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総合入院体制加算2にも「実績要件」を設定する方向へ―入院医療分科会

2015.6.22.(月)

 2016年度の診療報酬改定に向けて、総合入院体制加算2に診療実績要件を設定する方向が示されました。現在、加算2を届け出るためには、年間で▽人工心肺を用いた手術40件以上▽悪性腫瘍手術400件以上▽腹腔鏡下手術100件以上―などの実績があることが「望ましい」とされていますが、これらをほとんど満たしていない病院が散見されることから、次期改定に向けて検討されるものです。

診療実績の該当項目が少ない病院は、手術件数なども少ない

 総合入院体制加算は、総合的かつ専門的な急性期医療を24時間提供できる体制等を持つ病院を評価するものです。前回14年度改定では、より充実した体制を敷いている病院を評価するために、施設基準を厳しくした加算1と、従前の施設基準を継続した加算2に分けられました。この加算の届け出数は増加しており、今年5月時点では加算2の届け出数は311病院に上っています。

総合入院体制加算の届け出病院数は増加傾向にあり、今年(2015年)5月時点で加算1は4病院、加算2は311病院が届け出ている

総合入院体制加算の届け出病院数は増加傾向にあり、今年(2015年)5月時点で加算1は4病院、加算2は311病院が届け出ている

 ところで加算2を届け出るためには、年間で▽人工心肺を用いた手術40件以上▽悪性腫瘍手術400件以上▽腹腔鏡下手術100件以上▽放射線治療(体外照射法) 4000件以上▽化学療法4000件以上▽分娩件数100件以上―という実績を満たすことが「望ましい」とされています。しかし、こうした実績をほとんど満たしていない病院が一定程度存在することが、19日に開かれた診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」に厚生労働省が提示した調査結果から明らかになりました。

総合入院体制加算の施設基準、2014年度の前回改定で診療実績を満たすなどより厳しい基準の加算1が新設された

総合入院体制加算の施設基準、2014年度の前回改定で診療実績を満たすなどより厳しい基準の加算1が新設された

加算2を届け出ている病院の中には、望ましいとされている「診療実績」要件をほとんど満たしていない病院も一部ある

加算2を届け出ている病院の中には、望ましいとされている「診療実績」要件をほとんど満たしていない病院も一部ある

 同時に、「実績要件の該当項目」が少ない医療機関では、全身麻酔の手術や人工心肺を用いた手術、放射線治療や分娩など、全体として「診療実績の件数そのもの」が少ないことも分かっています。

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、全身麻酔の手術件数なども少ない

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、全身麻酔の手術件数なども少ない

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、人工心肺を用いた手術や悪性腫瘍手術などの件数なども少ない

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、人工心肺を用いた手術や悪性腫瘍手術などの件数なども少ない

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、放射線治療や化学療法、分娩などの件数も少ない

診療実績要件をほとんど満たしてない病院では、放射線治療や化学療法、分娩などの件数も少ない

 また加算2の病院では、加算1の病院に比べて、診療実績件数が少ない傾向にあります。

加算1の病院と加算2の病院を比べると、多くの項目で加算1のほうが診療実績が多い

加算1の病院と加算2の病院を比べると、多くの項目で加算1のほうが診療実績が多い

 これでは加算の目的を十分に果たしているということは難しくなります。このため厚労省は「加算2における実績要件のあり方についてどう考えるか」という論点を示しており、次期改定に向けて加算2に何らかの実績要件を設定することが検討されます。

 例えば、「上記の実績件数を緩和した基準(人工心肺を用いた手術を20件以上、悪性腫瘍手術200件以上など)を満たすことを求める」ことや、「実績要件の一部(人工心肺手術40件以上や分娩件数100件以上など)を満たさなければいけないとする」ことなどが考えられますが、具体的な検討は今後に委ねられます。

 この点について本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「加算2の施設基準・要件を見直すべき」と明確に述べています。

 一方、發坂耕治委員(岡山県健康づくり財団理事)は「加算2で診療実績などが乏しいのは、規模が小さい所かもしれない。病床規模と診療実績の関係を分析する必要がある」と指摘しています。

化学療法件数は総合入院体制加算1の要件として妥当か

 一方、14年度の診療報酬改定で新設された加算1については、高度救命救急センターに指定されている7対1病院の半数が届け出したいと考えていますが、実際の届け出件数は今年5月時点でわずか4病院にとどまっています。

総合入院体制加算の届け出病院数は増加傾向にあり、今年(2015年)5月時点で加算1は4病院、加算2は311病院が届け出ている

総合入院体制加算の届け出病院数は増加傾向にあり、今年(2015年)5月時点で加算1は4病院、加算2は311病院が届け出ている

 加算1では、前述の加算2で「満たすことが望ましい」とされている実績要件をすべて満たし、かつ精神科病棟を持つことなどが必要となります。こうした施設基準の中でハードルが高いと考えられているが、「精神科病棟の設置」や「化学療法4000件以上」の項目です。そこで厚労省は「化学療法の件数要件をどう考えるか」という論点を示しました。

総合入院体制加算の施設基準、2014年度の前回改定で診療実績を満たすなどより厳しい基準の加算1が新設された

総合入院体制加算の施設基準、2014年度の前回改定で診療実績を満たすなどより厳しい基準の加算1が新設された

 この論点からは、「件数を引き下げる」ことや「現在レジメン単位とされている件数のカウント方法を見直す」ことなどが想定されますが、池田俊也委員(国際医療福祉大学大学院教授)や發坂委員は、「化学療法の実施は、救急患者受け入れなどとは性質が異なる。化学療法が要件として妥当かどうかを検討する必要があるのではないか」との問題提起も行いました。

小児や周産期の救急患者受け入れゼロの病院も

 総合入院体制加算の目的は前述のように「総合的かつ専門的な急性期医療を24時間する」病院を評価することです。

 しかし、厚労省の調査によると、救急患者の受け入れ状況には、大きなばらつきのあることが明らかになりました。特に小児救急患者や周産期の救急患者については、「受け入れていない」病院すらあります。また周産期の救急患者受け入れは、総合入院体制加算の届け出病院の方が、救急医療を担うほかの医療機関よりも少ない傾向にあります。

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、救急患者の受け入れにきわめて消極的なところがある

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、救急患者の受け入れにきわめて消極的なところがある

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、小児・乳幼児の救急患者受け入れがゼロ件のところがある

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、小児・乳幼児の救急患者受け入れがゼロ件のところがある

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、周産期の救急患者受け入れがゼロ件のところがある

総合入院体制加算を届け出ている病院の中にも、周産期の救急患者受け入れがゼロ件のところがある

 こうした状況から厚労省は、加算1と加算2に共通する「精神疾患を合併する患者など、多様な患者の受け入れが実際に確保されるための要件をどう考えるか」という論点も示しました。

 総合入院体制加算を届け出る病院の機能について、厚労省保険局医療課の担当者は「幅の広さと深さの両方が求められる」と説明しています。「地域の砦」と期待される病院に対して、これまで以上に十分な体制と実績が求められていると言えるのではないでしょうか。

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