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第4期がん対策推進基本計画案を取りまとめ!全国民でがんを克服し、誰ひとり取り残さぬ社会の実現目指す!—がん対策推進協議会

2022.12.8.(木)

がん対策推進協議会が12月7日、新たな「がん対策推進基本計画」(第4期計画)を取りまとめました。

委員から「こうした点も考慮してはどうか」との提案が数多くなされており、土岐祐一郎会長(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授、日本癌治療学会理事長)と厚生労働省とで文言調整を実施。その後、パブリックコメント(国民からの意見)を踏まえたうえで、本年度中(2023年3月まで)に閣議決定される予定です。

●がん対策推進基本計画(案)はこちら

予防・医療・共生・これらを支える基盤整備の4本柱を立て、施策を推進

我が国のがん対策は、6年を1期とする「がん対策推進基本計画」をベースに進められます。2024年度から、新たな「第4期がん対策基本計画」がスタートするため、協議会は「年内(2022年12月まで)の意見とりまとめ」に向けて、非常にタイトな日程の中で精力的な議論を進めてきました。

【これまでの協議会論議に関する記事】
第4期がん対策推進基本計画の素案示される!がんと診断されたときからの手厚い緩和ケア提供を目指せ!—がん対策推進協議会
がんと診断されたときから手厚い緩和ケアを提供!ネット情報の中には「不正確で有害ながん情報」も少なくない!—がん対策推進協議会
がん診療や相談支援に携わる人材の不足・偏在の解消が急務、D to P with D等も含めた総合的対策が必要不可欠—がん対策推進協議会(2)
がん医療体制の均てん化はもちろん、機能を踏まえた集約化も推進!正しく分かりやすい情報提供を推進!—がん対策推進協議会(1)
がん医療充実に向け、支持療法の均てん化、希少がん対策全国ネットワーク構築、小児がん治療薬開発などが重要—がん対策推進協議会
がん医療の地域・病院間格差是正などを進めていくが、「適切な目標・評価指標設定」のための時間はわずか4か月—がん対策推進協議会



11月11日の協議会には、厚生労働省から、これまでの議論を踏まえた「第4期がん対策推進基本計画」(案)が提示され、同日・11月30日・12月7日の3回の会合で文言調整などを行いました。

注目される「全体目標」について、厚労省は「「誰もががんとともに自分らしく生きられるよう、全ての国民でがんの克服を目指す」とのスローガンを掲げました。しかし、「自分らしく」という考え方は重要だが、患者は医療や各種制度の知識に乏しいことから「必ずしも最善の選択に繋がらない可能性」もあるとの指摘が、患者・医療提供者双方の立場で議論に参画する樋口麻衣子委員(富山AYA世代がん患者会Colors代表)らから出されるとともに、「よりシンプルで分かりやすいスローガンが好ましい」との意見が出ています。

この点、「がん死亡率減、患者のQOL維持向上、がんに関する格差の縮小を目指す」(久村和穂委員:金沢医科大学医学部公衆衛生学非常勤講師、石川県がん安心生活サポートハウスソーシャルワーカー、日本サイコオンコロジー学会代議員)あるいは「すべての国民でがんを克服し、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指す」(中釜斉会長代理:国立がん研究センター理事長)などの提案も出ており、今後、土岐会長と厚労省でさらに調整が行われます。中釜会長代理提案に賛同する声が複数でています。

全体目標の下に、▼科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実▼患者本位で持続可能な がん医療の提供▼がんとともに尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築—という分野別目標が掲げられています。

また計画の骨格は、第3期計画を踏襲し(1)がん予防(生活習慣改善などの1次予防、検診による2次予防)(2)がん医療(3)がんとの共生(4)(1)から(3)を支える「基盤」整備—の4本柱となっています。

このうち(2)の「がん医療」に焦点を合わせると、例えば次のような取り組みを進めることが明らかにされています。

【医療提供体制の均てん化・集約化】
▽国・都道府県は、がん医療が高度化する中で引き続き質の高いがん医療を提供するため、地域の実情に応じ「均てん化を推進するとともに、拠点病院等の役割分担を踏まえた集約化」を推進する。その際、国は都道府県がん診療連携協議会等に対し「他の地域や医療機関との比較が可能となるような検討に必要なデータ提供」などの技術的支援を行う

▽国・都道府県は、感染症蔓延や災害等の状況下でも必要ながん医療を提供できるよう、▼診療機能の役割分担▼各施設が協力した人材育成や応援体制の構築—など「地域の実情に応じた連携体制を整備する取り組み」を平時から推進する

【がんゲノム医療】
▽国は、がんゲノム医療をより一層推進する観点から「がんゲノム医療中核拠点病院等を中心とした医療提供体制の整備」などを引き続き推進するとともに、関係学会等と連携し「がん遺伝子パネル検査等の更なる有効性に係る科学的根拠の収集」に引き続き取り組む

