外来版「地域医療構想・機能報告制度」、「医療資源を重点的に活用する外来」の基幹医療機関を明確化―医療計画見直し検討会
2020.3.19.(木)
地域の医療機関から外来データの報告を求め、それをもとに地域ごとに「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関を明確化していく。これにより、「まず、かかりつけのクリニック等を受診し、そこから『医療資源を重点的に活用する外来』を基幹的に担う医療機関へ紹介してもらい、一定治療後にかかりつけのクリニック等に逆紹介してもらう」という外来医療の流れがより円滑になると期待される―。
3月18日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。3月13日の前回会合では「反対」意見が相次いでいましたが、制度設計に向けて議論が確実に「前進」を始めています(関連記事はこちらとこちら)。
なお、遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所長)は「入院の機能分化を目指す地域医療構想・病床機能報告制度は相当の時間をかけて関係者の理解を得ながら議論を進めてきた。4月の中間とりまとめまでに制度を固めるのは拙速である。中間とりまとめまでにどこまで議論を進め、その後、どういうスケジュール感で議論を進めるのか明確にしてほしい」と厚生労働省に指示しています。
目次
外来医療の機能分化、まず「医療資源を重点的に活用する外来」の明確化からスタート
Gem Medでお伝えしているとおり、「全世代型社会保障検討会議」が昨年(2019年)末にまとめた中間報告の「『紹介状なし外来受診患者』からの特別負担徴収義務の拡大」方向に端を発し、社会保障審議会・医療部会および検討会で「外来医療の機能分化」に向けた議論が進められています。
厚労省医政局総務課の高宮裕介企画官は、「医療資源を重点的に活用する外来について、医療機関ごとにその機能を明確化し、地域で機能分化・連携を進めていく枠組み」を提案。具体的には、次のようなイメージで、「外来版の地域医療構想」「外来機能報告制度」と言えるかもしれません。
(1)まず、「医療資源を重点的に活用する外来」の類型・範囲を明確化する
(例)▼類型1:「入院の前後」の外来(手術や1000点以上の処置などを伴う入院の前後30日間の外来)▼類型2:「高額等の医療機器・設備」を必要とする外来(外来化学療法など)▼類型3:「特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材」を必要とする外来(難病外来など)―
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(2)次いで、医療機関から「医療資源を重点的に活用する外来」の実施状況について報告を求め、実態を把握する
(例)報告については病床機能報告制度に倣い、「国がレセプトデータから『医療資源を重点的に活用する外来』実施状況を集計し、それを各医療機関に提示し、医療機関がチェックする」仕組みとすることなどが考えられる
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(3)地域の医療関係者等で協議し、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関を明確化する
(例)協議の場については、入院と外来を一体的に検討するために「地域医療構想調整会議」とすること、機能分化に向けて都道府県知事へ一定の権限を付与することなどが考えられる
重装備が必要な「医療資源を重点的に活用する外来」の類型・範囲を明確化
この(1)-(3)の枠組みについて、3月13日の前回会合では医療提供者を代表する構成員からは反対意見が多数だされましたが、3月18日の会合では、外来医療の機能分化を進めるための「あくまで1つの切り口」としてではあるものの理解を示す方向に意見が傾いてきました。▼地域の医療資源には限りがあるため、「『医療資源を重点的に活用する外来』を基幹的に担う医療機関」を明確化し、そこに医療資源を重点化・集約化していくことで資源の有効活用が可能となる点▼症例の集約化によって「医療の質の向上」が期待できる点▼明確化により「患者に分かりやすい外来医療提供体制」の構築にも資すると考えられる点―などを考慮したものと考えられるでしょう。
もっとも、(1)-(3)のそれぞれについて「修正」や「深掘り」を求める意見も多数でています。
まず(1)の「医療資源を重点的に活用する外来」の類型・範囲に関しては、城守国斗構成員(日本医師会常任理事)は「一般外来と専門外来との峻別は容易ではない。今回は『入院に連動する外来医療』(上述の類型1)に限定すべきではないか」と提案。例えば、ある専門医資格を持つ医師でも、経験等によって知識・技術に濃淡があり、かつ経年的に変化していく(医師が経験を積んでいく)ことから、「どこからが専門外来か」という線引きをするだけでも果てしない時間がかかるため、時間的制約がある中では対象を絞る必要があると城守委員は述べています。
また岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)は、「外来医療と一口に行っても、初診や再診、紹介状の有無など、さまざまな態様がある。これらを区分して、類型1・2・3の状況を見ていく必要があるのではないか。あわせて『逆紹介の実施状況』も分析していく必要がある。そうした分析の中で、『クリニック等から「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う病院に紹介し、そこで適切な治療等を行い、状態が安定した後にクリニックに逆紹介する』という流れを見ていくべきである」と提案しました。厚労省もこの提案を重視し、今後「初診・再診」「紹介状の有無(診療情報提供料I算定の有無)」などでデータを再分析する考えを示しています。
なお厚労省の高宮企画官は、「検討会で(1)の類型を固め、その後、類型の詳細を新設するワーキンググループで専門的に詰めていく」考えを示しました。例えば、城守構成員の提案に沿えば、▼「医療資源を重点的に活用する外来」を類型1の「入院の前後の外来」とすることを検討会で決定する▼「入院の前後の外来」の内容、例えば「入院前後30日間で良いのか」「手術や1000点以上の処置に限定は不要か」などをワーキンググループで詰めていく―イメージです。
外来医療データを厚労省に報告する医療機関は「病院」を中心に限定する方向
また(2)の報告制度については、対象医療機関をどう考えるかが大きな論点となります。城守構成員は「入院に連動する外来をターゲットとすれば、報告対象は必然的に『病床を持つ医療機関』となる。基本的に病院を対象とし、有床診療所についても手上げで報告を認めることが妥当」との考えを示しました。
