地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の「中間評価」創設を、急性期病棟とのケアミクスは柔軟に認めよ―地ケア推進病棟協・仲井会長
2025.7.30.(水)
2024年度の診療報酬改定において、高齢の救急患者に包括的に対応する新病棟【地域包括医療病棟】が新設されたが、施設基準が非常に厳しい。例えば、【地域包括ケア病棟】と【地域包括医療病棟】の中間的な評価を創設することで「高齢の救急患者への包括的対応」を行う病院がより増加しやすくなる—。
【急性期一般2-6病棟】と【地域包括医療病棟】のケアミクスは柔軟に認めるべきではないか。医療現場は「スイッチを押せば、すぐにその通りに反応・行動できる」わけではない。現場の特性に応じて「急性期一般2-6と地域包括医療病棟とを使い分ける」病院も、「全病棟を地域包括医療病棟に収斂していく」病院もあってよい—。
地域包括ケア推進病棟協会(以下、協会)の仲井培雄会長が7月29日にオンライン記者会見を開催し、こうした考えを述べました。

7月29日に記者会見に臨んだ地域包括ケア推進病棟協会の仲井培雄会長
地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の「中間評価」創設が必要!
2024年度の診療報酬改定で、高齢の救急搬送患者に包括対応する【地域包括医療病棟入院料】が新設されました(関連記事はこちら)。

高齢の救急搬送患者に包括的な対応を行う新病棟の創設が期待される(中医協総会(1)1 231215)

地域包括医療病棟に設けられた加算一覧

地域包括医療病棟入院料の包括範囲、手術や麻酔、心カテなどの高度な検査などは「出来高算定」可能である
地域包括医療病棟では、地域包括ケア病棟に比べて、「より多くのマルチモビリティ患者」が入棟していることが分かっています。マルチモビリティとは多くの疾患を抱えている状態であり、「症状、兆候、診断名が不明確な高齢の救急搬送患者が増加している」点について仲井会長は「まさにこれが高齢のマルチモビリティ患者の増加である」と指摘しています。高齢者が増加する(当然、高齢の救急搬送患者も増加する)中で非常に期待の大きな病棟・特定入院料と言えます。

地域包括ケア病棟と地域包括医療病棟との患者像の違い(地域包括ケア推進病棟協会会見1 250729)
しかし、本年(2025年)6月14日時点で届け出は175施設・約9200床にとどまっています。

地域包括医療病棟の届け出状況(地域包括ケア推進病棟協会会見2 250729)
この背景には「施設基準の厳しさ」があり、協会の調べでは▼誤嚥性肺炎や尿路感染、めまい、熱発などの内科系疾患では、看護必要度が上がりにくい(関連記事はこちら)▼予定手術が多く、整形外科系の緊急手術が少ないため、ADL低下5%未満をクリアできない▼急性期一般病棟・地域包括医療病棟のケアミクス病院で、急性期→地域包括医療への転棟は5%未満しか受け入れできない—ことなどがあげられています。

地域包括医療病棟のハードル(地域包括ケア推進病棟協会会見3 250729)
この点、厚労省は「施設基準の緩和」に関する経過措置(来年(2026年)5月まで)を設けていますが、仲井会長は「救済措置が終了すれば非常に大きな影響が出る。終了は困る」とコメントしています。

地域包括医療病棟の施設基準緩和(経過措置)の状況(地域包括ケア推進病棟協会会見4 250729)
あわせて仲井会長は「地域包括医療病棟は、地域包括ケア病棟に比べて『2段階上位の施設基準』が設定されており、すべてを満たすにはハードルが高すぎる。地域包括ケア病棟と地域包括医療病棟の『中間的な評価』を創設してはどうか」と提案しています。例えば、地域包括ケア病棟に新加算を設けて、▼地域包括医療病棟▼加算つきの地域包括ケア病棟▼一般の地域包括ケア病棟—といったラインナップを揃えることで、「各医療現場の資源・体制に合わせた形で、高齢の救急搬送患者等への対応を充実させていく」ことなどが考えられるかもしれません。
2026年度に向けて、地域包括医療病棟の施設基準の在り方を検討することが必要でしょう。
地域包括医療病棟と急性期病棟とのケアミクス、過渡期であり柔軟に認めよ!
また、地域包括医療病棟については「急性期一般病棟、とりわけ急性期一般2-6とのケアミクス」をどう考えるかという論点があります(関連記事はこちらとこちら)。この点については、例えば▼機能重複が生じてしまうため「好ましくない」と考える識者▼ケアミクス病院では、より多くの救急搬送受け入れを行っており「好ましい」と考える識者▼過渡期であり「放っておけばよい」と考える識者—がいますが、入院・外来医療等の調査・評価分科会には「急性期一般2-6と地域包括医療病棟とで、受け入れ患者の傷病名やADL、要介護度に明確な差異は認められない」とのデータが示され、「急性期一般2-6と地域包括医療病棟とのケアミクスは好ましくない」との指摘も出ています(こちら)。
一方、仲井会長は、この点について「過渡期であり、柔軟なケアミクスを認めるべきではないか。スイッチを押せば、すぐにその通りに反応・行動できるわけではない」との考えを示しています。例えば、地域によって・病院によって人員配置や患者の構成などには大きな違いがあるため、現場の実情に応じて「急性期一般2-6と地域包括医療病棟とを使い分ける」病院も、「全病棟を地域包括医療病棟に収斂していく」病院もあってよいとの考えでしょう。
また仲井会長は、従前は「急性期一般1から地域包括医療病棟への転換」が進んでいたが、現在は「急性期一般2-6から地域包括医療病棟への転換」が進んでいると分析しています。この状況を見ても、仲井会長の指摘する「過渡期」であることが伺えそうです。

地域包括医療病棟への転換状況(2025年6月14日時点)(地域包括ケア推進病棟協会会見5 250729)

地域包括医療病棟への転換状況(2024年12月時点)(地域包括ケア推進病棟協会会見6 250729)
関連して仲井会長は、新地域医療構想の4つの医療機関機能(▼高齢者救急・地域急性期機能▼在宅医療等連携機能▼急性期拠点機能▼専門等機能—)と診療報酬との紐づけに向けて、下図のような考え方も示しました。各病院で「入院料の届け出状況」や「地域の医療ニーズ」などを踏まえて、どの医療機関機能を報告するかを検討していく必要があります(この点、厚生労働省の検討会でガイドライン作成論議が始まっている)。

新地域医療構想の医療機関機能と診療報酬との関係イメージ(地域包括ケア推進病棟協会会見7 250729)
また、地域包括ケア病棟に関して仲井会長は、在宅療養患者が状態悪化した場合に積極的に受け入れているが、▼救急搬送や高次医療機関を経由した下り搬送が少ない▼老人保健施設との連携不足—が課題と考えられ、連携強化に向けた「さらなる評価」が必要との見解も示しています。
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