関門医療センター・下関医療センター・済生会下関総合病院・下関市立市民病院の再編・統合を国が重点支援―厚労省
2022.4.28.(木)
山口県の下関構想区域において、▼国立病院機構関門医療センター▼地域医療機能推進機構下関医療センター▼山口県済生会下関総合病院▼下関市立市民病院—の再編・統合を進めるため、国が直接に財政的・技術的支援を行う―。
厚生労働省は4月27日に、こうした点を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。今回は第5回目の設定で、今後も都道府県の申請を受け付け、必要に応じて重点支援区域を設定していきます。
病院の再編・統合を、国が財政的・技術的に支援
今年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者に到達します。このため日本全体で見た場合、医療ニーズが急速に増加していきます。一方、地域によっては高齢者を含めた人口減が進んでおり医療ニーズが減少に転じているところもあります。こうした中では、「地域の医療ニーズ」と「地域の医療提供体制」とをマッチさせる「地域医療構想」の実現が大きな政策テーマになっています。「医療ニーズが増加していくために、さらなる機能強化が必要である」地域もあれば、「医療ニーズが減少していくので、ベッド削減等が必要になる」地域もあるでしょう。さらに「●●年までは医療ニーズが高まるが、その後は急速な人口減で医療ニーズが減少していく」という複雑な検討を迫られる地域もあります。
他方、新型コロナウイルス感染症を契機として、我が国の医療提供体制においては「機能分化が進んでいない」という大きな課題がより明確になりました。そこで医療機能の分化・連携の強化を目指した「地域医療構想」の実現の重要性・必要性が改めて確認されています。
この点、まず「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」(公立病院・公的病院等でなければ担えない機能への特化)が急務となっています。厚労省は「今年度(2022年度)・来年度(2023年度)に、民間を含めたすべての医療機関で機能再検証を行ってほしい」との考えを示していますが(関連記事はこちら)、▼地域医療構想を考えるうえでは、まず「地域の基幹病院」の機能を明確にする必要がある→▼多くの地域では公立病院等が地域医療提供体制の基幹的な役割を担っている—ことから、「公立病院・公的病院等の機能再検証」が地域において最優先課題である点に変わりはないと言えます。
こうした機能改革論議等は地域医療構想調整会議を中心に進められますが、議論が難航する地域も出てきます。例えば、再編統合に向けた議論を進める中では、吸収・廃止等される側の自治体関係者や住民から「近隣に病院がなくなってしまう。我々を見捨てるのか」という反対意見が出てくることがあるでしょう。また、首長(市区町村長や知事)や県議らが「病院の建設・存続・増床などを選挙公約に掲げている」場合などには、再編・統合論議は政治的な様相を帯び、議論が一筋縄では進まなくなります。
このため厚労省は「再編・統合論議を国が重点的に支援する地域」(重点支援区域)を定め、技術的助言・財政的支援を行っています(関連記事はこちら)。ただし「国主導」で再編・統合を進めるものではなく、地域・病院の自主性を重んじて「都道府県の申請」をベースに重点支援区域が選定されます。
厚労省では「重点支援区域の募集は随時行い、ある程度申請がまとまった段階で選定を行う」としており、今般、第5回目として次の区域を選定したことを明らかにしました(第1回選定の関連記事はこちら、第2回選定の関連記事はこちら、第3回選定の関連記事はこちら、第4回選定の関連記事はこちら)。
【山形】
▽下関構想区域
→▼国立病院機構関門医療センター▼地域医療機能推進機構下関医療センター▼山口県済生会下関総合病院▼下関市立市民病院—の再編を検討
重点支援区域に選定された医療機関については、上述のとおり国による▼財政的支援▼技術的支援―が受けられます(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
財政的支援としては、昨年度(2021年度)から制度化された「病床機能再編支援事業」による補助が受けられます(2020年度は予算事業であったが、改正医療法により2021年度から制度化されている)。稼働病床を1割以上減少させる場合に、将来得られたであろう利益(逸失利益)を補助するもので、▼重点支援区域での病床削減 > ▼複数病院の合併による病床削減 > ▼単一病院の病床削減―という具合に補助に傾斜を設けられ、重点支援区域での複数医療機関の再編・統合に伴う病床削減では「最も手厚い補助」がなされます。
技術的支援としては、▼地域医療構想調整会議への「地域の医療事情に係るデータ提供」と「議論の場や講演会などへの国職員の出席」▼都道府県に対する「関係者と議論を行う際の資料作成支援」「議論の場や住民説明会などへの国職員の出席」「関係者の協議の場の設定」―などが想定されています。
なお、重点支援区域については今後も申請が受け付けられ、選定の手順等は次のように説明されています。
▽事前に、「地域医療構想調整会議で『重点支援区域への申請』を行う旨の合意」「●●構想区域におけるA病院とB病院の再編・統合についての重点支援」に関する合意を得て、都道府県が申請を行う
▽重点支援区域には、次のような地域が対象になる
▼複数医療機関の再編・統合(ダウンサイジング、機能分化・連携、集約化、機能転換なども含む)事例である(単一医療機関のダウンサイジングは対象外)
▼再検証対象医療機関(約424の公立・公的等医療機関)以外の再編・統合も対象となる
▼複数区域にまたがる再編・統合も対象となる
▽重点支援区域として、次のような事例を優先する
▼複数の設置主体による再編・統合
▼多数の病床削減(少なくとも関係病院の総病床数の10%以上)を伴う再編・統合
▼「異なる大学病院等からの医師派遣を受けている医療機関」同士の再編・統合
▼人口規模・関係者の多さから「より困難である」と想定される再編・統合
▽重点支援区域に選定された場合には、国による直接の▼財政的支援(2020年度予算案に盛り込まれた「国費でのダウンサイジング支援」(国費84億円)を活用)▼技術的支援(地域医療構想調整会議への地域の医療事情に係るデータ提供や、国職員の出席など)―を受けられる
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