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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2017年度の専門医、学会の意向確認して定数枠を設定へ―専門医の在り方専門委員会

2016.5.31.(火)

 来年度(2017年度)の専門医制度については、各学会の意向を確認した上で、医師偏在が進まないように、過去の採用実績に基づいて「診療領域別・都道府県別・プログラム別に専攻医(専門医を目指す医師)の定員枠」を設定してはどうか―。

 厚生労働省は、30日に開催した社会保障審議会・医療部会の「専門医養成の在り方に関する専門委員会」にこのような提案を行いました。

 「日本専門医機構が統一した基準で研修プログラムと専門医の認証・認定を行う」ことを目指す新制度の実施は、事実上見送りとなる模様です。なお2018年度以降については改めて検討されることになります。

5月30日に開催された、「第3回 社会保障審議会 医療部会 専門医養成の在り方に関する専門委員会」

5月30日に開催された、「第3回 社会保障審議会 医療部会 専門医養成の在り方に関する専門委員会」

診療領域別・都道府県別の定員枠を設定、プログラム認定は各学会が行う

 新専門医制度は、第三者機関(日本専門医機構)が「専門医養成プログラムの認証」と「専門医の認定」を統一した基準で行うことで、より質の高い医療提供体制の構築を目指しています。しかし、「専門医の養成を行う施設が大学病院などに偏っており、地域医療に従事する若手医師が地域を離れてしまう可能性が高い。地域における医師偏在を助長してしまう」との批判があり、改善策を練ってきました。

 27日の専門委員会では、永井良三委員長(自治医科大学学長)委員長から、過去の採用実績を踏まえて都道府県・診療領域別の定員枠を設定し、医師偏在を助長しないように配慮してはどうかという私案(提案)が提示されました。

 厚労省は、この永井私案を踏まえ、次のような考え方を整理して提案したものです。

(1)過去3年間の採用実績を踏まえて、来年度(2017年度)における診療領域別・都道府県別・プログラム別の専攻医定員枠を設定する

(2)都道府県に設置された協議会が、医療現場から「研修プログラムの中に地域医療確保の観点から必要な施設が漏れていないか」「指導医配置方針などに改善すべき点はないか」「地域で必要な定員増はどの程度か」を聞き、それをまとめて学会(各領域研修委員会)に伝える

(3)学会は、(2)の都道府県からの要望を受けて調整を行う(調整をしても、なお検証が必要な場合には、専門委員会で調整を行う)

(4)学会が研修プログラムの実質的な認定を行う(日本専門医機構は、2018年度以降にプログラムが見直されることを条件とした『条件付き認定』を行う)

 この厚労省提案は、新専門医制度の導入を事実上延期するとともに、新制度に向けたトライアル(試行)という位置づけになります。

 専門医の養成を、現在のいわば「病院単位」から「プログラム単位」に変更することで地域偏在が助長されると指摘されているため、(1)のように定員枠を設置することで、偏在を防止することが最大の狙いと言えそうです。

後期研修医が集中し、かつ体制を超えて受け入れているところでは定員枠を厳しく設定

 定員枠の考え方は、次のようなものです。

(i)専攻医が集中している診療領域(後期研修医の全国シェアが高く、かつ、研修体制[前期研修医定員の全国シェア]に比べて後期研修医を多く受け入れている)では、過去3年間の採用実績の1.0倍(ただし、リハビリ科や形成外科など、過去の採用実績が一定をしたわ待っている診療領域は除く)

(ii)(i)以外では、過去3年間の採用実績の1.2倍

 都道府県別の定員枠は「各都道府県における診療領域ごと定員((i)と(ii))の合計」、診療領域別の定員枠は「診療領域における都道府県ごと定員の合計」となります。

 また、▽最低限の定員枠を保つための特例(過去の実績が著しく低い場合の補正)▽研修医の希望を踏まえた補正―も行う考えです。

 (i)について、「後期研修医の全国シェアが5%以上」かつ「研修体制(前期研修医定員の全国シェア)に比べて1.2倍以上の後期研修医を受け入れている」場合を専攻医が集中していると仮定すると、東京都や愛知県の内科・小児科・皮膚科・精神科・産婦人科・脳神経外科・麻酔科などが該当する格好です。

 ただし、(i)の1.0倍という倍率には「甘いのではないか」との指摘もあり、今後より厳しく設定される可能性もあります。なお、(i)の倍率を厳しくした場合、希望する地域・診療領域で専攻医になれない医師も出てきます。この場合のマッチングをどうするのかも、今後、早急に詰められる見込みです。

永井委員長は「学会の意向を確認」することを強調

 こうした厚労省案に対し、「急な提案であり、一度立ち止まって考える必要があるのではないか」(西澤寛俊委員:全日本病院協会会長)、「今までの仕組み(専門医養成制度)を延長すればよいのではないか」(加納繁照構成員:日本医療法人協会会長)といった意見も出されました。

 しかし、学会によっては多額の費用を投入して新たな研修プログラムを作成しているところもあります。こうした学会では、「日本専門医機構が関与するか否かに関わらず、新しい研修プログラムで専門医の養成を開始する」と考えているようです。

 研修がプログラム単位、つまり「基幹施設と連携施設で群を設け、そこで研修医の養成を行う」形になると、基幹施設に若手医師が集中し、地域偏在が進む可能性が高くなります。

 また、厚労省の調査によれば、概ね専攻医の母数となる「現在の初期臨床研修2年目」の医師は8000人程度なのに対し、各診療領域の研修プログラム定員の合計は1万9000人もあります。つまり特定の地域や診療領域に研修医が集中する可能性があるのです。

 こうした点を踏まえて永井委員長は、「学会の意向を確認する必要がある」とし、厚労省にその旨を指示しました。厚労省は基本診療領域を担う学会に対し、「来年度(2017年度)からの専門医養成をどのように行う考えか」などを調べ、次回以降の専門委員会に報告する考えです。

 なお、北村聖構成員(東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター教授)は、「地域偏在の原因は、『基幹施設』『連携施設』という区分にあると考えられる。基幹施設となる大病院が少なければ、地域の病院は『うちは連携施設になれるだろうか』と心配することになる。来年度(2017年度)は、基幹施設・連携施設の区分をやめ、『どの病院でも一定の症例などを診ればよい』という仕組みにすべき」と提案しています。

秋頃から専攻医募集を開始、厚労省は「迷惑をかけない」点を強調

 専門医制度において、最も不安を感じているのは「来年度(2017年度)から専攻医になろう」と考えている若手医師(主に現在の初期臨床研修2年目の医師)でしょう。

 厚労省は「迷惑をかけないようにする」と強調し、次のようなスケジュールで動く予定です。

▽今後、「募集・採用方法の検討」「定員枠の調整」を専門委員会で詰め、今夏に定員枠を設定する(上記で言えば(1))

  ↓

▽都道府県の協議会で改善要望をまとめて各学会に提出、学会で改善に向けた調整を行い、社会保障審議会医療部会で調整内容を確認

  ↓

▽医療部会の確認を受けて、各学会で研修プログラムの実質的な認定を行い、秋頃には専攻医の募集を開始する

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