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地域包括医療病棟、急性期病棟とのケアミクスや地域包括ケア病棟等との役割分担、施設基準の在り方などどう考えるか―入院・外来医療分科会(1)

2025.6.13.(金)

2024年度診療報酬改定で新設された【地域包括医療病棟】について、(1)急性期病棟とのケアミクスの是非(2)地域包括ケア病棟や急性期一般病棟2-6等との役割分担(3)届け出の促進に向けた施設基準の在り方—をどう考えるべきか—。

6月13日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)で、こういった議論が行われました。同日には、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟、療養病棟などの議論も行われており別稿で報じます。

6月13日に開催された「令和5年度 第3回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」

「地域包括医療病棟」と「急性期病棟」とのケアミクスをどう考えるべきか

2026年度の次期診療報酬に向けて、入院・外来医療分科会で入院医療・外来医療に関する「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」が進められており、6月13日の会合では、いわゆる「包括期・慢性期」の入院医療に焦点が合わせられました。

包括期入院医療を提供する病棟の1つである【地域包括医療病棟】は、2024年度の前回診療報酬改定における目玉の1つで、「主に高齢の救急等、急性期患者を受け入れ▼急性期状態からの速やかな離脱に向けた十分な医療提供▼早期の退院に向けたリハビリ、栄養管理などの提供▼退院に向けた支援▼適切な意思決定支援▼在宅復帰支援▼退院後の在宅医療を行う医療機関や介護事業所等との連携—などを包括的・総合的に行う」新病棟として創設されました。

新たな病棟(特定入院料)であるため届け出病院はまだ一部にとどまっています(昨年(2024年)12月時点で131病院)が、高齢化が進展し「高齢の救急患者が増加していく」中で、非常に重要な病棟であり、今後、その重要性が増していくことに疑いの余地はありません。

Gem Medでは、【地域包括医療病棟】を(1)急性期病棟とのケアミクスの是非(2)地域包括ケア病棟や急性期一般病棟2-6等との役割分担(3)届け出の促進に向けた施設基準の在り方—という切り口で見ていきます。



まず(1)の「急性期病棟とのケアミクスの是非」についてです。2024年度診療報酬改定での【地域包括医療病棟】創設にあたっては、▼急性期一般1(7対1看護)からの移行(ダウングレード)▼急性期一般2-6(10対1看護)からの移行(スライド)▼地域包括ケア病棟(13対1看護)からの移行(アップグレード)—の主に3つのルートが想定されました(もちろん新設や他病棟からの転換・移行も可能)。

地域包括医療病棟への移行イメージ



6月13日の入院・外来医療等評価分科会に示されたデータによれば、▼急性期一般1(7対1看護)からの移行▼地域包括ケア病棟(13対1看護)からの移行▼急性期一般4(10対1看護)からの移行—が多く、上記の想定と合致しています。

地域包括医療病棟への移行状況(入院・外来医療分科会(1)1 250613)



ところで【地域包括医療病棟】を届け出た病院の3分の2では「急性期一般1などの移行前の入院料を併せて届け出ている」こと(上図)や、やはり3分の2の病院が「DPC病床を有している」状況(下図)も明らかにされました。

地域包括医療病棟と他病棟とのケアミクス状況1(入院・外来医療分科会(1)2 250613)



つまり、少なからぬ病院において【地域包括医療病棟】と「他の急性期病棟」(急性期一般1など)を併せて届け出ている(ケアミクスである)ことが伺えますが、「このケアミクス状態」をどう考えるかが、今後の検討テーマの1つになる可能性があります。今村英仁委員(日本医師会常任理事)や津留英智委員(全日本病院協会常任理事)も「高齢の救急搬送患者が増加していく中で、「救急医療提供体制の在り方」の1つとして、この論点が重要であると指摘しています。

まず「【地域包括医療病棟】と他の急性期病棟とのケアミクスは好ましくない」との考え方があります。【地域包括医療病棟】は上述のように「高齢の救急患者を受け入れる」ことを目的に創設された病棟であり、「他の急性期病棟とのケアミクス」では、機能の重複が生じてしまうためです。

医療現場からは、例えば▼高齢者が救急搬送された時点では「疾病や重症の度合いが不明であり、急性期病棟で受け入れるべきか、地域包括医療病棟で受け入れるべきか悩むケースが少なくない▼「重症の度合いが高い場合に備えて、いったん急性期病棟で受け入れ、その後、状態を確認してから地域包括病棟に転棟させる」場合に、地域包括医療病棟の施設基準である『自院の転棟患者割合5%未満』要件に引っかかってしまうため、使い勝手が悪い—などの点が指摘されます。

