医療資源が乏しい地域の診療報酬特例、対象地域を見直す方向―入院医療分科会
2015.6.23.(火)
現在、30の二次医療圏で実施されている「医療資源の少ない地域での診療報酬の特例」について、対象地域を見直す方向で検討が進んでいます。
この特例の利用が極めて少ないことから、厚生労働省が調査分析を行ったところ、現在の対象地域は必ずしも医師や看護師の密度の小さい地域と合致していないことが分かったことから見直しが提案されたものです。
医療資源の少ない地域では医師や看護師などの確保が難しいため、地域医療を守るために2012年度の診療報酬改定から、▽病棟ごとの一般病棟入院基本料届け出を認める▽チーム医療に関する加算の要件を緩和する―など診療報酬の特例が認められています。しかし、特例の利用は極めて低調で、16年度の次期診療報酬改定でどのような対策を取るべきかが課題となっています。
特例の対象となる「医療資源の少ない地域」は、次の3つの要件をすべて満たす所と、離島で構成される医療圏で、現在は全国に30二次医療圏あります。
(1)自己完結した医療を提供している(患者流出が20%未満)
(2)医療従事者の確保などが困難(人口密度が1平方キロメートル当たり300人未満)
(3)医療機関が少ない(面積当たりの病院密度または病床密度が一定以下)
しかし、厚労省が19日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」に提示した調査分析結果によると、現行の対象地域は、必ずしも医師や看護師の密度が低い地域に合致していないことが分かりました。
そこで厚労省は、上記の要件を一部見直することを論点として掲げ、次のような試算結果も示しました。例えば、(1)の患者流出要件をなくし、(2)の人口密度要件を「人口当たり医師数が下位3分の1、かつ人口当たり看護師数が下位2分の1」に変更した場合、対象地域は41医療圏となります。当然のことながら、こうした変更を行うと、対象地域は「医師や看護師の密度が低い地域」に合致します。
この点について、池端幸彦委員(医療法人池慶應会理事長)は「特例措置は医療資源の乏しい地域を支援するものなので、現行の(1)の患者流出要件は不要なのではないか」と述べ、厚労省の提案に理解を示しています。
ところで現行では、「離島で構成される二次医療圏」は特例の対象になりますが、「二次医療圏のうち一部が離島」である場合には、必ずしも対象になりません。例えば、沖縄県の南部医療圏には南大東村、北大東村といった離島が含まれますが、特例の対象にはなっていません。
しかし、「離島である」という状況には変わりないため、厚労省は「二次医療圏の一部が離島となっている場合についても対象とすること」を論点に掲げています。
さらに、「特例の対象となる医療機関を限定し過ぎているので、利用が芳しくないのではないか」との指摘を受け、「例えば10対1病院を対象に加える」など、そのほかの要件見直しも論点になっています。
ただし、こうした特例について石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)から「診療報酬での対応は難しい」といった意見も出されるなど、特例そのものの是非について今後、検討される可能性もあります。
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