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免疫チェックポイント阻害薬の作用に関与する新たな腸内細菌(YB328株)を同定、次世代のがん治療法への応用に期待—国がん他

2025.7.17.(木)

▼経口投与された腸内細菌(新たに同定されたYB328株)が、腸とは離れたがん組織にも免疫効果を発揮する▼非炎症性のがんでも、より高い反応性を持つCD8陽性T細胞の誘導が可能になる可能性がある▼免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい患者でも、YB328株投与で腸内細菌叢の構成が変化し、免疫チェックポイント阻害薬に反応しやすい腸内環境へと整える可能性がある—。

国立がん研究センター、名古屋大学、京都大学、大阪大学、理化学研究所、産業技術総合研究所の研究グループが7月15日に、こうした研究成果を公表しました(国がんのサイトはこちらこちら)。

「YB328株」が、がん免疫応答を高める新たな経口アジュバント(免疫賦活化剤)として、次世代のがん治療法へ応用されることに期待が集まります。

若年発症の肺がん、生殖細胞系列病的バリアントにも注視して診療することが重要

がんに対して「免疫チェックポイント阻害薬」(ICI、例えばオプジーボやキイトルーダなど)を用いる治療法が、さまざまながん種に対して標準治療の1つとして広く実施されてきています。

現在、「ICIと他の薬剤を組み合わせた免疫複合治療」も一般的に実施されていますが、過半数の患者では十分な治療効果が得られず、また長期間にわたり効果が持続するケースは20%程度にとどまっているのが現状です。

治療効果の差を生む重要な要因の1つとして「活性化したCD8陽性T細胞(とくにPD-1陽性CD8陽性T細胞)」が、がん組織内にどれだけ存在しているかがあげられます。最近の研究では「がん組織の免疫環境の違いによりICIの効果に大きな差が生じる」、具体的には▼炎症性のがんではCD8陽性T細胞が多く集積し、ICIが効果を示しやすい▼非炎症性のがんではこれらのT細胞が少なく、ICIの効果が得られにくい—という傾向が明らかになってきています。

また、近年の研究では「腸内細菌がどれだけ多様か、特定の菌を保有しているかどうか」が、ICIを用いたがん治療の効果を左右することが多数報告されています。

そこで研究グループでは「腸に存在する細菌が、なぜ腸以外の臓器に発生したがん組織の免疫状態にまで影響を及ぼすのか、どのように活性化CD8陽性T細胞の存在量を変化させるのか」に着目した研究を実施し、次のような知見を得ています。

(1)ICIの効果に関わる腸内細菌の特徴を明確化
→ICI治療奏効例では「ルミノコッカス科」細菌が増加している
▽非小細胞肺がん・胃がん(計50症例)を対象に、ICI(抗PD-1抗体)の効果と腸内細菌叢との関係について解析したところ、▼治療に奏効した患者群ではルミノコッカス科(Ruminococcaceae)に属する細菌が顕著に増加している▼治療が奏効しなかった患者群ではバクテロイデス科(Bacteroidaceae)の細菌が有意に多く存在している—ことが明らかになった

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究1



▽ルミノコッカス科細菌の保菌率が高い患者は、低い患者に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に長かった
▽バクテロイデス科の保菌率が高い患者は無増悪生存期間(PFS)が短い傾向にあった

▽ルミノコッカス科細菌の保菌率が高い患者ほど、PD-1陽性CD8陽性T細胞の腫瘍内浸潤頻度が高かった

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究2



(2)ICIの効果に関与する新たな腸内細菌「YB328」を発見
→「YB328株」が樹状細胞の活性化を介してPD-1陽性CD8陽性T細胞の浸潤を促し、腸内環境を「免疫応答に有利な状態」へと変化させ、抗腫瘍免疫を強化している可能性あり
▽ICI(抗PD-1抗体)の奏効例の便から、これまでに報告のない新規細菌株「YB328」の単離および培養に成功した
▽電子顕微鏡による観察では「YB328株が膜小胞を多数分泌している」ことが確認され、免疫活性化に関与する可能性が示唆された
▽抗生剤で腸内細菌を除去したマウスに「YB328株」とICI(抗PD-1抗体)を併用投与したところ、「YB328株を投与したマウス群」でのみ腫瘍縮小効果が認められた

