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将来、地域医療支援病院の院長となるには「医師少数地域等での6-12か月の勤務」経験が必要に―医師需給分科会

2018.12.17.(月)

 医師偏在を是正する方策の1つとして、「医師少数地域・区域で一定期間勤務した医師を認定し、将来、医師派遣機能などを持つ地域医療支援病院等の管理者(院長)となるための要件とする」制度が2020年4月からスタートします。

 12月12日に開催された「医師需給分科会」(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)で、この制度の詳細に関する議論が本格的に始まりました。医師少数地域等での勤務期間について「6-12か月」とする考え方や、妊娠・出産・育児などで当該勤務が中断した場合には、前後の期間を通算することを認める考え方などが、厚生労働省から示されました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

12月12日に開催された、「第25回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

12月12日に開催された、「第25回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

 

医師少数地域等での勤務経験を「認定」する仕組みが2020年4月からスタート

 医師の地域偏在・診療科偏在が大きな課題となり、今年(2018年)7月に成立した改正医療法・医師法には、例えば次のような医師偏在対策が盛り込まれています。

(1)医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度の創設
(2)都道府県における医師確保対策の実施体制の強化(新たな「医師確保計画」の策定など)
(3)医師養成過程を通じた医師確保対策の充実
(4)地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応
医師需給分科会 180928の図表
 
 このうち(1)は、「医師少数地域・区域で一定期間勤務した医師を認定し、将来、医師派遣機能などを持つ地域医療支援病院等の管理者(院長)となるための要件とする」制度で、2020年4月からスタートします(関連記事はこちら)。12月14日の医師需給分科会では、▼医師少数地域等での勤務期間をどの程度とすべきか▼認定するためにどのような経験を求めるべきか▼認定医師を管理者要件とする仕組みはどうあるべきか―という点について議論を行いました。議論は始まったばかりで、構成員の意見を踏まえながら制度の詳細を固めていくことになります。

 まず「医師少数地域等での勤務期間」について、厚労省は「連続する6-12カ月の間で設定してはどうか」との考えを示しました。先進的な実事例(沖縄県立中部病院等から離島への派遣期間:2年)や自治医科大学による医師派遣事業(1年)、新専門医制度における総合診療専門医の僻地等研修期間(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都府県では12か月、その他の地域では6か月)などを勘案したものです。

 この期間設定については、「地域住民・患者と顔の見える関係を構築する必要があり、同じ医療機関に最低でも1年以上の勤務経験を求めるべきではないか」といった、長期間の勤務を求める意見(松田晋也構成員:産業医科大学教授、鶴田憲一構成員:全国衛生部長会会長ら)と、「東日本大震災の折には、さまざまな医療支援チームに交替で来ていただいたが、長くても2週間程度であった。しかし、地域の住民・患者は心から感謝した。医師少数地域では、1人でも短期間でもよいので医師に来てほしいと考えている」といった、派遣される医師の負担を考慮し、短期間の勤務でよしとする意見(小川彰構成員:岩手医科大学理事長)とか出ています。

また今村聡構成員(日本医師会副会長)は、「地域枠で医学部に入学し、医師少数地域等で勤務する経験の浅い若手医師では、1年程度の勤務が必要となるが、臨床経験を積み、次のキャリアとして院長の要件を得るために、医師少数地域等に勤務するベテラン医師では、より短期間の勤務でよいのではないか」と指摘し、一定の弾力的な運用を認めるべきと提案しています。

いずれも頷ける意見で、今後、さらに検討が深められます。また、後述する「認定資格を院長要件とする対象病院の範囲」とも大きく関係します(対象病院が少なければ長期間の勤務は逆効果となり、対象病院が多ければ長期間の勤務を課すほうが効果的となる)。

 
また、勤務期間の計算に当たっては、原則として、「同一の医療機関に週32時間以上(育児・介護休業法の短時間勤務の場合には30時間以上)勤務する」との考えも示されました。地域準民・患者との顔の見える関係構築のためと言えます。なお、初期臨床研修(臨床医となるための卒後2年間の研修)では、「複数の診療科をまわる(スーパーローテート等)」ことが原則となるため、この期間は「医師少数地域等の勤務期間」に含めない方向で検討が進められています。

 
ただし、こうしたルールをあまりに厳密に適用することは、例えば子育て中の女性医師などにとって非常に高いハードルとなってしまいます。このため厚労省は、▼妊娠▼出産▼育児▼傷病―などで中断した場合、「中断前後の期間を合算できる」仕組みも設ける考えです。この場合、勤務期間を、連続勤務よりも一定程度長くすることが考えられそうです。

これに関連して、山内英子構成員(聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)は、「例えば心臓外科の名医が、将来、地域医療支援病院の管理者(院長)を目指す場合などに、手術を待つ患者を置いて、同様に、連続数か月の医師少数地域等での勤務を求めるべきだろうか。『数年間、週末を利用して医師少数地域等に赴き、自身のスキルを活かして心臓病患者の手術を行う』といった形態も認めてよいのではないか」との提案を行いました。後述する「医師少数地域等での経験」にも関連する重要な提案と考えられます。