【手術療法】
▽国・都道府県は、患者の状況に応じた適切かつ安全な手術療法を受けられるよう、標準的治療の提供に加え、「科学的根拠に基づきロボット支援下手術を含む鏡視下手術などの高度な手術療法の提供」について医療機関間の役割分担の明確化・連携体制の整備等の取り組みを進める

【放射線療法】
▽国・都道府県は、患者の状況に応じた適切な放射線療法を受けられるよう、標準的治療の提供に加え、「科学的根拠に基づく高度な放射線療法の提供」について医療機関間の役割分担の明確化・連携体制の整備等の取り組みを進める

▽国は、関係学会等と連携し、粒子線治療、核医学治療等の「高度な放射線療法の提供体制の在り方」を検討する

【薬物療法】
▽国・都道府県は、患者の状況に応じた適切かつ安全な薬物療法を受けられるよう、標準的治療の提供に加え、一定のエビデンスレベルが確保された「高度な薬物療法の提供」について医療機関間の役割分担の明確化・連携体制の整備等の取り組みを進める

▽国は、国立がん研究センターや関係学会と連携し、国民が、薬物療法等に関する正しい情報を得ることができるよう「科学的根拠に基づく治療法に関する情報提供・普及啓発」を推進する

【チーム医療の推進】
▽拠点病院等は、多職種連携をさらに推進する観点から「拠点病院等におけるチ ーム医療の提供体制の整備」を進めるとともに、都道府県がん診療連携協議会において「地域の医療機関と議論を行い、拠点病院等と地域の医療機関との連携体制」の整備に取り組む

▽拠点病院等は、院内や地域の歯科医師、歯科衛生士等と連携し医科歯科連携によるがん患者の口腔の管理の推進に引き続き取り組む

【がんリハビリ】
▽国は、引き続き 関係団体と連携し、がんのリハビリテーション研修を実施するとともに、研修内容の見直しについて検討する

▽国・都道府県は、研修を受講した医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の拠点病院等への配置を推進し、入院に加え外来、在宅においても効果的・継続的ながんリハビリ提供体制の整備を推進する

【支持療法】
▽国は、患者が治療に伴う副作用・合併症・後遺症への見通しを持ち、身体的苦痛や外見の変化等があった際に容易に相談できるよう「多職種による相談支援体制の整備」「医療従事者への研修の実施」などを推進する

▽国は、支持療法の更なる充実に向けて実態把握を行うとともに、科学的根拠に基づく支持療法が実施されるよう関係団体等と連携し「専門的なケアが受けられる体制」の整備等を推進する

【緩和ケアの提供】
▽国は、拠点病院等を中心とした医療機関において、がん診療に携わる全ての医療従事者により、地域の実情に応じて▼がん患者の身体的苦痛▼がん患者や家族等の精神心理的苦痛▼社会的な問題—などを把握し、個別状況に応じた適切な対応が診断時から一貫して行われる体制の整備を推進する

▽特に「がんの診断時」は、がん患者・家族等にとって診断による衝撃への対応や今後の治療・生活への備えが必要となる重要な時期であることを踏まえ、精神心理的苦痛や社会的苦痛に対する適切な支援が全ての医療従事者により提供され、また、必要に応じて緩和ケアチームとの速やかな連携が図られるよう、 医療従事者への普及啓発策等を含め、必要な体制の整備を推進する

▽国は、がん患者が望んだ場所で過ごすことができるよう、拠点病院等を中心に地域医療機関や在宅療養支援診療所等の「医療・介護を担う機関と連携した、在宅を含めた地域における緩和ケア提供体制」の整備を推進する

▽拠点病院等は、地域の医療従事者も含めた緩和ケアに関する研修を定期的に開催するとともに、地域におけるがん診療や在宅医療に携わる医療機関、関係団体、地方公共団体と連携し、専門的な疼痛治療などの緩和ケアに係る普及啓発・実施体制の整備を進める

▽国は、入院だけでなく外来等における緩和ケアの充実に向け、専門的な人材の配置等も含め検討する

▽国は、緩和ケアチームにより提供されるケアの質の向上のため「専門的な緩和ケアの質の評価等の方策」について研究を行う

▽国は、拠点病院等「以外」の医療機関における緩和ケアの充実に向けて、緩和ケア提供体制の実態や課題等を把握するための調査・研究を行う

▽拠点病院等における治療が終了した後の患者について、望んだ場所で適切な治療やケア が受けられるように、▼他院への転院▼在宅医療への移行—なども含め「終末期医療の提供の場や療養場所の決定に至る意思決定、これらでの終末期医療の実態」などについて研究を行い、質の向上について検討する

【妊孕性温存療法】
▽国は、適切ながん・生殖医療の提供を推進するため、がん医療と生殖医療の連携の下、がん治療が妊孕性に与える影響に関する説明と、妊孕性温存療法・がん治療後の生殖補助医療に関する情報提供、意思決定の支援が個々の患者の状態に応じて適切に行われるよう、人材育成等の体制整備を推進するとともに、研究促進事業を通じたエビデンス創出に引き続き取り組む

