2026年度診療報酬改定に向け入院料引き上げ、救急搬送を多く受け入れる地域包括ケア病棟の評価充実等検討を―地ケア推進病棟協・仲井会長
2025.8.20.(水)
2026年度の次期診療報酬改定に向けて、「入院料の引き上げ」や「各種専従要件の緩和」、「救急搬送患者等を多く受け入れる地域包括ケア病棟の評価充実」、「地域包括医療病棟の救済措置延長や新たな評価軸の設定」、「急性期病棟と地域包括ケア病棟のケアミクス併存・継続」などを検討すべき—。
また2028年度の次々期診療報酬改定を見据え、「多数疾患を抱えるマルチモビティティ患者の重症度評価」に向けた調査・研究を今から進めるべき—。
地域包括ケア推進病棟協会(以下、協会)の仲井培雄会長が8月19日にオンライン記者会見を開催し、8月12日に厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長に宛ててこうした要望を行ったことを明らかにしました(協会サイトはこちら)。

8月19日に記者会見に臨んだ地域包括ケア推進病棟協会の仲井培雄会長
2028年度の次々期診療報酬改定見据え、今から「マルチモビディティ患者の評価」研究を
2026年度の診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会を中心に進められています。
そうした中で地域包括ケア推進病棟協会の仲井会長は、林医療課長に宛てて次のような要望を行いました。2026年度改定だけでなく、その次の「2028年度診療報酬改定」も見据えた内容となっています。
まず地域包括ケア病棟・地域包括医療病棟に共通する内容として、次の4点を要望しています。
(1) 入院料を大幅に引き上げる(物価、人件費、委託費、建築費等が急騰する中で病院経営の持続性が脅かされており、質の高い医療・ケアの継続、安定した医療提供体制を確保する必要がある)
(2) チーム医療に関する「専従要件」をなくし、兼務を認める(人材確保が厳しさを増す中で、▼必要な資格▼一定の経験年数—を要件とし「専任での複数業務の兼務」を認めることで、職員のスキルを最大限に活用でき、チーム医療全体の強化につながる)
(3) 救急患者を3次救急まで「迎え」に行き、転院を受け入れた場合の評価を創設する(【救急患者連携搬送料】の利用は低調であり、また地域包括ケア病棟での【在宅患者支援病床初期加算】を活用した患者受け入れも進んでおらず、転院患者を「迎え」に行く場合の評価を検討すべき)
(4) 2028年度改定を見据えて、「マルチモビディティ患者を受け入れた場合の評価」を検討すべき
このうち(4)のマルチモビディリティとは「多くの疾患を抱えている状態」です。例えば、▼CPOD(慢性閉塞性肺疾患)▼高血圧▼糖尿病▼脳梗塞の後遺症—が併存する患者では、「抗血栓薬、血圧降下薬をはじめとする多種類の薬剤の服用管理」、「インスリン製剤の管理」、「シーパップ(CPAP)による呼吸管理」、「ADL低下に伴う転倒・転落の防止」など複合的な治療・管理が必要となります。それぞれの疾患に対する治療・管理そのものは、それほど難しくありませんが、これらが複合した場合には、その治療・管理が「極めて複雑で難しい」ものとなることは述べるまでもないでしょう。
仲井会長は「マルチモビディティ患者の治療・管理は、当然、『単に肺炎で入院した若年患者』のそれとは手間のかかり方が大きく異なってくるが、現在の重症度、医療・看護必要度では十分な評価がなされていない。そうした点について、2028年度の次々期診療報酬改定での十分な評価を睨んで、今から調査・研究を行うべき。新たな地域医療構想でも、この点が重要になってくる」とコメントしています。
また、地域包括ケア病棟については、2014年度診療報酬改定での創設から10年超が経過する中で、様々な課題も浮かび上がってきている点を踏まえて、次のような要望を行っています。
▽【看護職員配置加算】(看護職員を加配した場合の加算)に関し、「看護職員と他職種との業務分担」および「柔軟な勤務体制の工夫」に着目した要件緩和を行ってほしい
→看護師の早出・遅出業務を他職種が専門性を活かして代替した場合に、その職員を加算の対象とみなす。その際「ICT等の技術活用による業務負担軽減」「医療安全管理」「感染対策」の実施を要件とする
▽救急搬送患者を地域包括ケア病棟で直接受け入れた場合、SOFAスコア等の指標を活用した「数日間のトリアージ期間」を設け、その期間中に病態が悪化した場合、1回に限り「地域包括ケア病棟(A)→急性期病棟(B)→地域包括ケア病棟(C)」における、「Cでの地域包括ケア病棟入院料算定」を認める床を経た後の地域包括ケア病棟への再入棟を認め、地域包括ケア病棟入院料を算定可能としてほしい
→現在は「地域包括ケア病棟への直接入棟(A)→悪化に伴う自院の急性期病棟への転棟(B)→回復に伴う地域包括ケア病棟への転棟(C)」において、「Cでは地域包括ケア病棟入院料を算定できず、特別入院基本料」を算定するため、▼救急搬送患者の地域包括ケア病棟での直接受け入れの躊躇▼中小病院のベッドコントロール停滞—の原因となっている)
▽救急・緊急患者の地域包括ケア病棟での直接受け入れ割合が一定以上の場合、【在宅患者支援病床初期加算】の上乗せを行ってほしい(言わば「上位の地域包括ケア病棟の評価」「地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の中間評価」を求めるもの、関連記事はこちら)
→主に内科系の救急・緊急入院の地域包括ケア病棟での直接受け入れを促進し、【地域包括医療病棟】の届け出が難しい中小病院における「高齢者救急の受け入れ評価」による地域医療貢献が促される
▽短期滞在手術等基本料3について、地域の医療資源や訪問診療の充実度、手術環境などを考慮した柔軟なルールを設定してほしい(一律の「外来中心」への規制をすべきではない、関連記事はこちら)
→短期滞在手術等基本料を「外来中心にすべき」との意見もあるが、過疎地の高齢独居患者などは通院が困難なケースも多い
他方、2024年度の前回診療報酬改定で創設された【地域包括医療病棟】については、まだ若い入院料ということもあり、次の2点の要望を行うにとどめています。
▽重症度、医療・看護必要度に係る救済措置の期限延長、新たな評価軸の設定を行うべき
→現在は要件が厳格ゆえ、「軽・中等症の高齢者救急」を一定以上受け入れることは難しく、病院が届け出しやすい環境を整えるべき
▽高齢者救急を地域包括医療病棟に集約するのではなく、地域の医療ニーズに応じ「急性期一般病床+地域包括ケア病棟」、「療養病床+地域包括ケア病棟」のように、簡潔な組み合わせで転換を複線化すべき(関連記事はこちら)
→DPC参加基準を満たせない急性期病棟や、救急搬送受け入れに注力する地域包括ケア病棟から地域包括医療病棟への転換が検討されているが、中小病院には厳しい要件もあり、大都市や過疎化が進む地方都市では「急性期一般+地域包括ケア病棟」などのニーズが今後も継続し、過渡期的な対策として必要なケアミクスを認める必要がある
今後、こうした要望も踏まえながら中医協等で2026年度診療報酬改定論議が深められていきます。
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