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新専門医制度、懸念払しょくに向けて十分な議論が必要―社保審・医療部会

2016.4.6.(水)

 新専門医制度や、専門医の認定などを一元的に行う第三者機関「日本専門医機構」に対し、社会保障審議会・医療部会では厳しい指摘が続いています。

 6日に開かれた医療部会では、厚生労働省から、医師偏在が助長されないよう、養成プログラムを日本専門医機構・都道府県(協議会)・厚労省の3層構造でチェック・調整していく方針が報告されましたが、中川俊男委員(日本医師会副会長)らは「スケジュール的に無理があるのではないか」との意見が出されました。

 医療部会で提示された意見は、下部組織である「専門医養成の在り方に関する専門委員会」に報告され、円滑実施に向けて更なる議論が行われます。

4月6日に開催された、「第45回 社会保障審議会 医療部会」

4月6日に開催された、「第45回 社会保障審議会 医療部会」

医師偏在の助長防止に向け、機構・都道府県・国が養成プログラムをチェック

 医師偏在を助長させないための3層構造のチェックは、次のようなものです。

専門医の養成開始(2017年4月スタートとした場合)のプロセス、日本専門医機構・都道府県・国の3層構造で養成プログラムをチェックする

専門医の養成開始(2017年4月スタートとした場合)のプロセス、日本専門医機構・都道府県・国の3層構造で養成プログラムをチェックする

(1)日本専門医機構

 ▽大病院のみ・特定の医療グループのみというプログラムは認めず、是正を求める▽必要な「地域医療の研修」が含まれていることを確認し、調整する▽「過去5年間に研修実績のある医療機関」が連携施設から漏れていないかを確認し、調整する▽診療領域ごとに、研修施設のない2次医療圏が出ないように調整する▽都市部に専攻医が集中しないよう募集定員を調整する―など

(2)都道府県

 日本専門医機構から養成プログラムの申請状況などについて報告を受け、大学・基幹施設・連携施設・医師会・病院団体・都道府県などの関係者で構成される「協議会」を設け、▽地域医療確保の観点から必要な施設が漏れていないか▽プログラムの改善が必要ないか―などを議論し、日本専門医機構に必要な改善などを求める

(3)厚労省

 都道府県からの報告を受け、専門委員会で「基準の見直しが必要ないか」を検討するとともに、日本専門医機構や都道府県の調整を支援する

サブスペシャリティ領域、機構のガバナンスなど、さまざまな部分に懸念の声も

 このうち機構による個別プログラムの審査と調整、都道府県に設置される協議会での検証などは4月中に行うことになっていますが、中川委員や加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は「スケジュールに無理があるのではないか」と指摘。

養成プログラムチェックにおいて、日本専門医機構・都道府県・国がそれぞれいつまでに何をすべきかが整理されている

養成プログラムチェックにおいて、日本専門医機構・都道府県・国がそれぞれいつまでに何をすべきかが整理されている

 また新井正吾委員(全国知事会、奈良県知事)は、「奈良県では県立の医科大学に調整してもらっているが、国立大学や私立大学では都道府県の力が十分に及ばない都道府県もあるのではないか」との旨を指摘し、厚労省や文部科学省の積極的な関与が必要と求めています。

 一方、釜萢敏委員(日本医師会常任理事)は、「基本領域(外科や内科など19領域)の上に、サブスペシャリティ領域(消化器、呼吸器、循環器など29領域)が設定されているが、基本領域の研修を修了した後に、どのサブスペシャリティ領域の専攻が可能なのか、などが整理されていない。そういった段階で専攻医を募集するのは混乱を招くのではないか」と指摘しています。

 また中川委員や西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「日本専門医機構のガバナンス」にも言及し、より根本的な議論をすべきとの考えも述べています。

 

 こうした意見は専門委員会に報告され、円滑な新専門医制度のスタートに向けて、どのような調整や改善をすればよいのかをさらに検討していくことになります。

 なお、田中滋部会長代理(慶應義塾大学名誉教授)は、「さまざまな懸念があることが分かった。それを払拭するためのプロセス・議論が重要であろう」とメディ・ウォッチにコメント。今後も、十分な議論が行う必要がありそうです。

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