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2025年度の医学部入試から、「医師多数県の臨時定員を2割削減」し、医師少数県の臨時定員等に配分していく—医師偏在対策等検討会(2)

2024.4.30.(火)

来年度(2025年度)の医学部入学定員から、「医師多数県の臨時定員を2割削減し、それを医師少数県の臨時定員に、意向を踏まえて配分する」「残余がある場合には、恒久定員内地域枠の設置を進めている医師多数県・医師中程度県に配分しなおす」—こととする—。

4月26日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった方針も固められました。今夏に向けて具体的な調整・配分が進められます(同日の地域枠設定・ベテラン医師の医少数の地域での勤務推進に関する記事はこちら)。

4月26日に開催された「第4回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」

2025年度から「臨時定員」枠の都道府県配分調整の仕組みを導入

検討会では、「2026年度の医学部入学定員」について最優先で検討を行っており、3月27日の会合において、▼近い将来「医師過剰」になる▼依然として大きな医師偏在がある—との2点を踏まえると「直ちに医学部定員数の急激な変更は行うことはすべきでない」ため、2026年度の医学部定員については「実効性のある医師偏在対策を行いつつ、2024年度の医学部定員数(9403名)を上限として設定する」との考えをまとめました(関連記事はこちら)。

さらに、「実効性のある医師偏在対策」については、「医師多数県の臨時定員を減じ、それを医師少数県の臨時定員増に振り替える」という大きな考え方が示され、詳しく詰めていくこととなりました(関連記事はこちら)。

4月26日の会合では、「実効性のある医師偏在対策」について、次のような対応を来年度(2025年度)から実施してはどうかとの提案が厚生労働省からなされました。

(1)医師多数県での対応方針
→医師多数県では、医師少数県・中程度県と比較して、臨時定員として地域枠を確保する必要性が低い
→ただし、大幅な変更は教育・研修・診療体制への影響等も考えられる
ために、次のような対応を行う
▼原則として2024年度の臨時定員地域枠に0.8を乗じたうえで、必要に応じて(3)の対応を行う(つまり2割減(1)+α(3)とする)

(2)医師少数県での対応方針
→医師少数県では、医師多数県・中程度県と比較して、医師全体が少なく、若手医師についても少ない傾向がある
ために、次のような対応を行う
▼臨時定員地域枠の要件を満たしつつ、教育・研修体制が維持される範囲内で、医師多数県から削減等した定員数分((1))を活用して、原則として2024年度よりも増員の意向がある場合には、その意向に沿った配分を行う(増員を認める)

(3)残余臨時定員の調整
→上記(1)(2)の対応を行った結果、「2025年度の臨時定員総数」<「2024年度の臨時定員総数」となる場合には、「2025年度の臨時定員総数=2024年度の臨時定員総数」となる範囲内で、「恒久定員100名あたり、恒久定員内地域枠を4名以上設置している」など、更なる県内の偏在是正が必要な都道府県について次の調整を行う
▼医師多数県では、例えば2024年度臨時定員地域枠の1割など「一部の意向」を復元する(上述(1)の+α)
▼医師少数区域のある医師中程度県では、2024年度からの増員意向がある場合、「医師少数区域等に従事する枠となっているか」など、地域枠の趣旨の範囲内で配分を行う
▼臨時定員研究医枠について、2024年度からの増員意向がある場合には、その趣旨の範囲内で配分を行う



2023年度の実績(下表)をもとにすると、次のように考えることができそうです。

2023年度・24年度の臨時定員地域枠の状況(医師偏在対策検討会(2)1 240426)



▽医師多数県全体の臨時定員枠は191名ある
→(1)に照らせば、2025年度は「153名」(191×0.8)とする(38名の減員)

▽この38名の減員分を、医師少数県の意向に沿って振り分ける(2)
→医師少数県の、2022年度→23年度の臨時定員増は「12名」にとどまっており、これが維持されると仮定する

▽(1)による「38名の減員」と、(2)の「12名増員」との差である「26名分」を、(3)の手法に沿って、医師多数県の復元、医師中程度県の増員などに配分する



もう少し具体的に、まず東京都を例にとって考えましょう。まず東京都は医師多数であるため、(1)で2割の臨時定員削減が行われ、20人×0.8で「16人」となります。

この後に「復元」が認められるか否かは、東京都の恒久定員の中に4%(100名中、4名)以上の地域枠が設置されているかどうかです。東京都は恒久定員1397名のうち、地域枠は5名に過ぎず(0.4%)、「4%」の基準を満たしていません。したがって復元は認められず、臨時定員は「16名」のままとなります。

次に、鳥取県を例にとってみてみましょう。鳥取県も医師多数であるため、(1)で2割の臨時定員削減が行われ、19人×0.8で「15人」となります。

この後に「復元」が認められるか否かは、鳥取県の恒久定員の中に4%(100名中、4名)以上の地域枠が設置されているかどうかです。鳥取県は恒久定員85名のうち、地域枠は7名あり(8.2%)、「4%」の基準を満たしています。したがって復元が認められます(たとえば1割の復元で17名となる)。

2023年度の都道府県別医学部入学定員(医師偏在対策検討会1 240327)



医師少数県、とりわけ医師不足が深刻とされる東北地方でも「2022年度→23年度」の臨時定員増員は行われていません。教育体制や予算確保など、様々な事情があるものと思われ、「2025年度に向けて、医師少数県が枠いっぱいの臨時定員増員要望をする」かどうかは疑問です。

このため厚生労働省は、調整・配分にあたっては▼「臨時定員地域枠の要件を満たす」ことを確認する▼必要に応じて「教育・研修体制」、「医師少数区域への地域枠医師の配置状況」、「診療科選定の状況」、「若手の医師数」医師偏在指標の多寡」、「過去の臨時定員地域枠充足率」なども考慮する—考えも強調しています。



こうした方針に異論・反論は出ていませんが、神野正博構成員(全日本病院協会副会長)は、(3)における医師多数県・中程度県における増員のための「恒久定員100名あたり、恒久定員内地域枠を4名以上設置」要件について「恒久定員内地域枠設置に向けた重要なインセンティブとなる。医師少数県でも恒久定員内地域枠設置のインセンティブを設けるべきではないか」と提案しました。

厚生労働省・文部科学省は「各都道府県・各大学の意向」を聴取し、上記の意見も参考にしながら、具体的な調整・配分を今夏(2024年夏)に向けて進めていきます(2025年度における大学受験の募集要領に間に合うように)。2026年度以降については、「上記の2025年度の調整・配分の状況」を踏まえた、内容の修正・微調整などが行われるとみられます。



ところで、「A県の大学医学部で学んだ後、B県の医療機関に勤務する」というケースも決して少なくありません。医師多数県の大学医学部の中に「医師少数県で勤務することを条件とする地域枠」が設定されることもあります。

こうした仕組みの拡大も医師の地域偏在是正に向けた重要な要素となりますが、小笠原邦昭構成員(日本私立医科大学協会、岩手医科大学附属病院病院長)は「『大学の関連病院』以外に、大学から医師を派遣することは難しいのが現実だ。学会がコントロールする仕組みを構築する必要がある」との考えを示しました。

また、将来の臨時定員枠の漸減に向けて、木戸道子構成員(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)は「『医師の地域偏在』是正目的を果たすためには何名の臨時定員枠を設ければよいかを精緻に試算する必要がある」とコメントしています。



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