しかし、これは「【地域包括医療病棟】と他の急性期病棟とのケアミクス」であるがゆえに生じる課題であり、ケアミクスをやめればこうした課題は解消されると指摘する識者は少なくありません(ケアミクスをやめれば「どちらの病棟で受けるか」「自院の転棟患者割合はどうか」などの問題は生じない)。

また、「【地域包括医療病棟】と他の急性期病棟とのケアミクス」は都市部(人口の多い2次医療圏)で多く、「医療資源の配分という面からも非効率である。地域包括ケア病棟と急性期病棟とのケアミクスは好ましくない」と指摘する識者も少なくない点に留意が必要です。

地域包括医療病棟と他病棟とのケアミクス状況2(入院・外来医療分科会(1)3 250613)



一方、「【地域包括医療病棟】と他の急性期病棟とのケアミクス病院」では、「急性期とのケアミクスでない【地域包括医療病棟】を持つ病院」に比べて、より多くの救急搬送受け入れなどを行っており、「ケアミクスに問題はない、かえって好ましい」と考える識者もおられます。

地域包括医療病棟のケアミクス状況と、救急搬送患者受け入れ状況等との関係(入院・外来医療分科会(1)4 250613)



また、「急性期一般1のすべてを【地域包括医療病棟】に転換することは『怖い、危険である』と考え、一部を【地域包括医療病棟】に移行するにとどめた病院が多い。つまりケアミクスは過渡的なものに過ぎず、放っておくべきである」と考える識者もおられます。

今後、【地域包括医療病棟】を持つ病院について、「他にどの入院料を併せて届け出ているのか」に着目して、診療内容・実績にどういった違いがあるのかなどのデータを見ながら、この問題を考えていくことになるでしょう。入院・外来医療等分科会や中央社会保険医療協議会の議論に注目する必要があります。

地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟・急性期一般2-6等との役割分担をどう考えるか

また(2)に関しては、【地域包括医療病棟】の入院患者や提供される医療内容が「地域包括ケア病棟」(13対1看護)や「急性期一般2―6」(10対1看護)と類似しているとのデータが示されました。例えば、次のようなものが目を引きます。

▽地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟では「認知症を有する患者」「要支援・要介護状態の患者」の割合が多く、両者で大きな差はない

病棟ごとに見た患者の認知症の状況(入院・外来医療分科会(1)5 250613)

病棟ごとに見た患者の要介護度の状況(入院・外来医療分科会(1)6 250613)



▽地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟・急性期一般2-6の入棟患者では、DPC14桁分類が同一の患者(疾患と医療行為(手術の有無、処置の有無など)が同一の患者)が上位で重複している

地域包括医療病棟の上位疾患(DPC14桁分類)(入院・外来医療分科会(1)7 250613)

地域包括ケア病棟・急性期一般2-6における上位疾患(DPC14桁分類)(入院・外来医療分科会(1)8 250613)



つまり、地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟・急性期一般2-6では、「評価(点数や加算等)が異なっている」にもかかわらず、「疾患や状態の似通った患者が多く入棟し、同様の治療・ケアを受けている」と考えることができそうです。



他方、同じ地域包括医療病棟でも、患者の疾患構成には相当の違いがあることもわかりました。

地域包括医療病棟の疾患構成(DPC14桁分類)(入院・外来医療分科会(1)9 250613)



今後、さらに詳しく分析を行い、「病棟種類間、病棟種類内で患者・治療内容などがどこまで類似しているのか、あるいは違いはどこにあるのか」などを明らかにしながら、評価(点数や加算)の在り方を検討していくことになります。

この点について入院・外来医療分科会では、▼地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟とを「緩やかに統合」し、多くの病院が地域包括医療・ケア病棟に参加できるような環境を整えてはどうか(鳥海弥寿雄委員:東京慈恵会医科大学前医療保険指導室室長)▼同じ【地域包括医療病棟】であっても、外科系(整形外科など)主体の病院、内科系主体の病院などで状況が異なる。そうした点も分析すべき(牧野憲一委員:旭川赤十字病院特別顧問・名誉院長、日本病院会副会長)▼投下する医療資源が異なるのであれば、それに見合うように評価も変えていく必要がある。詳細な分析が待たれる(小池創一委員:自治医科大学地域医療学センター医療政策・管理学部門教授)—などの声が出ています。

地域包括医療病棟の届け出の促進に向けて、施設基準の在り方をどう考えるべきか

ところで上述のように、2040年頃にかけて高齢化がさらに進展し(高齢者の「数」そのものは大きく増えないが、医療・介護の複合ニーズを持つ「85歳以上高齢者の割合」が高まっていく)、高齢の救急搬送患者が増加していく中では、【地域包括医療病棟】の重要性はますます高まっていくと考えられます(少なくとも、【地域包括医療病棟】の「機能」(高齢救急患者に包括対応できる機能)の重要性に疑う余地はない)。