医師少数地域等での勤務期間中に、地域医療連携や在宅医療などの経験を

 また、医師少数地域等での勤務期間に、次のような経験を積むことを認定の要件する考えが厚労省から示されています。

▽個々の患者の生活背景を考慮し、幅広い病態に対応する継続的な診療や保健指導に関するもの(地域の患者への継続的な診療、診療時間外の患者の急変時の対応、在宅医療など)

▽他の医療機関との連携や、患者の地域での生活を支援するための介護・福祉事業者等との連携に関するもの(退院カンファレンスや地域ケア会議への参加など)

▽地域住民に対する健康診査や保健指導等の地域保健活動に関するもの(健診や保健指導など)

いわゆる「総合診療」経験を求めるもので、これらの項目に対し、下記のような注文こそついたものの、構成員から反論は出ていません。これらを軸に整理していくことになるでしょう。

こう考えると、上記の山内構成員の提案した「週末に自身の専門性を活かす」業務は、やや方向性が違うようにも思われ、本制度とは別の枠組みを検討することが必要になりそうです。

注文としては、小川構成員が強調した「臨床判断」が注目されます。小川構成員は、「例えば、高齢者が草刈り中に鎌で顔を切ってしまった場合、専門外であっても、地域の医師がすぐに縫合するほうがよい。しかし、同じことが10代の少女に起こった場合、専門外であれば、地域の医師は何もせず、時間をかけても形成外科の専門医のもとに搬送して処置しなければならない。こうした臨床判断を行える能力が求められる」と強く訴えています。

また裵英洙構成員(ハイズ株式会社代表取締役社長)は、将来、地域医療支援病院の管理者要件となることに鑑み「限られた医療スタッフを、どうマネジメントしていくか」という点を必要な経験の1つとすべきと提案しています。

なお、神野正博構成員(全日本病院協会副会長)は、「医師少数地域等で(上記のような)経験を積むというよりも、そうした能力を身につけてから医師少数地域等に赴いたほうがよいのではないか」とも提案しています。

 
 ところで、医師少数地域等では「一時的ではなく、交替等によって継続して医師が勤務してくれる」ことが重要でしょう。今後、都道府県で作成する「医師確保計画」の中で、継続した医師確保が可能となるよう、大学等からの医師派遣に、この認定制度等も組合せ手、重層的に盛り込み、取り組むことが期待されます(関連記事はこちら)。

地域医療支援病院以外にも、院長要件に「医師少数地域等での勤務」を盛り込むべきか

 このように「医師少数地域等で一定の勤務をした医師」は、厚生労働大臣に「認定」されます。将来、「医師派遣・環境整備機能を有する地域医療支援病院」の管理者(院長等)に就くためには、この「認定」資格が要件の1つとなります。ある側面からは「インセンティブ」(院長になれる道が開ける)となり、別の側面から「義務」(経験をしなければ院長になれない)となるものです。

 どういった病院が「医師派遣・環境整備機能を有する地域医療支援病院」に該当するのかは、厚労省の別の検討会(特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会)で議論が始まったばかりで、まだ具体的な要件や施設数などは見えてきません(今年(2018年)9月末時点で地域医療支援病院は571施設あり、これが上限となる)。

医師需給分科会では、「医師少数地域等での勤務」をより推進するよう、「地域医療支援病院以外の病院にも、認定資格を管理者(院長)要件に据えるべきではないか」といった声も少なくありません。厚労省は、「医師需給分科会で、どこまで対象病院を広げるべきか、データ等も踏まえて議論してもらう」考えを示しています。今年度(2018年度)中に、医師少数地域等の設定がなされるため、おそらく来年度(2019年度)からこうした議論も行われることでしょう。ただし、あまりに対象病院を広げることは、改正医療法・医師法の射程から外れることになります(例えば「すべての医療機関について、管理者(院長)は認定医師でなければならない」とすることなどは、改正法を審議した国会でも想定されていない)。

この点、例えば「対象病院があまりに少ない」場合には、「医師少数地域等で勤務するメリット」が小さくなる(もちろん地域医療での勤務自体が、重要な経験であることは疑いがない)ため、前述の「期間」や「経験」を厳しくすることは逆効果(医師少数地域等での勤務を希望する医師が増えない)となりかねません。逆に「対象病院を多くする」ことは、「医師少数地域等で勤務するメリット」の増加につながります(院長になるために、医師少数地域等での勤務を希望する医師が増えると考えられる)が、あまりに広げることは、上記の問題とともに、「後継者問題」等にも大きな影響を及ぼします。多面的な議論が必要でしょう。

 
なお、地域医療支援病院等の院長において「認定」資格が要件化されるのは、認定制度がスタートする2020年4月以降に初期臨床研修を受ける医師からとなります(数十年後に院長職に就くイメージ)。これまでに初期臨床研修を終えた、あるいは来年(2019年)から初期臨床研修を受ける医師については、「医師少数地域等での勤務経験」がなくとも、医師派遣・環境整備機能を有する地域医療支援病院の管理者に就くことが可能です(もっとも、要件化はされていないが、医師偏在等を是正するために医師少数地域等に赴くことは推奨される)。

 
 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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