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究3



▽「YB328株を投与したマウス」では、腸管内のPD-1陽性CD8陽性T細胞が有意に増加し、加えて樹状細胞の活性化マーカー(CD86およびMHC-I)の発現が増加した

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究4



▽T細胞受容体(TCR)のレパートリー解析では、「YB328投与群」でより多様なTCRレパートリーが誘導されている



(3)YB328株は樹状細胞の分化・活性化を促進し、T細胞応答を高めることを確認
→「YB328株」が自然免疫細胞である樹状細胞を高効率に活性化し、T細胞応答の質と量の両面において強化する能力を持つ可能性がある

▽「YB328株」で骨髄由来の樹状細胞(BMDC)を刺激した場合に、とくに樹状細胞の分化マーカーであるCD86の発現が上昇した
▽「YB328株」刺激によって、抗原提示機能やT細胞の遊走を促進するサイトカインである「IL-12p70」や「CXCL9」の産生が顕著に亢進する

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究5



▽「YB328株」で刺激された骨髄由来の樹状細胞(BMDC)は、より多くの樹状突起を形成し、OVA特異的T細胞との相互作用が長時間維持された

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究6



(4)YB328株はCD103陽性樹状細胞を誘導・活性化し、その抗腫瘍効果にToll様受容体(TLR)シグナルが不可欠であることを解明
▽網羅的な遺伝子発現解析の結果、「YB328株」刺激群において、Batf3やIrf8など、conventionaltype 1 dendritic cells(cDC1;CD103陽性樹状細胞)の分化誘導に関わる特異的な転写因子の発現が顕著に亢進していた(cDC1はCD8陽性T細胞の活性化に関わることが知られている)
▽これらの変化はタンパク質レベルでの発現や前駆細胞の誘導でも確認された

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究8



▽「YB328株」によって活性化された樹状細胞において、とくに高発現していた遺伝子群に注目したところ「複数のToll様受容体(TLRs)の発現が増加している」ことが分かった(CD103陽性樹状細胞の活性化にはTLRシグナルが重要な役割を果たしていることが示唆された)

腸内細菌の抗腫瘍効果に関する研究9



(5)YB328株が誘導するCD103陽性樹状細胞の全身分布とその動態の可視化
→「YB328株」が、腸内で活性化されたCD103陽性樹状細胞を誘導し、これらの細胞がリンパ組織や腫瘍部位へと移動することで抗腫瘍免疫応答を強化していることが明らかになった
▽「YB328株」で治療したマウスにおいて、粘膜固有層、パイエル板、所属リンパ節、腫瘍内で、CD103陽性樹状細胞の浸潤が有意に増加し、各組織においてCD103陰性のミエロイド細胞の増加は認められなかった
▽「YB328株」経口投与したマウスでは、CD103陽性樹状細胞が所属リンパ節、腫瘍内で有意に増加していた



これらの結果から、▼YB328株を経口投与する→▼腸内でCD103陽性樹状細胞が誘導・活性化される→▼活性化された樹状細胞が腫瘍局所に移動し、CD8陽性T細胞の活性化を促進する→抗腫瘍効果が強化される—ことが明らかになりました。さらに、こうした「マウスで得られた知見」をヒト腫瘍組織で検証したところ、「YB328株の保菌率と免疫細胞浸潤とが関連する」ことが確認されています。

研究グループでは、▼経口投与された腸内細菌が、腸とは離れたがん組織にも免疫効果を発揮する仕組みが明らかになった▼非炎症性のがんでも、より高い反応性を持つCD8陽性T細胞の誘導が可能になる可能性がある▼免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい患者でも、YB328株投与で腸内細菌叢の構成が変化し、免疫チェックポイント阻害薬に反応しやすい腸内環境へと整える可能性がある—と分析。

YB328株は、日本人のおよそ20%が自然に保菌している菌株であり、「安全な菌」と考えられます。

「YB328株」が、がん免疫応答を高める新たな経口アジュバント(免疫賦活化剤)として、次世代のがん治療法へ応用されることに期待が集まります。



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