2023年度までに全病院に求められる機能再検証進む、今後「外来・在宅も含めた医療体制改革」論議にも期待—地域医療構想・医師確保計画WG(2)
2023.5.26.(金)
2025年度の「地域医療構想の実現」に向けて、公立・公的医療機関等を含めた「すべての病院で2022年度・23年度中に機能の再検証を行う」ことが求められている—。
すでに「再検証」を求められていた公立・公的病院等ではもちろん、民間病院においても再検証が進んでいる。今後も定期的に「再検証論議の進捗状況」をチェックしていく—。
今後は、「入院にとどまらず外来・在宅を含めた医療提供体制改革論議が進める必要がある」「DPCデータなどを用いた分析をさらに進める必要がある」点にも留意が必要で、国・都道府県による支援に期待が集まる—。
5月25日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)では、こうした議論も行われました(2022年度の病床機能報告結果速報に関する記事はこちら)。
病院の機能再検証、民間病院でも加速化、2023年9月・24年3月にも進捗状況を確認
2025年度に団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、今後、急速に医療ニーズが増加・複雑化していきます。このため、2025年度の医療ニーズを踏まえた【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。
この地域医療構想の実現に向けた医療現場・自治体の取り組みを加速化するため、地域医療構想・医師確保計画WGでは次の2方針を固め、厚労省はその旨の通知を昨年(2022年)3月に発出しています(厚労省サイトはこちら)。
(a)公立病院・公的病院等はもちろん、民間病院も含めた「すべての病院」において、2022・23年度中に「自院の機能・規模が、地域医療構想に照らして妥当なものとなっているのか」の再検証を行う
(b)2022年度に、2022年9月末・2023年3月末における再検証等の進捗状況を各都道府県から厚労省へ報告するとともに、各都道府県のホームページ等で公表する
5月25日の地域医療構想・医師確保計画WGには、(b)のうち「2023年3月末における再検証等の進捗状況」が厚生労働省から報告されました。既に報告された「2022年9月末における再検証等の進捗状況」と比べると、地域での再検証協議が相当程度進んでいることが伺えます。
【各医療機関における再検証等の進捗状況】
▽措置済を含む「合意・検証済」医療機関の割合
▼全体では、医療機関ベースで59.7%、病床数ベースで76.4%で、22年9月時点と比べて医療機関ベースで23.1ポイント増、病床数ベースで15.4ポイント増
▼再検証対象医療機関では、医療機関ベースで58.0%、病床数ベースで62.4%で、22年9月時点と比べて医療機関ベースで5.7ポイント増、病床数ベースで5.8ポイント増
▼公立病院では、医療機関ベースで99.3%、病床数ベースで98.9%で、22年9月時点と比べて医療機関ベースで0.9ポイント増、病床数ベースで0.5ポイント増
▼公的病院では、医療機関ベースで97.7%、病床数ベースで98.6%で、22年9月時点と比べて医療機関ベースで0.5ポイント増、病床数ベースで0.5ポイント増
▼その他医療機関では、医療機関ベースで55.2%、病床数ベースで63.7%で、22年9月時点と比べて医療機関ベースで26.3ポイント増、病床数ベースで26.2ポイント増
▽地域別に見ると、進捗状況に大きなバラつきがある
▽「協議や再検証が始まっていない」理由を見ると、▼コロナ対応の経験を踏まえ、改めて検討中▼病院ではすでに機能見直しなどを検討しているが、調整会議にあげていない—が多い(「何もしていない」わけではない)
▽再検証対象医療機関では、機能検証とともに、▼ダウンサイジング▼機能転換(過剰な急性期・慢性期から、不足する回復期への転換など)—が進んでいるが、「現状維持」も一定程度ある
【各地域医療構想区域・各都道府県における地域医療構想の実現に向けた取り組み状況】
▽地域医療構想調整会議の開催状況は、コロナ禍前の水準に戻り切っていないが、2022年度は20・21年度に比べて開催頻度が増加している
▽複数医療機関にまたがる再検証(統合、機能分担など)は、構想区域ベースで19%(66区域、2022年9月末に比べて1区域増)、都道府県ベースで57%(27道府県、2022年9月末に比べて6県増)で行われている
▽病床機能報告の分析(100%)は行われているが、独自の定量的基準導入(57%、2022年9月末に比べて7ポイント減)、DPCデータ分析(45%、同2ポイント減)、KDB(国保データベース)分析(28%、同2ポイント増)、その他のデータ分析(34%、同2ポイント減)は十分には進んでいない
▽「外来・在宅を含めた議論」、「地域全体の医療提供体制改革論議」は、必ずしも十分に進んでいるとは言えない
入院だけでなく、外来・在宅も含めた「地域の医療提供体制」全体の改革論議も進めよ
こうした状況に対し、「再検証論議が進んでいる」という意見(例えば織田正道構成員:全日本病院協会副会長ら)と、「民間病院を中心とした『その他医療機関』で再検証が進んでいない、遅れている」と見る意見(例えば幸野庄司構成員:健康保険組合連合会参与ら)との双方が出ています。
両方の意見ともに事実ですが、「医療現場はコロナ感染症対応に追われている」ことや、「民間病院を中心とした『その他医療機関』では、再検証要請から比較的日が浅い」ことなどを踏まえれば、「着実に再検証論議が進んでいる」と見ることができるのではないでしょうか。
もっとも、「2023年度までにすべての医療機関で機能再検証を行う」という目標達成が確実である状況でもないことから、厚生労働省は「今後も、定期的に進捗状況報告を求める」(例えば2023年9月末の状況、2024年3月末の状況など)考えです。仮に、半年後となる「2023年9月末」時点で目標達成が厳しそうだとなれば、何らかの手当が検討されることになるでしょう。
このほか、別の視点に立った構成員からは、▼将来に向け、入院だけでなく「外来」「在宅」論議を地域単位で進めるべき時期に来ている(織田構成員)▼地域医療構想調整会議で「外来」や「在宅」の議論が行われている地域もあるが、「入院」については大規模病院中心の議論となるが、「外来」「在宅」では地域密着型病院の役割が非常に大きくなることから、議論・協議を行うメンバーの調整・工夫が必要となる(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)▼各種データに基づく議論が低調であり、国や都道府県による支援を強化していく必要がある(小熊豊構成員:全国自治体病院協議会会長)▼地域医療構想調整会議の開催状況にとどまらず、「どのような議論を行っているのか」の中身にも注目した分析が必要であろう(大屋祐輔構成員:全国医学部長病院長会議理事)▼「地域全体の医療提供体制」改革論議を加速化する必要がある。その際「複数の公立病院が合併して巨大3次救急病院となり、地域の2次救急が撤退している」事態などにも目を配る必要がある(伊藤伸一構成員:日本医療法人協会会長代行)▼再検証の結果「従前どおり」とする医療機関も一定数あるが、「本当に従前どおりでよいのか」の検証も必要ではないか。また「協議の開催状況」と「再検証の進捗状況」との相関なども見る必要がある(尾形裕也座長:九州大学名誉教授)—などの意見が出されています。
いずれも重要な指摘であり、「2025年度の地域医療構想実現」に向けた協議と並行し、「外来・在宅も含めた地域の医療提供体制全体」に関する改革論議とを、今後並行して進めていくことが必要と考えられます。あわせて国(厚生労働省)では「2040年を見据えたポスト地域医療構想」に関する議論も進みます。今後の動きから目を離すことはできません。
なお、その際には小熊構成員の指摘するように「データに基づく議論」が必要不可欠となります。この点、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。
GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。
GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。
●GHCのサービス詳細はこちら
従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCアソシエイトマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。
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