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入院基本料の夜勤72時間要件、「撤廃」を前提とせず、見直しを検討すべき―日病協

2015.9.25.(金)

 入院基本料の施設基準に盛り込まれている「看護師の月平均夜勤72時間以内」要件について、労働基準法よりも厳しいルールなため、何らかの見直しが必要である―。このような姿勢で2016年度の次期診療報酬改定に臨むことを、日本病院会や全日本病院協会など12の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)が改めて確認しました。

夜勤72時間の確保、地方の中小病院では困難

 日病協は、次期改定に向けて10項目の要望をまとめており(関連記事はこちら)、その中には「夜勤72時間ルールの見直し」も含まれています。

 一方、日本看護協会では「夜勤労働に関する労働法制が未整備な現状では、診療報酬の夜勤72時間ルールのみが看護職員の健康と安全を守る生命線である」として、「入院基本料の通則で夜勤72時間ルールを堅持すべき」と強調しています(関連記事はこちら)。

 このように病院側と看護師側で意見が異なっている状況ですが、日病協では今般、改めて「夜勤72時間ルールの見直し」を求める姿勢で次期改定に臨むことを確認しています。

 25日の日病協代表者会議後に記者会見を行った楠岡英雄議長は、「夜勤72時間要件の撤廃を求めるものではない」ことを強調。個人的な見解と断った上で「日看協と病院団体側とで、夜勤の要件をどこまで『幅を持たせたもの』にできるか、アイデアを出し合って妥協点を探っていくことになるのではないか」と述べました。

9月25日の定例記者会見に臨んだ、日本病院団体協議会の楠岡英雄議長

9月25日の定例記者会見に臨んだ、日本病院団体協議会の楠岡英雄議長

 また神野正博副議長は、「夜勤72時間要件は労働基準法より厳しいものである」点を強調。「大病院では夜勤72時間をなんとかクリアできているが、地方の中小病院ではとても厳しい状況である」ことを訴えています。

9月25日の定例記者会見に臨んだ、日本病院団体協議会の神野正博副議長

9月25日の定例記者会見に臨んだ、日本病院団体協議会の神野正博副議長

 今後、改定内容を決定する場となる中央社会保険医療協議会で、どのような議論が展開されるのか注目されます。

 なお、日病協の代表者会議では、診療報酬の特例が認められる「医療資源の乏しい地域」の見直しについて、「厚生労働省案(関連記事はこちら)では厳しい。対象地域が100程度にまで増加しないと見直しの意味がないのではないか」といった意見も出ています。

新専門医制度に対し「地域医療崩壊」を懸念する声も

 また日病協の代表者会議では、「新たな専門医制度」に向けた検討を行う動きも出てきています。

 現在の専門医制度には、「学会ごとに専門医を認定しているために、質にバラつきがある」「国民は専門医をスーパードクターと考えている」という問題があるとして、中立的な第三者機関(日本専門医機構)が専門医の統一した評価・認定プログラムを作成するなどの見直しが行われます。17年度(平成29年度)から新制度が始まるため、現在、プログラムの作成などが進んでいます。

 この新たな専門医制度について、一部の病院団体から「地域で活躍している卒後3-5年の若手医師が、地方では専門医取得のキャリアを詰めないと考えて都会の大学病院に移動し、地域医療が崩壊してしまう」といった懸念が示され、日病協として議論していくべきではないかとの提案がなされたことも25日の記者会見で明らかにされました。

 このほかにも、新たな専門医制度には次のような問題点があると指摘されています。

▽基礎領域(総合診療専門医を含めた19領域)から専門性を高めるプログラムが組まれるので、若手医師の進路を狭める恐れがある

▽専門医機構が学会主導で運営されており、「国民に分かりやすい専門医制度の構築」という当初の趣旨から外れつつある

▽基幹研修施設の要件が厳しく、対象は事実上「大学病院のみ」となる可能性も高いため、「医局の弊害」が復活する恐れがある

▽「基幹研修施設での一定期間の研修」が義務付けられれば、地域の若手医師が移動を余儀なくされ、地域医療が崩壊する恐れがある

▽注目される総合診療専門医だが、その研修課程から別の領域への移行が事実上不可能となりつつある

 こういった問題点については代表者会議でも認識が一致し、一部病院団体からは「日病協で意見を取りまとめて専門医機構に提出すべき」という意見も出ています。しかし、「日病協はもともと診療報酬改定に向けて、病院団体の意見をすり合わせることを目的としており、専門医制度への提言は、当初目的から一歩踏み出すことになる」との見解もあり、議論をどのように進めていくのかまでは決まっていません。今後の動きが注目されます。

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