新専門医制度は延期を!2015年度診療報酬改定の方向は正しい―全自病・邉見会長
2016.3.17.(木)
現在の専門医制度は100点満点ではないものの高く評価されている。地域から若手医師がいなくなる危険性の高い新専門医制度は、実施時期・責任主体(監督官庁)・社員構成などを含めて議論しなおし、懸念が払拭されてから始めても遅くはない―。
全国自治体病院協議会の邉見公雄会長は、17日の定例記者会見でこのような考えを強調しました。
また、2016年度診療報酬改定については、「質の高い医療を既に行っている医療機関を評価するもので、全体の方向はよいものだ」と評しています。
新専門医制度は、これまで学会によってまちまちであった専門医の認定を、統一的な基準に基づいて第三者機関(日本専門医機構)が行うことを柱とするもので、来年(2017年)4月から養成が開始されることになっています。
しかし、2月19日に開かれた社会保障審議会・医療部会では、多くの委員から「このままでは地域医療が崩壊してしまう」という指摘が出され、永井良三部会長(自治医科大学学長)は、部会の下に専門委員会を設置し、開始時期(現在は2017年4月スタート予定)を含めて検討することを決定しました。
また全自病は2月29日に、例えば次のような問題点があることを指摘した上で「新専門医制度の研修開始の延期」を求める声明を発表しています。
▽専門研修基幹施設は大学病院や都市部の大病院に限られ、専攻医の都市部集中がさらに進み、医師の地域偏在を増幅させる
▽地域や病院規模によって専攻医を確保できず、地域医療が崩壊する
▽領域によっては、地方大学でも専門研修基幹施設に該当せず、専門医育成に大きな地域格差が生じる
邉見会長は17日の会見で、上記のような問題点を改めて指摘。さらに、「現在の専門医制度は100点満点でこそないものの、『うちの地域の医師はレベルが低い』といったような『日本の医療が良質でない』という声はない。新専門医制度によって、良質どころか普通の医療がうけられない地域すら出てくる危険性がある。地域医療の課題は『医師の偏在』である」と訴えました(関連記事はこちら)。
その上で、「実施時期、監督官庁(責任体制)、専門医機構の社員体制を含めて、医療部会の下に置かれる専門委員会でしっかりと議論し、さまざまな懸念が払拭されてから新専門医制度を開始させても遅くはない」として、改めて来年(2017年)4月からの養成開始延期を要望する姿勢を強調しています。
17日の定例記者会見では、2016年度診療報酬改定(出来高部分)に対する評価も発表されました。
邉見会長はじめ全自病執行部は、「全体として良い『方向』に向かっている」と高く評価しているようです。
原義人副会長(青梅市病院事業管理者兼青梅市立総合病院長)や中島豊爾副会長(岡山精神科医療センター理事長兼名誉院長)は、▽一般病棟用の重症度、医療・看護必要度で内科を一定程度評価している▽医師事務作業補助体制加算の一部を療養病棟や精神病棟でも算定できるようになった/a>▽総合病院の精神科でさまざまな加算を設け、身体合併症を持つ精神疾患患者の受け入れを促進している▽児童・思春期の精神科外来の評価を従事している―点が特に高く評価できると説明。
また、邉見会長は「認知症ケア加算や排尿ケア加算などチーム医療の評価にかなり力が入れられている。さらに小児医療の評価が充実されている」点に注目しました。
ただし、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)は、「多くの病院では有資格者を配置するなど、病院のレベルを上げなければならず、そう簡単には新点数や加算の届け出、算定はできない」ことを強調。この点に関連して邉見会長は、「(点数がなくても専門職を手厚く配置するなど)質の高い医療を行っている医療機関を評価するもので、逆に点数を追いかけている(点数や施設基準を見て人を配置しようと考えている)病院には厳しい内容である。正しい方向である」と厚生労働省の姿勢を高く評価しています。
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