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0617ミニセミナーGemMed塾

物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、窮状を打破するため「診療報酬も含めた経営支援策」を急ぎ実施せよ—九都県市首脳会議

2025.5.16.(金)

昨今の物価・人件費等の急騰に対応できるよう、診療報酬による「病院経営維持」に向けた対応が必要である—。

また、診療報酬による対応が行われるまでの「つなぎの支援措置」や、「医療機関の経営上の工夫」を可能とする規制緩和などの検討すべきである—。

埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長で構成される「九都県市首脳会議」(以下、首脳会議)が5月8日、「病院の経営危機への対応について」の要望を行いました(首脳会議のサイトはこちら)。

医療機関の経営上の工夫を可能とするような規制緩和も検討せよ

Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の6病院団体による調査で「病院経営は危機に瀕しており、いつ何時、地域の病院が突然なくなる(倒産する)可能性もある」状況が分かりました。例えば、2024年度診療報酬改定の前(2023年6-11月)・後(2024年6-11月)で比較すると、医業赤字病院は64.8%から69.0%に増加し、各種補助金を含めた経常赤字病院は50.8%から61.2%に増加していることなどが明らかになっています。

赤字病院・黒字病院の状況(6病院団体調査3 250310)



保険医療機関等の収益の大部分を占める「診療報酬」は公定価格であるため、一般企業のように「物価や人件費が高騰し経営が厳しくなっているので、サービス価格(診療報酬)を引き上げて、コスト増を吸収しよう」と個々の医療機関等が行動することはできません。物価・人件費が急騰する中では「診療報酬等の引き上げによってコスト増分を補填」することが必要不可欠となります。

首脳会議でも、この点を重く見て▼とりわけ病院は、提供する医療内容や施設規模の大きさから、物価・賃金の上昇に見合った適切な診療報酬が設定されなければ、経営に与える影響が非常に大きい▼中でも一都三県(つまり都市部)の物価水準は総務省の2023年消費者物価地域差指数によれば、いずれも全国平均以上となっており、「都市部の病院への影響」は甚大である▼上記の病院団体調査では「救急医療を担う急性期病院を中心に、患者が増加しても赤字が拡大してしまう」など深刻な経営危機に面している▼国も補正予算を組むほか、2025年4月には「入院時の食事基準額を1食当たり20円アップしている」が、関係団体から不十分であるとの声がある—ことを強調。

こうした状況を放置すれば地域の医療提供体制が崩壊し、結果、その不利益は地域住民が被ることになります。

そこで首脳会議では、▼診療報酬にしっかりと物価・賃金の上昇率を加味すべきであり、社会保障予算に関する財政フレームの見直しを行い「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取扱いを改めることが必要▼医療法人では収益業務の実施が制限されているため、診療報酬が経営に与える影響が非常に大きく、各医療機関の創意工夫による経営改善にも限界があるため、「附帯業務として実施できる事業の拡大」などの規制緩和をする必要がある—と進言するとともに、次のような対応を講じることを福岡厚労相に強く要請しました。

(1) 直近の病院の経営状況を考慮し、「地域医療を守るための診療報酬改定」を速やかに実施する
(2) 診療報酬体制について、今後も予想される「物価・賃金の上昇に迅速かつ適切に対応できる仕組み」を導入する
(3) 診療報酬等の更なる改定が行われるまでの間、「その代替としての国から直接の補助や新たな交付金の創設などにより、物価水準や医療資源等の地域の実情も考慮した緊急支援」を行う
(4) 持続的かつ安定した医療の提供に向けて、「病院が患者に求めることができる費用」や「医療法人が実施できる事業の範囲」など、病院の経営安定化に資する規制緩和等についても検討する



病院団体の要望と大きく重複する部分もあり、自治体レベルでは政務サイドにも「病院経営の厳しさ」の認識が広まってきていると考えられます(関連記事はこちら)。今後の政府の動きに注目が集まります。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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