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がん対策基本計画の中間評価まとまる、病院間格差是正や正しい情報提供などが今後の重要課題―がん対策推進協議会

2022.5.6.(金)

厚生労働省のがん対策推進協議会が4月28日、第3期がん対策推進基本計画の「中間評価」報告書を大枠で取りまとめました。一部修正を加え、近く厚労省ホームページで公開される予定です。

今後のがん対策では、「地域間・医療機関間の格差是正」や「正しい情報提供」などを、これまで以上に重視していく方向が明確になってきています。

関連して、6月後半からは「第4期がん対策指針基本計画」策定論議に入る考えが山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)から示されました。

がん検診の受診率向上に向けて、次なる一手は何か

国のがん対策は、おおむね5年間を計画期間とする「がん対策推進基本計画」に沿って進められています。現在は2018-22年度を対象とした第3期基本計画に基づいた施策が動いており、計画の進捗展状況を評価し(中間評価)、次期基本計画(第4期がん対策推進基本鋭角)にこの中間評価結果を反映させることになります。

当初は2020年に中間評価を行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行により議論が遅れ、今般の取りまとめとなりました。

中間評価は、(1)全体目標(2)分野別施策(4)がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項―の3本柱について、進展捗状況や、今後さらに推進が必要な事項などを整理しています。

(1)の全体目標としては、(a)科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実(b)患者本位のがん医療の充実(c)尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築—の3項目が打ち出されました。

まず(a)科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実に関しては、▼年齢調整罹患率は減少している(2016→17年)が、「全国がん登録初年度である2016年の罹患数が過大評価されている可能性」があるため、引き続き推移の確認が必要である▼75歳未満のがんの年齢調整死亡率については着実に減少してきているが、「がん種」によって異なる傾向が見られ、がん検診受診率は上昇傾向であるものの、多くの領域で目標を達成できておらず対策を検討する必要がある—との考えをまとめました。

例えば、▼がん検診受診率は「男性の肺がん」を除いて目標値の50%を達成できていない▼コロナ感染症で受診率が落ちている(関連記事はこちら)▼たばこ、飲酒、運動習慣、食習慣などで目標と達成できていない—ことが分かっています。松田一夫委員(福井県健康管理協会副理事長日本消化器がん検診学会監事)は「職域検診について、受けたくても受けられない人への対策(例えば地域検診受診のための有給休暇取得を認めるなど)、精度管理が極めて重要である」と、土岐祐一郎委員(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授 日本癌治療学会理事長)は「がんサバイバーでも、例えば手術後にタバコを吸い始めたりしてしまう。サバイバーへのリスク周知を強化していく必要がある」などと提案しています。

なお、この4月から子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の個別接種勧奨が再開されていることを踏まえ、「今後の動向を注視していくべき」旨が強調されています。

がん医療提供体制、地域・病院間の「格差是正」も重要視点

また(b)患者本位のがん医療の充実では、「がんによる死率」(年齢調整死亡率)が減少傾向にあり、また医療提供体制の底上げが進んでいる点を評価。

しかし「地域間」「医療機関(がん診療連携拠点病院)間」で格差があること、「希少がん」「難治がん」対策に遅れがあることなどを踏まえ(関連記事はこちら)、「さらなる充実が必要」と強調しています。

がん医療に関する地域間格差・拠点病院間格差は従前からも問題視されています。現在、「拠点病院の整備指針(指定要件)見直しに向けた論議」が別検討会で進められており(関連記事はこちら(緩和ケア)こちら(小児拠点)こちら(ゲノム拠点)こちら(成人拠点)こちら(統括))、こうした視点も今後の議論で重視されることになるでしょう。指定要件見直し案は今夏(2022年7月頃)にまとめられ、来春(2023年4月)から新要件に沿った指定見直しが一斉に行われる見込みです。

