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「極めて予後不良な白血病の一群」が明らかに、「新たな鑑別診断技術→造血幹細胞移植」に期待が集まる—国がん・東北大病院

2026.3.17.(火)

T細胞性急性リンパ性白血病の中でも「極めて予後不良なサブタイプ」が明らかになった。通常の検査では鑑別診断が難しく、従来の抗がん剤治療では治癒が困難であり、「新たな鑑別診断技術→早期の造血幹細胞移植」が臨床実装されることに期待が集まる—。

国立がん研究センターと東北大学病院が3月10日に、こうした研究成果を発表しました(国がんのサイトはこちら)。

T細胞性急性リンパ性白血病の中でも「極めて予後不良なサブタイプ」

T細胞性急性リンパ性白血病(以下、T-ALL)は、白血球の一部であるリンパ球の一種「T細胞」になろうとしている未熟な細胞が、がん化する疾患です。小児から思春期・若年成人(いわゆるAYA世代)に主に発症します。

このT-ALLには、様々な遺伝子異常のサブタイプがあることが最近の遺伝子解析で明らかになってきましたが、まだ分類しきれていない「原因不明の症例」もあります。

白血病のサブタイプによって「効きやすい治療薬」や「必要な治療の強度」が異なるため、治療にあたっては、まず「正確に分類する」ことが非常に重要となります。とりわけ、従来の治療法では効果が得られにくいハイリスクグループを早期に鑑別し、例えば「造血幹細胞移植など、より強力な治療」や「新しい分子標的薬による治療」を行う必要があるのです。

そこで、国がんと東北大病院の研究グループは、最新の遺伝子解析技術を用いて「未知の、新しいT-ALLのサブタイプを見つける」ための研究を実施しました。

具体的には、▼東北大病院小児科の4症例▼海外の初期前駆T細胞性急性リンパ性白血病(ETP-ALL)に関する12症例▼海外の小児からAYA世代のT-ALLに関する1309症例▼国内の121症例▼国内の成人T-ALLと混合表現型急性白血病(MPAL)に関する74 症例—を統合し、最新の遺伝子解析技術を用いて多層的な解析を実施。その結果、次のように「新たなT-ALLのサブタイプ」が明らかになりました。

(1)新しい遺伝子異常「t(14;16)(q32;q24)」の発見
▽小児11例、成人3例の合計14例(7-35歳、平均16.8歳)で、「14番染色体と16番染色体の一部が入れ替わる現象」(転座)を特定
→この異常は染色体の端(テロメア近傍)で起きているため、通常の検査(顕微鏡で染色体の形を見るG分染法)では検出が困難

新たなサブタイプでは、染色体末端付近で転座が生じている



(2)「エンハンサー・ハイジャック」による発がん機構の解明
▽(1)の「転座」により、本来「T細胞の運命を決める重要な遺伝子」(BCL11B)を働かせるための強力なエンハンサー(転写活性化領域)が、16番染色体にある別の遺伝子群(FENDRR、FOXF1、FOXC2 遺伝子)の近くへ移動していた
▽これにより、「本来、血液細胞では働かない」はずのFOXF1などの遺伝子が異常に活性化していた
→エンハンサーが「本来の相手ではない遺伝子に乗っ取られる」現象をエンハンサー・ハイジャックと呼ぶ

新たなサブタイプは、「エンハンサー・ハイジャック」により発がんする



(3)異常に活性化したFOXF1タンパク質による「上皮間葉転換」と骨髄球系細胞への分化促進
▽細胞を使った実験と病態解析において、「(2)で明らかになったFOXF1タンパク質が異常発現した血液細胞」は、上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition=EMT)シグナルが活性化していた
▽過去の研究から、白血病でEMTシグナルが活性化した場合、「治療への抵抗性」や「転移能の増大」が生じ、生存率が低下することが示されている

▽FOXF1タンパク質は、「未熟な血液細胞においてT細胞としての成熟を阻害」し、骨髄球系細胞らしい特徴を獲得(骨髄球系へ分化)させることが分かった
▽T-ALLの標準治療薬は、がん細胞が骨髄球系(別の種類の血液細胞)の性質を持ってしまうと「感受性が低下」し、効果が発揮されにくくなる

異常に活性化した FOXF1タンパク質が治療を阻んでいる



これらから、新たなサブタイプのT-ALLでは、「FOXF1タンパク質の異常な活性化が、T-ALL治療に標準的に使われる薬剤の効果を著しく低下させる」と考えられます。



また、今回の研究で明らかになった新たなサブタイプは、つぎのような特徴がありました。
▽年齢
→過去のT-ALLに関する研究(平均9.5歳)と比べて、発症年齢が高く(平均16.8 歳)、AYA世代に多く見られた

▽頻度
→日本人(特に成人)において頻度が高い傾向が見られた(海外の小児・AYA世代(1-29歳)では0.15%(1309症例中2症例)、国内の小児(1-19歳)では2.4%(121症例中3 症例)、国内成人におけるT-ALLまたはMPAL症例では、4.0%(74症例中3症例))

▽予後
→これまでの研究で知られているT-ALLサブタイプの中で「最高リスク」とされていたグループよりも「生存率が低い」傾向にあった
→本サブタイプのうち生存している患者は、全員が「造血幹細胞移植」を受けていた

新たなサブタイプT-ALLと、他のT-ALLとの生存期間を比較すると、超ハイリスクとされているサブタイプよりも短い



今回の研究で、これまで正体が明らかでなかった「極めて予後不良な白血病の一群」が明らかになったと言えます。

ただし、この新たなサブタイプは「遺伝子パネル検査を含む既存の臨床検査」では見つけにくいため、鑑別診断には▼全ゲノムシークエンシング▼RNAシークエンシング▼FISH 法▼ロングリードシークエンシング―などの新たな検査方法の導入が重要となります。いずれも、現時点では「研究レベル」でのみ実施されている検査法です。

また、この新たなサブタイプは「従来の抗がん剤」だけでは治癒が難しいため、「診断時から早期に造血幹細胞移植を検討する」など、より正確な予後予測に基づく治療戦略の見直しが必要になると考えられます。

今後、本研究で特徴的であった「FOXF1タンパク質の血液細胞における詳細な機能」の解明が進めば、病態を直接抑えるような新しい治療薬の開発も期待されると研究チームは展望しています。

「新たな鑑別診断→治療」が早期に臨床に実装されることに期待が集まります。



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