Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Post Type Selectors
0715ミニセミナー病院ダッシュボードχ ZERO

岐阜県の郡上市民病院と八幡病院の再編・統合、兵庫県の済生会兵庫県病院・三田市民病院の機能再編等を国が重点支援―厚労省

2025.7.1.(火)

岐阜県の中濃構想区域において郡上市民病院、医療法人新生会八幡病院の再編・統合を、また兵庫県の神戸構想区域において済生会兵庫県病院の、同じく阪神構想区域において三田市民病院の機能再編を行うため、国が直接に財政的・技術的支援を行う—。

厚生労働省は6月27日に、こうした点を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。今後も都道府県の申請を受け付け、必要に応じて重点支援区域を設定していきます。

病院の再編・統合を、国が財政的・技術的に支援

2022年度から人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、ついに今年度(2025年度)には全員が後期高齢者となります。さらに2025年度から2040年頃にかけて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の割合が急速に高まっていきます。こうした高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、かつ1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招いてしまいます(関連記事はこちら(2023年度の市町村国保医療費は平均40万2157円であるのに対し、後期高齢者では93万1637円)。このため高齢者の増加は「医療費の増加」を招くのです(医療費は1人当たり医療費×人数で計算できる)。

このように日本全体で見ると医療ニーズが急速に増加していきますが、地域によっては「すでに高齢者を含めた人口減」が進んでおり、医療ニーズが減少に転じているところもあります。

こうした中で、「地域の医療ニーズ」と「地域の医療提供体制」とをマッチさせる「地域医療構想」の実現が大きな政策テーマになります。「医療ニーズが増加していくために、さらなる機能強化が必要である」地域もあれば、「医療ニーズが減少していくので、ベッド削減等が必要になる」地域もあるでしょう。さらに「●●年までは医療ニーズが高まるが、その後は急速な人口減で医療ニーズが減少していく」という複雑な検討を迫られる地域もあります。

そうした中、新型コロナウイルス感染症を契機に、我が国の医療提供体制においては「機能分化がまだ十分に進んでいない」という大きな課題がより明確になりました。そこで医療機能の分化・連携の強化を目指した「地域医療構想」の実現の重要性・必要性が改めて確認されています。

こうした機能改革論議等は、各地域の地域医療構想調整会議を中心に進められます。地域の特性・実情を理解した「地域医療の関係者」による議論が不可欠なことは述べるまでもないでしょう。

しかし、この「地域の議論」が難航することもあります。例えば、再編統合に向けた議論を進める中では、吸収・廃止等される側の自治体関係者や住民から「近隣に病院がなくなってしまう。我々を見捨てるのか」という反対意見が出てくることもあります。また、首長(市区町村長や知事)や県議らが「病院の建設・存続・増床などを選挙公約に掲げている」場合などには、再編・統合論議は政治的な様相を帯び、議論が一筋縄では進まなくなります。

このため厚労省は「再編・統合論議を国が重点的に支援する地域」(重点支援区域)を定め、技術的助言・財政的支援を行っています(関連記事はこちら)。もっとも「国主導」で再編・統合を進めるものではありません。地域・病院の自主性を重んじて「都道府県の申請」をベースに重点支援区域が選定されます。

厚労省では「重点支援区域の募集は随時行い、ある程度申請がまとまった段階で選定を行う」としており、今般、11回目として次の区域を選定したことを明らかにしました

【岐阜県】
▽中濃構想区域
→「郡上市民病院」と「医療法人新生会八幡病院」との再編・統合等を支援

【兵庫県】
▽神戸構想区域
→「済生会兵庫県病院」の機能再編等を支援

▽阪神構想区域
→「三田市民病院」の機能再編等を支援



重点支援区域に選定された医療機関については、上述のとおり国による▼財政的支援▼技術的支援―が受けられます(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちらこちら)。

財政的支援としては、 2021年度から制度化された「病床機能再編支援事業」による補助が受けられます(2020年度は予算事業であったが、改正医療法により2021年度から制度化)。稼働病床を1割以上減少させる場合に、将来得られたであろう利益(逸失利益)を補助するもので、「重点支援区域での病床削減 > 複数病院の合併による病床削減 > 単一病院の病床削減」という具合に補助に傾斜が設けられ、重点支援区域での複数医療機関の再編・統合に伴う病床削減では「最も手厚い補助」がなされます。

技術的支援としては、▼地域医療構想調整会議への「地域の医療事情に係るデータ提供」と「議論の場や講演会などへの国職員の出席」▼都道府県に対する「関係者と議論を行う際の資料作成支援」「議論の場や住民説明会などへの国職員の出席」「関係者の協議の場の設定」―などが行われます。



なお、重点支援区域については今後も申請が受け付けられ、選定の手順等は次のように説明されています。

▽事前に、「地域医療構想調整会議で『重点支援区域への申請』を行う旨の合意」「●●構想区域におけるA病院とB病院の再編・統合についての重点支援」に関する合意を得て、都道府県が申請を行う

▽重点支援区域には、次のような地域が対象になる
▼複数医療機関の再編・統合(ダウンサイジング、機能分化・連携、集約化、機能転換なども含む)事例である(単一医療機関のダウンサイジングは対象外)
▼再検証対象医療機関(約424の公立・公的等医療機関)以外の再編・統合も対象となる
▼複数区域にまたがる再編・統合も対象となる

▽重点支援区域として、次のような事例を優先する
▼複数の設置主体による再編・統合
▼多数の病床削減(少なくとも関係病院の総病床数の10%以上)を伴う再編・統合
▼「異なる大学病院等からの医師派遣を受けている医療機関」同士の再編・統合
▼人口規模・関係者の多さから「より困難である」と想定される再編・統合

▽重点支援区域に選定された場合には、国による直接の▼財政的支援▼技術的支援(地域医療構想調整会議への地域の医療事情に係るデータ提供や、国職員の出席など)―を受けられる



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

【関連記事】

広島県の「因島医師会病院」と「因島総合病院」との再編・統合を国が重点支援―厚労省
山形県の山形県立河北病院・寒河江市立病院など、広島県の県立広島病院・JR広島病院などの再編・統合を国が重点支援―厚労省
宮城県の「仙台赤十字病院」と「宮城県立がんセンター」との再編・統合を国が重点支援―厚労省
熊本県の「小国公立病院」と「阿蘇医療センター」の再編・統合を国が重点支援―厚労省
関門医療センター・下関医療センター・済生会下関総合病院・下関市立市民病院の再編・統合を国が重点支援―厚労省
新潟県立中央病院・柿崎病院・上越地域医療センター病院・新潟労災病院などの再編・統合を国が重点支援―厚労省
「米沢市立病院」と「三友堂病院」等、「土岐市立総合病院」と「東濃厚生病院」の再編・統合を国が重点支援―厚労省
燕労災病院や三条総合病院等、岩見沢市立総合病院と北海道中央労災病院の再編・統合などを国が重点支援―厚労省
公立刈田綜合病院とみやぎ県南中核病院病院の再編・統合など国が重点支援―厚労省
「複数医療機関の再編・統合」を国が財政・技術面で重点支援、1月中に第1回目の対象選定―厚労省

地域医療構想実現に向けて国が技術的・財政的支援を行う【モデル推進区域】、石川県「能登北部」など14区域の指定を決定—厚労省