【希少がん・難治がん対策】
▽国・都道府県は、患者・家族等への情報提供の更なる推進のため▼拠点病院等における診療実績▼医療機関間の連携体制等—について分かりやすい情報提供を推進する

▽国は、希少がん患者・難治がん患者の、高度かつ専門的な医療へのアクセシビリティを向上させるため、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会における地域の実情を踏まえた議論を推進し、拠点病院等の役割分担に基づく医療機関間の連携体制の整備を推進する

▽国は、希少がんについて、適切な診断に基づく治療を提供するため「病理診断に係る希少がん中央機関と拠点病院等との連携体制の整備」を引き続き推進する

▽国は、希少がん・難治がんの診断・治療法開発のため、希少がん中央機関、拠点病院等、関係学会、企業等と連携した研究を引き続き推進する

▽国は、関係学会等と連携した「診療ガイドライン」の充実を図るとともに、希少がん・難治がん領域における薬剤アクセスの改善に向けて課題を整理し、対応方策を検討する

【小児がん、AYA世代のがん対策】
▽国は、小児がん拠点病院等と拠点病院等や地域医療機関等との連携を含め、地域の実情に応じた小児・AYA世代のがん医療提供体制の整備を推進する。また、小児がん拠点病院連絡協議会における「地域ブロックを超えた連携体制」の整備に向けた議論を推進する

▽小児がん拠点病院等は、自施設の診療実績、診療機能や他医療機関との連携体制等について分かりやすい情報提供を推進する

▽国は、長期フォローアップの更なる推進のため、小児がん経験者の晩期合併症について実態把握を行うとともに、小児がん拠点病院等と拠点病院等、地域医療機関、かかりつけ医等の連携を含め、地域の実情に応じた小児・AYA世代のがん患者の長期フォローアップの在り方を検討する

▽国は、小児がん領域における薬剤アクセスの改善に向けて、治験の実施(国際共同治験への参加を含む)を促進する方策を検討するとともに、小児がん中央機関、小児がん拠点病院等、関係学会、企業等と連携した研究開発を推進する

【高齢者のがん対策】
▽高齢のがん患者が、▼複数の慢性疾患を有している▼介護事業所等に入居している—などの状況に応じた適切ながん医療を受けられるよう、拠点病院等は地域医療機関、介護事業所等との連携体制の整備を進める

▽国は、高齢のがん患者に対する適切な治療・ケア提供を推進するため、関係団体等と連携し「ガイドラインの充実」を推進するとともに、高齢のがん患者に対するがん医療の実態把握を行う

▽国は、高齢のがん患者が適切な意思決定に基づき治療等を受けられるよう「高齢のがん患者、家族等の意思決定支援」に係る取り組みを推進する。

【新規医薬品、医療機器、医療技術の速やかな医療実装】
▽国は、拠点病院等における臨床研究等の推進に引き続き取り組むとともに、分かりやすい情報提供の在り方について検討し、拠点病院等に対し周知する

▽拠点病院等は、患者に対し臨床研究等の適切な実施・情報提供を行うとともに、必要に応じて適切な医療機関への紹介を行う

▽国は、▼先進医療▼患者申出療養制度—などの評価療養、先駆的医薬品等の指定制度等の既存制度を活用しつつ、がん研究の成果の速やかな実装を科学的根拠に基づき、引き続き推進する

▽国は、がん治療薬に係る薬剤アクセスの改善に向けて課題を整理し、対応方策を検討する



こうした取り組みの方向・内容に反対意見は出ていませんが、▼患者・家族は1日も早い新規治療技術の臨床実装を望んでおり、開発促進を国が強力にサポートしてほしい(谷島雄 一郎委員:ダカラコソクリエイト発起人・世話人、カラクリLab.代表)▼放射線療法について「標準治療の安全な提供体制の在り方」も検討していってほしい(茂松直之委員:慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授、日本放射線腫瘍学会前理事長)▼情報提供について、国が正しい内容を分かりやすくタイムリーに示すサイトなどを設けてほしい(前田留里委員:京都ワーキング・サバイバー理事長、全国がん患者団体連合会理事)▼地域間・病院間の格差是正に向け、国には、データだけでなく、好事例情報の提供もお願いしたい(大井賢一委員:がんサポートコミュニティ事務局長)—などの前向きな提案が出ています。

今後、土岐土会長と厚労省で、どのように修正すべきかの最終調整が行われます。

また、取り組みの効果を評価する「指標」についても委員からさまざまな提案が出ています。ただし、指標には、「容易に正確に経時的に把握できるものでなければならない」「質にバラつきがあてはならない」「指標化することに合理性がなければならない」などの制約があります。把握が難しければ指標に設定する意味がなく、データの質にバラつきがあれば指標を活用した分析・評価ができず、また不合理なものでれば今後の施策が誤った方向に進んでしまうためです。このため「指標の設定」には極めて慎重な検討が必要となり、厚労省で専門家や自治体を交えて精査が行われます。



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