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物価・人件費の急騰に対応できる診療報酬の「仕組み」を創設せよ、2025年度における病院スタッフの賃上げ実態を調査—四病協

2025.5.29.(木)

来年度(2026年度)予算の概算要求に向けて、「物価・人件費の急騰に対応できる診療報酬の【仕組み】創設」の1点を福岡資麿厚生労働大臣に宛てて最重点事項として要望した—。

本年度(2025年度)における「病院スタッフの賃上げ」状況について、緊急調査を実施し、実態を明らかにする—。

5月28日に開催された四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成)の総合部会(4団体の幹部会合)で、こういった方針等が固められたことが、終了後の記者会見で、日本医療法人協会の加納繁照会長・伊藤伸一会長代行・太田圭洋から明らかにされました。

5月28日に記者会見を行った日本医療法人協会の加納繁照会長

2026年度予算概算要求に向け「物価・人件費の急騰に対応する診療報酬の仕組み」を要請

Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の6病院団体による調査で「病院経営は危機に瀕しており、いつ何時、地域の病院が突然なくなる(倒産する)可能性もある」状況が分かりました。

赤字病院・黒字病院の状況(6病院団体調査3 250310)



こうした状況から脱却するために、6病院団体と日本医師会は次のような声明を発しています。

▽医療機関の経営状況は、現在著しく逼迫しており、賃金上昇と物価高騰、医療技術革新への対応ができない。このままでは人手不足に拍車がかかり、患者に適切な医療を提供できなくなるだけではなく、ある日突然、地域から医療機関がなくなってしまう

まず補助金による機動的な対応が必要だが、直近の賃金上昇・物価高騰を踏まえれば「2026年度の次期診療報酬改定の【前】に期中改定での対応」も必要と考える

▽さらに、2026年度の次期診療報酬改定に向けて以下の2点を要望する

(1)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の廃止
→賃金上昇・物価高騰などを踏まえ、財政フレームを見直して目安対応を廃止し、別次元の対応を求める

(2)診療報酬等での賃金・物価上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入
→医療業界でも「他産業並みの賃上げ」ができるよう、賃金・物価上昇を反映できる仕組みの導入を求める



四病協では、さらに5月27日に福岡資麿厚生労働大臣へ宛てて、今夏(2025年夏)の「来年度(2026年度)予算概算要求」に向けて「物価変動および人件費高騰に対し適切に対応できる診療報酬体系の創設」の1項目を最重点事項として要望しました(医法協のサイトはこちら)。

来年度(2026年度)には診療報酬改定が予定されていますが、例えばプラス改定を行うためには「財源」が必要となり、これを年末の予算編成過程で確保しなければなりません(前回の2024年度診療報酬改定に向けた予算案に関連する記事はこちら)。

次年度予算案は、大きくは「夏の各省による概算要求」→「財務省と各省庁との折衝」→「年末の財務大臣と各省庁との最終調整(大臣折衝)」という流れで進むため、四病協では「最重点事項」として「物価・人件費の急騰に対応できる診療報酬の仕組み」構築を今般、要望したものです。

保険医療機関等の収益の大部分を占める「診療報酬」は公定価格であるため、一般企業のように「物価や人件費が高騰し経営が厳しくなっているので、サービス価格(診療報酬)を引き上げて、コスト増を吸収しよう」と個々の医療機関等が行動することはできません。物価・人件費の急騰は今後も続くと予想され、「一時の対応」にとどまらず、「物価・人件費の急騰へ対応できる【仕組み】」を創設し、安定的な病院経営の確保を図ることを求めていると言えます。

伊藤・医法協会長代行は▼安全で良質な医療を提供するための費用は診療報酬で充分に手当てすることが必要である▼現在の病院を取り巻く経営環境は、これまでにない非常に厳しい状況にあり、病院の存続自体が危機的な状況となり、地域医療の均衡が崩れ始めている—ことを重視し、物価・人件費の急騰へ対応できる仕組み創設の1本に絞って「最重点事項」として要望した旨を強調しています。

このほか、【重要要望検討事項】として(1)病院の災害面・感染対策面を含めた強靭化対策(2)職員の待遇改善により人材確保に資する予算措置(3)物価高騰に対する予算措置(4)災害や新興感染症に対する強靭化に対する予算措置(5)医療 DX 推進に対する予算措置—の5点を位置づけています。

厚生労働省や財務省がこうした要望をどう受け止めるのか注目が集まります(関連記事はこちら)。

2025年度の「病院スタッフの賃上げ」状況を、四病協幹部病院対象に緊急調査

また5月28日の四病協・総合部会では、「病院スタッフの本年度(2025年度)の賃上げ状況」に関する調査を独自に行うことも決まっています。

2024年度の診療報酬改定で【ベースアップ評価料】が創設され、▼2024年度に2.5%▼2025年度に2.0%—の賃上げが目指されています。

しかし太田・医法協副会長は「他産業がかなり大幅な賃上げを行っている中、病院は非常に厳しい状況にあり、肌感覚では『十分な賃上げを2025年度にも行えている医療機関』はそれほど多くない。このため一般企業と病院との賃金格差が広がり、これが続けばスタッフ確保が困難となり、医療提供体制の維持が難しくなる」と指摘したうえで、四病協の幹部(会長、副会長、役員、支部長クラス)が経営する病院(300施設程度)を対象に緊急調査を実施することを明確にしました。すでに調査はスタート(5月27日開始、6月5日まで)しており、なるべく早い時期(早ければ6月上旬)に調査結果が明らかにされます(四病協の全会員病院を対象とする病院経営定期調査でも2025年度の賃上げ状況が調べられる、その結果は今秋(2025年秋)に明らかとなる)。

調査では、「2025年度にスタッフの賃上げを行ったか否か」(2024年度に2025年度分も含めて賃上げをすることがベースアップ評価料の中で認められている)、「賞与支給の状況」、「賃上げ率」、「賃上げ促進税制の活用状況」などを調べます。

今後の2026年度診療報酬改定論議にさらに注目が集まります。



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