入院時の食事に係る患者負担を2025年度から「20円」アップ、ただし低所得者では「10円増」「据え置き」の配慮―厚労省
2025.1.6.(月)
食材費が依然高騰を続ける中、入院時の食事に係る患者負担を2025年度から「20円」アップしてはどうか—。
ただし低所得者では「据え置き」(住民税非課税世帯の70歳以上で、所得が一定の基準以下(前年の公的年金収入が80万円以下など))、あるいは「10円増」(それ以外の住民税非課税世帯)といった配慮を行ってはどうか(配慮分は医療保険財政で負担する)―。
厚生労働省が12月27日に、こうした点について国民からの意見(パブリックコメント)募集を開始しました(政府のパブコメサイトはこちら(改正概要)とこちら(意見提出方法等))。1月26日まで募集しています。
この結果、2025年度から医療機関(病院・有床診療所)における入院時の食事療養費(医療機関が得られる金額)は1食あたり、現在の670円から「690円」となる見込みです。
福岡厚労相・加藤財務相の折衝により、入院時の食費基準額引き上げ方針を決定
Gem Medで報じているとおり、昨年(2024年)12月25日に福岡資麿厚生労働大臣と加藤勝信財務大臣が来年度(2025年度)の予算案編成に向けて折衝を行い、(1)入院時の食事基準額を20円引き上げる(2)口腔機能指導・歯科技工士との連携に係る加算へ上乗せを行う(3)服薬指導に係る加算への上乗せを行う―方針を決定しました。
また、入院時の食費療養費は▼患者負担(食材費・調理費)▼保険給付(栄養管理分)—に分解でき(医療機関はこの合計額を取得できる)ること、今般、「食材費の高騰」を踏まえて食事療養費の引き上げを行うことから、12月26日の社会保障審議会・医療保険部会では、▼20円引き上げは「患者負担分の引き上げ」で対応すべきではないか▼ただし、低所得者では患者負担増に配慮が必要ではないか—との意見が多数出されています。
こうした点を踏まえて、厚労省内部で検討を進め、次のような2025年度診療報酬改定案が固められました。
【入院時の食費基準の見直し】
▽1食当たり「20円」の引き上げを行ってはどうか
▽低所得者に対して一定の配慮を行い、▼住民税非課税世帯の70歳以上で、所得が一定の基準以下(前年の公的年金収入が80万円以下など)の方は据え置き(下記x)▼それ以外の住民税非課税世帯については、1食につき10円引き上げ(下記y)—としてはどうか
●総額:医療機関に支払われる額
(現行)1食あたり(以下同)670円→(2025年4月1日から)690円(+20円)
●うち患者負担
・一般所得者
(現行)490円→(2025年4月1日から)510円(+20円)
・住民税非課税世帯であって70歳以上の所得が一定の基準以下(前年の公的年金収入が80 万円以下など、x)
(現行)230円→(2025年4月1日から)240円(+10円)
・それ以外の住民税非課税世帯(y)
(現行)110円→(2025年4月1日から)110円(据え置き)
【歯科衛生士や歯科技工士の業務の評価に関する見直し】
歯科診療所等において、より専門的な業務を行う歯科衛生士・歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、歯科衛生士・歯科技工士の業務に係る評価を見直す(【歯科衛生実地指導料】の「口腔機能指導加算」(10点)を2点引き上げる、【歯科技工士連携加算1(印象採得)】(50点)・【歯科技工士連携加算2(印象採得)】(70点)について、それぞれ10点引き上げる、関連記事はこちら)
【服薬指導の評価に関する見直し】
長期収載品の選定療養化や医薬品の供給不安下での保険薬局の各種業務負担に鑑み、服薬指導に係る評価の見直しを行う(【特定薬剤管理指導加算3】の「ロ」の点数を現在の「5点」から「10点」(+5点)へ引き上げる、関連記事はこちら)
上記見直しに対する国民からの意見は1月26日まで募集されます。その後、意見内容等も踏まえて中医協等で意見を整理し、2月上旬に告示改正などが行われ、4月1日から適用されます。
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