一方、加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)や山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「いわゆる専門外来を担う重装備のクリニックは『医療資源を重点的に活用する外来』医療を提供していると言え、報告を求めるべき」と指摘。また保険者代表の本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)からは「本来であれば外来医療全体のデータが必要であるが、クリニックの負担も理解できる。当面は、クリニックは手上げで(つまり任意で)報告してもらう形としてはどうか」との意見も出ています。
さらなる議論が必要ですが、「外来を行うすべての医療機関」に報告を求めるのではなく、「病院等に限定して報告を求める」形は整ってきたと言えそうです。
国が「基幹的医療機関」の目安を示し、地域の実情に応じてそれぞれの基準を考える
さらに(3)の明確化に関しては、厚労省の高宮企画官から次のような「手法と効果」の考え方が新たに示されています。
(A)「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関を明確化するに当たり、「国で一定の基準を示す」とともに、それを参考に地域の実情を踏まえる仕組みとすることが考えられる
(B)「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関を明確化することで、地域の医療関係者間で「●●病院は、紹介患者を中心に診て、状態が安定した後に逆紹介をしてくれる医療機関である」との共通認識ができ、また患者にもそれが分かりやすくなり、自治体・保険者が「外来医療のかかり方」を住民・加入者に周知・説明しやすくなる(地域における患者の流れの円滑化)
(C)地域における患者の流れがより円滑になることで、「勤務医の外来負担の軽減」「医師働き方改革」「病院の外来患者の待ち時間の短縮」にも資する
この考え方対しても、構成員からは次のようにさまざまな意見・疑問の声が出ています。
▼「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として、新たな類型を設けるのか(城守構成員ら)
▼「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関の名称を、国民にイメージしやすいものとしなければ患者の流れは変わらない(山口構成員、本多構成員ら)
▼「医療資源を重点的に活用する外来」には、紹介状を持たない患者はかかれないこととするのか。その場合、一般外来と重装備外来をセットで行う地域密着型の病院などの外来をどう考えるのか。逆に「高度な医療を受けられる」と患者が殺到する恐れはないのか。その場合、外来機能分化は進まなくなる(田中滋構成員:埼玉県立大学理事長)
▼都市部と地方では状況が全く異なり、また基幹病院と地域密着型病院でも状況は異なる。一律に「●%以上」などの定量基準を定めれば協議が進まないのではないか(織田正道構成員:全日本病院協会副会長)
▼一定の基準を満たさなければ、「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関になれない仕組みを考えているのか(城守構成員)
これらの意見・疑問の声を踏まえて検討会で制度の枠組みを作っていくことになるため、現時点でこれらへの「明確な回答」は存在しませんが、例えば、▼「一定の基準」については、、国で「医療資源を重点的に活用する外来の実施割合が●%以上」などの数値を「目安」として示し、各地で地域の実情を踏まえて「◆%以上」に修正できることとする▼地域医療支援病院などとは別に、「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関(実施割合●%以上・◆%以上など)をグルーピングする―ことなどが考えられそうです。
この点に関連して厚労省の高宮企画官は、病床規模別に「医療資源を重点的に活用する外来」の実施状況データを提示。そこでは、例えば、全外来に占める「医療資源を重点的に活用する外来」割合は「大規模病院になるほど高くなる」ことなどが明らかになっています。
ここからは、城守構成員が以前より述べているように「『医療資源を重点的に活用する外来』機能は、病床規模と一定の相関がある」ことが伺え、冒頭に述べた「全世代型社会保障検討会議の中間報告にある『紹介状なし外来受診患者からの特別負担徴収義務の拡大』方向」とも密接に関連してきそうです(ただし、「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関が、特別負担徴収義務対象医療機関になる」とは考えにくい)。
また、「医療資源を重点的に活用する外来」の提供状況は地域によって大きく異なることが、高宮企画官の示したデータから浮彫になりました。例えば、地域医療支援病院による「医療資源を重点的に活用する外来」シェアを見ると、人口規模の小さな地域であれば、病院数が限られるために高くなります(地域医療支援病院に集中する)が、人口規模の大きな地域では、病院数が増えてくるために低くなります(多くの病院に分散する)。こうした点を踏まえると、「全国一律の基準設定」は難しいであろうことが分かります。
4月の検討会中間とりまとめ時点で、外来機能報告制度の大枠を固めたい
ところで、検討会では4月中に中間取りまとめを行い、その結果をもとに社会保障審議会の医療部会・医療保険部会等で「紹介状なし外来受診患者からの特別負担徴収義務の拡大」に関する制度設計を今夏(2020年夏)までに行うことが求められています。
この点について、遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所長)は「入院の機能分化を目指す地域医療構想・病床機能報告制度は相当の時間をかけて関係者の理解を得ながら議論を進めてきた。4月の中間とりまとめまでに『「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関を明確化する仕組み』を固めることは拙速である。中間とりまとめまでにどこまで議論を進め、その後、どういうスケジュール感で議論を進めるのか明確にしてほしい」と厚生労働省に指示しています。
厚労省医政局総務課の佐々木裕介課長は「制度の大枠(上記(1)-(3))を4月の中間取りまとめまでに固め、その後、詳細な制度設計を検討していく」旨の考えを示しており、次回以降にスケジュールが示されることになるでしょう。
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