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新専門医制度、都道府県別に過去の専門医採用実績をベースにした定数設定議論へ―専門医の在り方専門委員会

2016.4.28.(木)

 「地域の医師偏在を助長する可能性がある」と批判される新専門医制度について、都道府県別・診療領域別の定数枠を設定することで批判の原因の1つを除去できるのではないか―。

 27日に開かれた社会保障審議会・医療部会の「専門医養成の在り方に関する専門委員会」で、永井良三部会長(自治医科大学学長)はこのような見解をベースに、厚生労働省に対して「過去3年間の専門医採用実績の1.1-1.2倍をオールジャパンの専門医定員枠として、都市部以外の道県により配慮した都道府県別の定員枠」案を試算するよう指示しました。

4月27日に開催された、「第2回 社会保障審議会 医療部会 専門医養成の在り方に関する専門委員会」

4月27日に開催された、「第2回 社会保障審議会 医療部会 専門医養成の在り方に関する専門委員会」

永井委員長、「都道府県別・地域別の新専門医定員枠」を検討すべきと提案

 新専門医制度は、第三者機関(日本専門医機構)が「専門医養成プログラムの認証」と「専門医の認定」を統一基準で行うことで、より質の高い医療提供体制の構築を目指す仕組みです。来年(2017年)4月から新専門医の養成がスタートする予定となっています。

 しかし、「専門医の養成を行う施設が大学病院などに偏っており、地域医療に従事する若手医師が地域を離れてしまう可能性が高い。地域における医師偏在を助長してしまう」との批判があります。厚生労働省もこの批判を踏まえ、この4-6月に養成プログラム案のチェック・改善を日本専門医機構・都道府県(協議会)・国の3層構造で行うことになっています(関連記事はこちらこちら)。

 この対応にもかかわらず、医療現場には「制度の根本的な見直し」を求める声も強く(関連記事はこちらこちら)、医療部会や専門委員会で議論が続けられています。

 そうした中、27日の専門委員会では、永井委員長から論点私案(永井私案)が提示されました。

 永井私案では、まず来年度(2017年4月)からの新専門医スタートに向けて「定員枠を設定することで、医師偏在助長の原因を除去する」ことを提案しています。具体的には、▽過去3年間の専門医採用実績の1.1-1.2倍を日本全国の定員枠とする▽都市部以外の道県に対してより配慮した都道府県・診療領域別の定員枠を設定する―という提案です。

 永井座長は、この考えに沿って定員枠を試算するよう厚労省に指示。次回以降、この試算結果に基づいた議論が行われる見込みです。例えば、「地方に配慮すると、東京都の専門医定員枠が大幅に減少してしまう」結果が出るかもしれません。数字をベースに具体的に議論することが重要との永井会長の思いが伺えます。

「将来的に、都道府県の協議会の責任と権限を強化すべき」とも永井委員長

 永井私案では、将来的に「都道府県の協議会の権限強化を行う」ことも提案されています。

 具体的には、各基幹施設などから示された養成プログラム(1次プログラム)について、協議会が都道府県ごとの定員(前述)をもとに調整して2次プログラムを作成。さらに協議会が専攻医(専門医を目指す後期研修医)の身分や待遇について監督・指導する役割も担うべきとしています。

 また専門医の認定について「専門医機構がどのように行うべきか」「協議会がどのような責任と権限を持つか」という点についても議論する必要があると指摘しています。

 この考え方は、冒頭に述べた「養成プログラム認証」と「専門医の認定」を専門医機構が行うという考え方とは異なるものです。ただし永井委員長は、「協議会が一定の役割を果たせるようになるまでには時間がかかることは承知している。2017年度からの運用ではなく、将来的な姿である」旨の考えも述べています。

 永井私案は、(1)都道府県別・診療領域別の定員枠を設定した上で新専門医の養成を2017年4月からスタートする(2)将来的に都道府県の協議会が新専門医養成に一定の役割を果たす―という2段階の構想と見ることが出来そうです。

 なお、永井委員長は、▽プラグラムの開始▽複数の都道府県の医療機関を含むプログラム▽総合診療医のダブルボート―といった点にも改善すべき課題があるとし、次回以降、私案を提示する考えです。

永井私案に対し、明確な反論は出されず

 27日の委員会では、永井私案の内容に対して明確な反対意見はなく、むしろ高く評価する意見が相次ぎました。

 末永裕之委員(日本病院会副会長)は、「都道府県の機能を高めるには、権限を付与しなければいけない」と述べ、永井私案に賛同。森隆夫委員(日本精神科病院協会常務理事)も、「学会と協議会の機能を強化することで、医師の偏在是正に向けて動き出すと思う」とコメントしています。

 ただし鶴田憲一委員(全国衛生部長会会長)は、「都道府県は『突然、新専門医の役割が降ってきた』と感じている。複雑な問題で、都道府県がそこまでの機能を果たせるだろうか」との疑問を提示しており、今後、慎重な検討が必要となるでしょう。

「延期すべき」との指摘に対し、門田委員は「動かしながら改善すべき」と反論

 円滑な新専門医制度のスタートを意識した永井私案ですが、やはり小川彰委員(全国医学部長病院長会議 専門医に関するWG座長)や羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「見切り発車はいけない。延期を決議すべき」と指摘します。

 しかし門田守人委員(日本医学会連合副会長)は、「『専門医の在り方に関する検討会』で議論を詰め、現在の形を作った。それを今になって原点に戻るような議論がなされているのは残念。延期をしても大幅な改善ができるであろうか。徐々に改善していくしかない」と述べ、2017年4月から予定通り専門医養成を進めるべきと強く主張。

 一方、参考人として出席した嘉山孝正(山形大学医学部がんセンター長)は、「臨床研修制度でも地域の医師偏在があると指摘されたが、解決せずに動かしてしまった。緻密に課題を解決する必要がある」旨を述べています。

 

 今後、永井私案に基づいた「都道府県・領域別の定員枠」案などをベースに、実施時期に関する議論も今後詰められることになります。

 ただし、機構が認定を行う新専門医制度が仮に延期されるとしても、現在の学会主導の専門医制度は稼働しており、「専門医を目指す現場の医師」に不利益が生じることはなさそうです。

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