圧迫していることが分かります。
人材紹介会社ルートで採用した医療従事者の離職率は高い
このように高額な人材紹介報酬を支払って確保した人材ですが、離職も少なくないようです。職種別に「1年以内の離職率」を見ると、▼医師:15.8%▼薬剤師:19.1%▼看護師:20.3%▼准看護師:41.5%▼看護補助者:33.5%▼理学療法士:8.0%▼診療放射線技師:10.0%▼臨床検査技師:11.5%▼管理栄養士:20.0%▼医師事務作業補助者:18.2%▼事務職員:23.5%―などとなっています。また、いずれに職種についても時間が経つと離職率は高まります。
また看護職について、「人材紹介会社を通じ確保した人材」と「通常ルートで採用した人材」とで離職率を比べると、「紹介による看護職のほうが離職率が高い」ことが分かります。日本看護協会の調べによれば、看護職員の離職率は▼既卒採用(いわゆる中途採用):17-18%程度▼新卒:8%弱▼正規雇用:11%弱―であり、紹介による看護職の離職率(▼看護師:20.3%▼准看護師:41.5%▼看護補助者:33.5%)が、かなり高いことが伺えます。
3団体では「病院のニーズに合った即戦力を期待して人材紹介会社を利用しているが、定着率は芳しくない」とコメントしています。
また紹介ルートで採用した職員が自己都合退職した場合について、9割の人材紹介会社では「手数料返還保証」を行っています。ただし、その期間は▼1か月:22.1%▼3か月:39.4%▼6か月:31.0%―などと短いのが実際です。
この点、保証期間が長いほど離職率上昇を抑えられるというデータもあります。
3団体では▼適切なサービスを提供する人材紹介会社への評価▼人材紹介手数料の一定基準設定▼保証期間の延長―などを早急に検討することが必要と訴えています。
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