また、個別事項としては「全ゲノム解析の着実な推進」「拠点病院等の間の連携強化」「がん拠点病院等以外の医療機関や在宅でのがんリハビリ充実」「支持療法体制の充実」「希少がん・難治がん対策の充実(まず評価指標の設定を急ぐ)」「小児・AYA世代がん、高齢者のがん対策の充実」「治療法(医薬品、医療機器等を含めた)の早期開発」などの重要性を指摘しています。

この点、大賀正一委員(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野教授、日本小児・血液がん学会理事長)から「がん素因」を踏まえた長期フォローの重要性が指摘されています。例えば「遺伝子変異」(特定の遺伝子を持つ人ではがんに罹患しやすい、関連記事はこちらこちら(統括))などが「がん素因」の一つとなり、ほかにもさまざまな「がん素因」が指摘されています。ただし「研究途上」の部分もあり(中釜斉委員:国立研究開発法人国立がん研究センター理事長)、中間評価にどう盛り込み、次期計画にどうつなげていくかは、今後、山口会長と厚生労働省とで文言等を検討していくことになりました。

また、遅れが指摘される希少がん・難治がん対策については「専門医との連携」を重視していくべきとの考えが、希少がん患者の代表でもある大西啓之委員(特定非営利活動法人キュアサルコーマ理事長、一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク副理事長)から要望されています。

希少がん・難治がんについては、治療はもちろん「診断」についても、「どの医療機関の、どの医師にかかればよいのか」が極めて重要であり、「専門医につなげていく」視点が今後さらに強く求められます。

第4期計画では「がんに関する正しい情報提供」が最重要テーマの1つに

さらに(c)尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築に関しては、「相談できる支援が十分であると感じているがん患者・家族の割合については増加している」点を高く評価していますが、「必ずしも十分なレベルには達していない」ことから(関連記事はこちらこちら)、「より一層の相談支援、情報提供に係る取り組みが求められる」と訴えています。この「情報」(正しい情報提供、情報の均てん化)が第4期計画において極めて重要な視点になることを山口会長は従前より強調しています。

例えば、早期に発見し、その時点で標準治療を行えば助かったかもしれない患者が、あやしげな民間療法に頼ってしまい「救える命が救えなかった」事例も少なくありません。がん患者・家族の「藁にも縋る思い」を悪用するものであり、今後「正しい情報提供」がこれまで以上に重視されることになるでしょう。

このほか、「緩和ケアの充実」「治療と仕事の両立支援」「アピアランスケアの在り方」「ライフステージに応じたがん対策の推進」などを第4期計画の中に落とし込んでいく方向も確認されています。

関連して、「小児がん拠点病院において、オンラインを活用した教育体制の充実」を求める声が三上葉子委員(東京女子医科大学病院脳神経外科家族の会「にじいろ電車」代表)らから出されています。小児がん患者は、長期間の入院を余儀なくされるケースが少なくなく「小児がん拠点病院における、患者(子ども)の教育」が重要視点の1つとなるのです。この点、現下のコロナ感染症対策の中で「オンライン会議、オンライン授業」などが飛躍的に推進されている状況なども踏まえ、「どのようにオンライン教育体制を充実していくか」を今後検討していくことになるでしょう。厚労省健康局がん・疾病対策課の中谷祐貴子課長は、この点にも関連し「コロナ感染症の拡大で中間評価議論が思うように進まなかったが、オンライン環境の整備が進むなど『ピンチをチャンスに変える』こともできるのではないか」との見解を述べています。コロナ禍で「オンライン会議、オンライン授業に対するハードルが相当程度、低くなった」状況をうまく活用することが期待されます。



なお、こうしたがん対策を進めていくためには、▼研究▼人材育成▼教育・知識の普及—といった「基盤」整備が重要です。いずれも重要な課題であり、厚労省だけでなく、文部科学省等の他省庁や大学をはじめとする研究・人材育成機関などとの連携が必要なテーマとなります。



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