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医師の地域偏在解消に向けた抜本対策、法律改正も視野に年内に取りまとめ—医師需給分科会(2)

2017.6.16.(金)

 医師偏在の解消に向けた抜本的な対策を考える上では、まず「ニーズ」をきちんと把握し、その上で医師の要請数や配置を考えていく必要がある—。

 15日に開催された医師需給分科会(医療従事者の需給に関する検討会の下部組織)では、構成員からこういった意見が相次ぎました(関連記事はこちら)。今秋から「抜本的な対策」の議論が分科会で始まりますが、どのようにニーズ把握などを行うかが重要な論点となりそうです。分科会では、法律改正も視野に入れて年内(2017年内)に意見をとりまとめます。

6月15日に開催された、「第10回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

6月15日に開催された、「第10回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

医療のニーズを把握した上で、医師の供給数を算出するロジックは維持

分科会では、昨年(2016年)春に中間まとめを行い、地域医療構想などを踏まえて将来における医師の需要量と供給数について「2024年頃に約30万人で需給が均衡し、2040年には医師が3.4万人過剰となる」(中位推計)といった試算を行いました(関連記事はこちらこちら)。

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

将来の医師需給の試算結果、早晩、供給量が需要量を上回ることが明確に(上位推計でも2033年以降は医師供給過剰になる見込み)

 
推計のロジックは、次のようなものです。

【入院医療】

(1)一般病床・療養病床の医師需要について、医師・歯科医師・薬剤師調査で得られた「医療施設(病院・診療所)の従事者数」から推計する

(2)(1)の結果を、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4機能に按分する。按分方法としては、「4機能における平均的な医療資源投入量に基づく方法」や「現状の病床機能報告制度などを活用する方法」など、いくつかの仮定を置いて、『複数の推計値』を示す
 
【外来医療】

▽無床診療所で外来医療を提供している部分の医師需要を推計する(病院・有床診療所については、入院医療の医師需要に包含して推計している)

▽「性・年齢階級別の推計人口」と「性・年齢階級別の外来受療率」に基づき、さらに受療の動向(患者調査や社会医療診療行為別調査を活用)を踏まえて、医師需要を推計する

▽在宅医療については、外来需要とは分離して、「将来、慢性期から在宅に移行する」部分を含めて医師需要を推計する

将来の医師需要(必要医師数)を推計する手法の大枠

将来の医師需要(必要医師数)を推計する手法の大枠

 
しかし、その後に「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、ビジョン検討会)が設置され、その報告書(ICTやAIの発展、地域包括ケアの推進など、医療を取り巻く環境の変化を踏まえた『医療従事者の新しい働き方』『今後求められる医療従事者像』などが固められている)を踏まえて、医師などの需給を推計しなおすことになっています(関連記事はこちらこちら)。

この点について権丈善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)は、「中間まとめのロジックと同様に、まずニーズを推計し、それを踏まえて医師の養成数や配置を検討する」必要があると指摘。福井次矢構成員(聖路加国際大学学長)も同旨の見解を述べました。厚労省医政局地域医療計画課の担当者も「同じ考えである」ことを明確にしましたが、「病院の外来需要について、どのように把握すべきかが十分に検討できていない。厚労省でさらに検討する」と述べるにとどめています。前述のとおり、中間まとめの推計では「病院の外来需要は、入院医療需要と一体的に推計する」という考え方に立っていますが、新たな推計でどう考えるのか、今後の検討結果に注目が集まります。

また厚労省医政局の神田裕二局長も、「ビジョン検討会の報告書でも、権丈委員らの指摘と同様の指摘が行われており、『ニーズに応じた適正配置』という議論の根本は崩れていない」と強調しました。

ただし、鶴田憲一構成員(全国衛生部長会会長)は、「医療においては供給がニーズを作り出してしまう」面があることを考慮すべき、と注意を促しています。

 
なお、今後の医師偏在解消に向けた抜本改革のベースとなるのは、上記で指摘されている「ニーズ」はもちろん、中間まとめで掲げられた14項目の対策案(厚労省のサイトはこちら(中間とりまとめ))であることを厚労省医政局医事課の武井貞治課長は明確にした上で、年内に分科会の意見をまとめ、必要があれば来年(2018年)に医療法改正案などを国会に提出する考えを示しています。

医師需給分科会では、医師偏在の是正に向けて、早期実行可能な対策をまとめるのとは別に、抜本対策の議論を秋から行う

医師需給分科会では、医師偏在の是正に向けて、早期実行可能な対策をまとめるのとは別に、抜本対策の議論を秋から行う

 
(1)医学部(地域枠の在り方など)

(2)臨床研修(募集定員配分などに対する都道府県の権限強化など)

(3)専門医(都道府県による調整権限の明確化など)

(4)医療計画による医師確保対策の強化(将来的な自由開業・自由標榜の見直しを含めた検討など)

(5)医師の勤務状況等のデータベース化

(6)地域医療支援センターの機能強化

(7)都道府県が国・関係機関などに協力を求める仕組みの構築

(8)管理者の要件(特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所などの管理者要件とすることを検討)

(9)フリーランス医師への対応

(10)医療事業の継続に関する税制(地域の医療機関の事業の承継に関し、中小企業と同様な優遇税制について検討)

(11)女性医師の支援(病院における柔軟な勤務形態の採用など)

(12)ICTなどの技術革新に対応した医療提供の推進

(13)チーム医療の推進

(14)サービス受益者に係る対策(かかりつけ医の情報提供など)

      
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