重症度、医療・看護必要度、最悪20%までの引き上げも想定―日病協
2015.8.21.(金)
2016年度の次期診療報酬改定において、重症度、医療・看護必要度は最悪20%まで引き上げられるかもしれない、それに向けた対策を今から練っておく必要がある―。日本病院会や全日本病院協会など12の病院団体で構成される日本病院団体協議会では、次期改定に向けてこのような危機感を募らせています。
また、地域包括ケア病棟において手術や麻酔を包括外とすべきか否かについて、病院団体の間で多少の温度差があることが分かりました。
16年度改定に向けて、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」で重症度・医療・看護必要度の見直しに向けた検討が進められています。具体的には、A項目とB項目の評価内容を一部改めることや、7対1一般病棟入院基本料の施設基準にある「A項目2点以上かつB項目3点以上の患者(重症者)割合が15%以上」の基準見直しが俎上に上がっています。
後者について、現在は「A項目2点以上かつB項目3点以上」を重症者とカウントしていますが、これだけではなく、「A項目3点以上」の患者も加えてはどうかという議論が行われています(関連記事はこちら)。
この場合、重症者の対象が広がるため、7対1のベッド数を削減するために15%の基準値を引き上げることが想定されます。
この点について日病協では、「重症者割合が最悪20%まで引き上げられることも想定される。その場合の対策を今から考えておかなければならない」と危機感を募らせていることを、21日の定例記者会見で楠岡英雄議長が明らかにしました。
楠岡議長は「A項目やB項目の見直しといった小手先の手段ではなく、急性期病院はどうあるべきかという本質にさかのぼって議論をしてほしい」と中央社会保険医療協議会や厚生労働省に要望しています。
16年度の次期改定では、地域包括ケア病棟入院料について「手術やブロック注射を除く麻酔を包括範囲から除外し、出来高算定する」ことも検討テーマに上がっています(関連記事はこちら)。
厚労省の調査によれば、地域包括ケア病棟では▽手術の実施が、療養病棟や亜急性期病床よりも少ない▽「骨折・外傷」で入院している患者の割合が7対1や10対1に比べて高い▽退院予定のある患者が半数を占めている―ことなどが分かりました。この点について中医協の診療側委員からは「地域包括ケア病棟入院基本料には、手術なども包括されており、救急患者などの受け入れを躊躇してしまうためではないか」と推測。入院医療分科会では「より多様な患者の受け入れを促進するために、手術やブロック注射を除く麻酔を包括範囲から除外し出来高算定とする」ことが検討されています。
しかし、この「手術・麻酔の外出し」案には、病院団体間で若干、考え方に差があるようです。
21日の日病協定例記者会で神野正博副議長は、「地域包括ケア病棟の手術・麻酔を包括外にすべきか否かは、7対1病床の削減を進めていくかと密接に関係するテーマである」と強調しました。
7対1病床削減の流れに抗えないという立場からは、地域包括ケア病棟で救急患者などを積極的に受け入れる必要があるため「手術・麻酔の外出し」案に傾きます。一方、7対1病床削減にあくまで抗うべきであるという立場からは、「救急患者は7対1や10対1の病棟で対応すればよく、手術・麻酔は包括のままでよい」という考え方に傾くとのことです。
7月29日に開かれた入院医療分科会では、「手術・麻酔の外出し」案に対し、委員からは消極的な意見も出てきおり(関連記事はこちら)、その背景には、このテーマに関する病院団体間の温度差も関係しているようです。
このほか日病協では次期改定に向けて、「短期滞在手術等基本料3において『透析』を出来高にする方向が示されている(関連記事はこちら)が、このほかにも患者の重症度をきめ細かく評価すべきである」との意見も出ています。楠岡議論は、「合併症を伴うような高コストの重症患者は大病院に紹介されており、大病院での経済的な負担が重くなっている」実態を紹介し、短期滞在手術等基本料3の見直しが必要と指摘しています。
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