地域医療に配慮した、専門医制度の「新整備指針」案を大筋で了承―日本専門医機構
2016.12.12.(月)
新たな専門医制度においては、各学会と日本専門医機構が対等な立場で役割分担する。また地域の意思偏在を助長しないよう、必要な場合には「指導医がいない病院でも関連施設」として専門医養成プログラムの参加を可能とする。さらに、専門医養成プログラムの認証にあたっては「都道府県の協議会」と必ず協議を行うこととする―。
日本専門医機構の理事会は9日、こういった内容を盛り込んだ「専門医制度の新整備指針」案を大筋で了承しました。
16日開催予定の社員総会での了承を経て、各学会・基本領域で「運用細則」や「整備基準」を定め、来年(2017年)4-5月にかけて専門医養成プログラムの認証を行い、6月から専攻医の募集を開始することになりそうです。
専門医養成プログラム認証にあたって、機構と都道府県協議会で必ず協議
新専門医制度については、当初、来年(2017年)4月から養成が開始される予定でしたが、「地域・診療科における医師偏在が助長する」との指摘を受け、全面スタートを1年延期(18年4月から)。その間に、さまざまな課題を解決することになっています。
その一環として、専門医の認定や養成プログラムの認証を統一医的基準で行う日本専門医機構医療は、専門医制度の骨格となる「整備指針」の改訂論議を行ってきました。論議の過程では「地域医療への配慮が十分でない」といった指摘が日本医師会や全国自治体病院協議会などからなされ、一時は「再延長」の可能性も出ましたが(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)、今般、「新整備指針」案が理事会で合意されました。
9日の理事会終了後に記者会見を行った吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)と山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、現在の整備指針を次のように見直すことを説明しています。
▼「学会の専門医」ではなく、「その領域を担当する学会が専門医制度を運用する」ことを明示する(学会が運用する制度について、機構が対等の立場で指導・助言する)
▼専門医養成プログラムについて、学術的な観点から各学会が1次審査を行い、機構が整備指針などに則ったものになっているかを2次審査で検証する
▼基本領域の学会とサブスペシャリティ学会が検討委員会を設け、そこでサブスペシャリティ専門医の在り方や運用を議論し、それに対して機構が助言・審査を行う
▼専攻医の都市部集中などを避けるなど、医師偏在を助長しないように努めることを明示する(仮に偏在助長が明らかになった場合には、機構が対応する)
▼基本領域においてはプログラム制(カリキュラムの内容を、年次毎に定められた一定のプログラムに則って履修する仕組み)を原則とするが、カリキュラム制(カリキュラム基準を充足した時点で、専門医試験の受験を可能とする仕組み。何年かかってもよい)を採用してもよい。サブスペシャリティ領域では、いずれを採用してもよい
▼研修施設群(原則として1つの基幹施設と、1つ以上の連携施設などで構成するが、柔軟なバリエーションを認める)を設け、そこで循環型の研修を行う(専攻医は基幹施設には6か月以上、連携施設などには3が月以上在籍することが原則だが、領域や地域によって弾力的な運用を可能とする)
▼専攻医の採用は、基幹施設、連携施設などのいずれでもよいが、専攻医の管理を行うため基幹施設で「登録」を行う
▼「基幹施設は、大学病院に限定されず、適切な基準を満たす施設である」旨を明記し
▼研修を行う施設(基幹施設、連携施設)には指導医の在籍が必要であるが、プログラム全体として「指導医がいないが、その施設での研修が必要」と判断される場合には、当該施設を「関連施設」(仮称、連携施設に準ずる施設)として研修施設群に入れることを可能とする
▼プログラムを機構で認証するに当たっては、事前に必ず都道府県の協議会(地域医療関係者を含める)と協議を行い、地域医療に配慮する
▼医師免許取得後(医学部卒後)5年を経過した時点で、基本領域の専門医資格を取得できることとする
▼初期臨床研修で研修した症例などを基本領域で、基本領域部分で研修した症例などをサブスペシャリティ領域でカウントすることを可能とし、シームレスな研修を目指す
▼定数については今後、検討するが、「1指導医あたり3名の専攻医」を原則とする
▼出産や留学などで研修を中断した専攻医について配慮を行う(再開した場合に、中断前部分からの継続を認めるなど)
▼ダブルボードを可能とするため、必ず「1つ基本領域の専門医を取得してから、別の基本領域の研修を受ける」とするのでなく、複数の基本領域で連動した研修を行うことも可能とする
こうした見直し内容は、前述した日医や全自病らの要望も踏まえたもので、日医の副会長でもある機構の松原謙二副理事長は「すべて盛り込まれた」ことを明確にしています。
また吉村理事長は、「12月16日の社員総会で了承された場合」の今後のスケジュールについて、▽各基本領域で「運用細則」の策定を行い、機構の理事会でそれを確定する(年明け1月)▽運用細則に沿って、各領域でプログラムの整備基準を定める▽各領域でプログラムの1次審査を行う(2-3月)▽各プログラムについて機構と都道府県協議会との間で協議を行い、機構で2次審査を行う(4-5月)▽各プログラムが専攻医の募集を開始(6月)▽新専門医の養成を全面スタートする(2018年4月)―という大枠を発表しています。
なお、山下副理事長は、指導医が在籍しない「関連施設」について、「教育のためにどうしても必要な場合、その合理的な理由を明示してもらい、学会と機構で判断することになる」とし、「無制限に関連施設を認める」ものではないことを強調しています。
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