しかし、地域包括医療病棟の届け出意向を見ると「極めて低調」であり、その背景には施設基準(常勤のリハビリスタッフ配置、自院の一般病棟からの転棟患者割合5%未満、休日を含めたリハビリ提供体制など)のクリアが難しいことなどがあるようです。

地域包括医療病棟の届け出意向(入院・外来医療分科会(1)10 250613)

地域包括医療病棟の施設基準におけるハードル(入院・外来医療分科会(1)11 250613)



この点にも関連して、上述のように「急性期病棟とのケアミクスをやめれば、自院の転棟患者割合5%未満要件で悩むことはなくなる」と指摘する声も出ている点に留意が必要でしょう。



また、【地域包括医療病棟】の施設基準のうち「ADL低下患者割合5%未満」の厳しさを指摘する声も小さくありません(上述の施設基準のクリアが難しいハードル3項目に次ぐものである)。1病棟が40床とすると、ADL低下者が2人現れてしまえば「5%未満要件」を満たせなくなってしまいます。この点について「外科系疾患で入院し手術を行った場合には、ADL低下が強く予想される。とすればADL低下5%未満をクリアするために『外科系患者を忌避する』ケースも出かねない」との指摘があります。

他方、【地域包括医療病棟】では「平均在院日数21日以内」との施設基準もあります。この点「高齢者はどうしても入院期間が長期化しがちである。平均在院日数要件をクリアするために『高齢患者の入院を忌避する』ケースが出るのではないか」と皮肉を込めて指摘する識者もおられます。

高齢になるとどうしても入院期間が長期化してしまう(入院・外来医療分科会(1)12 250613)



このため一部の意地悪な識者は「高齢の救急患者を受け入れるために設けた【地域包括医療病棟】であるが、施設基準クリアのためには高齢の救急患者は避けたほうが良いという、本末転倒な状況にもなりかねない」と冗談交じりにコメントしています。

極端なコメントですが、こうした点も参考に今後「施設基準の在り方」を考えていく必要があるでしょう。

ただし、ADL低下患者5%未満・平均在院日数21日以内などの施設基準は、「高齢者が急性期病棟に長期入院した場合、ADL低下・筋力低下が生じ、要介護度の悪化、寝たきりにつながりやすい」ことを防止するために盛り込まれたという点を忘れてはいけません。

つまり、安易に施設基準を緩和すれば「地域包括医療病棟の届け出病院は増えたが、創設目的である『ADLの低下・寝たきりなどの防止』という使命を果たせなくなってしまう」という、同じく本末転倒な状況に陥ってしまうのです。

「ADLの低下・寝たきりなどの防止」という使命と、「届け出病院・病棟の増加」とのバランスを考慮しながら、施設基準の見直し論議を進めていくことが重要でしょう。



なおADLの変化について厚労省は、▼誤嚥性肺炎や心不全では、整形外科系の症例と比較し、入院期間中のADLの改善幅は小さい▼病棟の種類による違いは大きくない—とのデータを示しています。

地域包括医療病棟等における疾患とADL変化との関係(DPC14桁分類)(入院・外来医療分科会(1)13 250613)



こうしたデータも踏まえて入院・外来医療分科会では、▼「患者の状態の違い」が大きなために、「病棟間の違い」が見えなくなっている可能性もある。より詳しくADL変化の状況を見ていく必要がある(牧野委員)▼疾患によってADLの変化に特徴があることが伺える、病棟ごとの疾患構成なども踏まえた分析に期待したい(小池委員)▼ADLが低下しやすい手術(膝の手術など)もあり、疾患特性も踏まえて施設基準(ここではADL低下患者割合5%)の見直しを考えるべき(津留委員)—などの意見が出されました。

この点については、地域包括医療病棟の施設基準にかかる「経過措置」の状況も踏まえた検討が必要でしょう。



このほか、▼【リハビリテーション・栄養・口腔連携加算】の届け出はわずか11%にとどまっており、その背景には加算点数の低さ(1日につき80点)がある点を考慮してほしい(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会副会長、関連記事はこちらこちら)▼地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟とで医療専門職の配置状況に差があり、背景・理由などを深堀していくべき(牧野委員、井川委員)▼救急搬送患者を非常に多く受け入れている地域包括医療病棟などもあり、この地域貢献度合いの評価も検討すべき(今村委員)—などの意見も出ています。

地域包括医療病棟のリハビリ・栄養・口腔連携加算の状況(DPC14桁分類)(入院・外来医療分科会(1)14 250613)

地域包括医療病棟等の救急受け入れ状況(入院・外来医療分科会(1)15 250613)



こうした意見・提案を踏まえて更なる分析を進め、2026年度診療報酬改定に向けた議論が深められます。



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